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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
158/222

155:魔人・4

「……何ですか?」



このタイミングで、エレジーナが私に話?


――嫌な予感がする。


エレジーナは抱えていたウルミとマカナを下ろし、真正面に立った。



「サンナちゃん……サンナちゃんはさ、前に出過ぎなんだよ。」



「……は?」



どういう意味だ?


想像していたよりも悪い内容ではなかったが、それでも悪い話というのに変わりはなさそうだ。



「……前に出過ぎって、どういうことですか?邪魔ってことですか?」



精神的にまいっているせいか、つい語尾がきつくなってしまった。



「そうじゃない。アズフさんも気が付いたみたいだけどね。サンナちゃんはいつでも前に出ようとする。それが利点であり欠点である、そういうこと。」



「……。」



エレジーナの言いたいことが見えてこない。


私の何が悪い?何がいけない?何を言われている?



「要はね、もっと周りを見ろってこと。今まではフィーくんたちが合わせてくれていて、そういう攻撃の組み立て方をしてきたんだと思う。だからパーティとしては強い。」



一度気まずそうに目を逸らした。



「でもね、パーティじゃない時には勝てない。それはサンナちゃんの動きが間違っているから。自分でも思うところ、あるんじゃないかな?」



「……。」



――そうだ。


私は勝てていない。どうにも上手くいっていない。



「さてさて、勝負は私の勝ちだよ。」



アズフが間に入ってきた。



「国王の代わりに私が要求を言うよ?」



そう言うと、客席の最前線から見ている国王の方を見て頷いた。


国王も頷く。どうやら要求について話し合ってきていたらしい。



「交換条件だよ。私が君を強くする。その代わり、フィークンとやらについて詳しく聞かせてもらう。どうかな?」



喋っている途中、アズフは金髪の女性へと変化し、自身の怪我を治療し始めた。


フィカスについて?


でも、今の話を聞いていて興味を持つのはさほど不思議ではないか。魔人にとって、人と接触することが強くなることでもある。



「いいよー。よかったね、サンナちゃん。これで強くなれるよ。」



「……私の意思に関係なく話が進んでいくのは釈然としないですが……分かりました。」



私だって、強くなりたい。


敗北の苦汁を嘗めるのは、もう沢山だ。


強くなれるのなら、何だってやってやる。



「決まりだね。それじゃあ、ここから出ようか。お話したいんだ。あ、回復はしてあげるからね。」



それから、闘技場を出て魔人の進めるレストランへ。


途中、国王が魔人に対して何か文句を言っていたが、何かを耳打ちするとすぐに大人しく去っていった。



「好きなもの頼んでいいよ。私が奢るからね。」



「どうも……でもどうして、そこまで俺たちに協力してくれるんですか?」



治療してもらい、元気になったマカナがそう尋ねた。



「うーん……パーティについて知りたいから、かな?」



「うん?」



「私って、パーティに所属したことないんだ。魔法センスのせいで、誰にも信用されなかったからね。」



変身することによって、簡単に他人を騙すことが出来る。


それ故にアズフは孤独に生きてきた。



「でも、いつの間にか”魔人”なんて大層な異名をもらった。だから別にいいかなって。過去がどうであれ、大切なのは今だから。」



その言葉は自身へのねぎらいのようでもあり、今のサンナへ向けられたメッセージのようでもあった。



「それで、フィークンって人は、どんな人なのかな?」



軽食を注文し、緩い雰囲気のもと話し合いが始まった。


会話を交えていくうちに、アズフという人物について少しずつ分かってきた。


どこか上の空というか、他人事のような立振る舞いである。


喋り方も態度も普通だが、どこかが常人とズレている。目が死んでいるというのも、それを感じさせる要因の一つかもしれない。



「――興味深い人だね。ぜひとも会ってみたいな。」



はたして、興味を持ったのはフィカス自身か、それとも彼の持つ魔法か。



「会うって言ったって……どうやって?」



この国に来ているかどうかさえ分からない。もし来ていたとしても、国という範囲の中から一人の人間を見つけるのは途方もない話である。


無理難題であるということは、サンナたちがよく分かっていた。



「捜すのを手伝うよ。色々と伝手があるんだ。」



「伝手?」



魔人は頷いた。



「そう。国中に色々と。それを利用していけば、情報収集に困ることはないはずだよ。」



国最強の存在の言うことならば、ハッタリでも何でもない事実だろう。


その伝手を利用出来るというのなら、断る理由はない。



「うん。いーよ。」



「どうも。これで交渉成立だね。」



テーブルに置かれていたスープを飲み、アズフは立ち上がった。



「それじゃ、私は用があるからこれで失礼するよ。明日にまた会おうね。」

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