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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
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153:魔人・2

刃をぶつけた状態のまま、サンナは力を込める。


私が決める必要はない……このまま刀を振るわせなければ……!


エレジーナとマカナが魔人の背後に回り込む。これで三人で囲んだ状況になった。



「なんだ。強いんじゃん。」



王様の口ぶり的に、そんなに強くないのかと思ってた。


たしかに連携はどこか雑だ。でも、それを帳消しにするほどの判断力と行動力。


言葉を交わさずに、各々が己の役割を察知し行動出来る。それが出来るパーティはそうはいない。



「じゃあ……私も全力で応えるか。」



「……?」



ひと際強い力で一瞬サンナのナイフを遠ざけると、アズフは刀を地面へと捨てた。


何だ……?エレジーナと同じ、視線誘導か……?


サンナ一人に対しては有効なのかもしれない。だが後ろの二人には効果がないといって良い。はっきり言って、意味のない行動だ。



「意味なんて……後付けでいいと思うんだ。」



そう言うアズフの顔が砂のように崩れ始めた。



「は……なっ……!?」



そのまま全身の皮膚が砂の色となり、崩れ去っていく。


何だッ!?何が起きて……!?


瞬きをした次の瞬間、サンナの目の前には黒い鱗で覆われた巨大なトカゲがいた。



「……は?」



同様の光景を目の当たりにして、エレジーナとマカナも動きを止めた。


トカゲは唸り声を上げると、乱暴に脚を動かして粘液を引き剥がした。


それを見て理解する。


魔人だ。今、目の前にいる何かは。



「……がっ!?」



唐突に振られた尻尾に当てられ、サンナの身体が吹っ飛んだ。


トカゲはそのまま走り出し、ウルミの元へと向かっていく。



「六号ちゃん!」



「ウルミ!」



二人は同時に叫び、トカゲの後を追うように駆け出した。


悪いがサンナの心配をしている余裕はない。そもそも、今の一撃でやられるような玉ではない。



「……。」



ウルミは引かず、トカゲを睨みつける。


……弱点がある。


固い鱗に覆われていると言っても、全身くまなくというわけではない。動きの邪魔にならないよう、関節近くは鱗が薄くなっている。


そこを突けばどうということはない。


長剣を引き抜き、ウルミは腰を落とす。


……低く引きつけて、一気に刺す。



「……!」



トカゲの身体が砂ようになって崩れ始めた。


それを視認出来たのはほんの一瞬。次の瞬間には大きな二足歩行の狼が立っていた。



「……!あれは……!」



サンナは立ち上がり、その姿を見て驚愕する。


――ワーウルフか!


狼でありながら、人と同じ知能を持ち言葉を発する種族だ。その力は人はおろか、あらゆる種族を凌駕する。魔物を除けば最強の生物だ。



「がっ……はっ……!」



その豪腕が振られ、ウルミの身体は一瞬で壁へと叩きつけられた。



「……ん?」



背中に何かが刺さった感覚がし、ワーウルフは首を傾げた。



「こっちだ!かかってこい!」



振り向くと、サンナがナイフを投げた体勢でそう叫んでいた。



「……。」



ワーウルフは背中に刺さったナイフを引き抜くと、またしても身体が砂のようになり崩れ始めた。


そして、美しい金髪の女性へと姿を変えた。



「……その姿は……!」



見覚えがあった。


昨日出会った女性だ。



「うふふ。覚えていてくれたんですね。嬉しいです。」



声も同じ。同一人物としか思えない。



「同一人物ですよ?何も疑うことはないんです。それでですね私、回復魔法が使えるんですよ。」



「……!このッ!!」



自らの治癒を始めた女性に、サンナは翼で加速して飛びかかった。



「ちょっと……遅かったですね。」



台詞の途中から女性の顔は崩れ始め、ピンク色の髪をした女性へと変化した。



「は……私……?」



私が目の前にいる。鏡で見た自分の姿と同じだ。


サンナと同じ姿をした女性は、同じく金色の翼をはためかせ宙へと舞った。



「もう分かりましたよね?私の魔法が?」



「ぐっ……!」



自分と同じ姿で、同じ声で喋られると変な気持ちになるな。


よくよく見てみると、昨日の格好と全く同じだ。同じくスカートなせいで中が見えてしまっている。とんだ公開処刑だ。



「まぁ知られたところで、どうでもいいんですけどね。」



魔人はサンナから離れ、マカナの傍へと降り立った。



「くそっ……こ……のっ!?」



斬りかかろうとしたすんでのところで、マカナは動きを止めた。


魔人はサンナの姿から、スクォーラの姿へと変化していたためだ。



「前に一度だけ会ったことがあるだけだ。」



勇者の見た目をした魔人は、先ほど捨てた刀を拾いながらマカナへと斬りかかる。



「ぐっ……!」



死神の記憶が蘇る。


刃に触れては駄目だ……!


もう数瞬でエレジーナが追いつく。それまで躱して時間を稼ぐ。



「……妙だな。」



「何がだ?」



刃を交えないよう注意しながら、マカナは後退していく。その最中、スクォーラの姿をした魔人は独り言のように呟いた。



「――消極的過ぎる。まるで、俺の知らない何かを恐れているかのようだ。」



「……。」



どういう意味だ?死神スクォーラ魔法センスを知らないのか……?いや、それは当然か。誰も勇者が魔法センスを持っていると知らなかったわけだ。


こいつは何を言いた……。


突如、勇者の姿からトカゲの姿へと変わった。



「しまっ……!」



間合いが変わった。


避け……間に合わ……。



「があああぁぁッ!!!」



体当たりをまともに喰らい、マカナは壁に激突すると血を吐いて倒れた。



「これで……あと二人か。」



アズフの姿へと戻り、魔人はゆっくりとサンナとエレジーナを見た。

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