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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
155/222

152:魔人・1

「来たか、魔人。」



翌日――。


闘技場の控室にて――。


そこには国王と、魔人と呼ばれた人物がいた。



「話は聞いているな?レグヌムから来た生意気な奴らを絶対に倒すのだぞ。いいな?」



「はい。任せといてくださいな。」



「万が一にも負けたら、お前の地位が揺らぐだけでなく、国の信用も落ちることになる。」



「分かってますって。大丈夫ですから。」



魔人の様子は、いつも通りに見える。


これなら何も問題はないか……。



「ならばいい。行ってこい。」



「はい。あ、報酬はキチンと払ってくださいね。」



「勝てば、の話だ。」



魔人は己の武器を抱え、扉の前に立つ。



「それだけ聞ければ大丈夫です。」



そう言って、魔人は控室を後にした。









「おー……いい感じに盛り上がってるねー。」



一方、エレジーナたちは早めに闘技場の舞台へと来ていた。


最初は控室にて待機していたのだが、特にやることも思いつかず出てくることにしたのだ。



「うるさいだけですよ。」



政治的な意味を含めた試合であるとはいえ、かなりの観客が集まっていた。普通の試合であるならば、こうも大勢は集まらなかっただろう。


この盛り上がり方には、”魔人”と呼ばれる存在への期待も含まれているように感じられる。


それだけの湧き上がりを前にしても、暗殺者アサシンパーティの四人が萎縮することはなかった。正直、鬱陶しいと思うだけである。



「そうだな……。」



準備体操をしつつ、マカナは溜め息を吐く。


――不安だ。


サンナが加入してからの戦闘経験は無し。さらに試合という、正面戦闘を強いられている状況。ぶっつけ本番には少しばかり厳しいシチュエーションだ。



「大丈夫です。勝てます。」



そのサンナの言葉は、仲間への言葉というよりも自身に言い聞かせているようであった。


――勝つ。それだけをイメージしろ。


目を閉じ、呼吸を整える。


相手を大きく見るな。自分が誰よりも強いと思え。でなければ、勝ちを掴むことなど出来やしない。



「だねー。まっ、リラックスしてこうよ。」



試合のルールはただ一つ。


相手を殺さないこと。それだけだ。


それを犯さなければ、何をしても良い。


降参させるのが、一番手っ取り早いかなー?


国王から直々にルールを聞いた時、正直なところ拍子抜けであった。どれだけ悪質なルールを突きつけられるかと想像していただけに尚更だ。



「にしても、遅いっすね相手。」



空を見上げれば、太陽が頂点から少しずれてきているところだった。


時間的に見れば、もう試合開始の時刻なのだが……。



「うん。このまま棄権してくれたら楽なんだけど……来たね。」



向かい側の入場口から、人影が歩いてくるのが見えた。



「あ、お待たせしました。ごめんね、忘れものしちゃってさ。」



「あーいえいえ。お気になさらず。」



……この人が魔人?


想像していたのと大分かけ離れた姿だ。



「さて、これより試合を開始します!双方、準備はよろしいでしょうか?」



会場全体にアナウンスが入る。


ようやくか……。



「よろしくね。」



「こちらこそー。」



魔人がこちらへと歩いてきて、エレジーナと軽く握手をした。



「……?」



そのままサンナの方を見てくる。


何だ……この人……?


近くで見て、サンナは背筋が凍りつくような感覚に陥った。


……目が死んでいる。


生気が感じられないとか、瞳に曇りがあるだとか、そういう話ではない。死人と同じ目をしている。


本当に生きているのだろうか?


そう思ってしまうほどの目だった。



「いい勝負にしようね。」



向こう側へと戻っていく姿を観察する。


腰に届きそうなくらいの長いストレートの髪。浅黒い肌。腰には長い得物が付いている。


普通ではない何かを感じさせる。


そんな女性だ。



「それでは……始め!」



試合開始の合図とともに、魔人は腰に付けている得物を引き抜いた。


それは長い――刀だ。



「東大陸らしい武器……ですね。」



サンナは一度、刀を相手にしたことがある。


その経験と反省を生かせば、充分に相手出来るはずだ。



「あ、かかってきていいよ?こっちは大丈夫だか……ら?」



魔人の足にボールが当たり、それは破れ粘液をぶちまけた。


ウルミの持つ粘着剤を込めたボールだ。一度粘液が貼りつけば、乾くまでその場から動くことは出来ない。



「……。」



さっさと攻撃しろ。


とでも言いたげにウルミは三人を見る。



「いいねー六号ちゃん。じゃ、一気にいこうかー。」



ルールは相手を殺さないこと。それだけだ。道具使ってはならないだの、卑怯なことをしてはならないだの、そんな紳士協定はない。


サンナがいち早く跳び出し、ナイフを引き抜くと同時に腹部へと突き出す。



「うわっと。」



魔人は身体を後ろへと逸らし、自身の身体とナイフとの間にスペースを作ってから刀で防いだ。


だが、足を動かせない以上、すぐに限界が見える。


腰にもう一つ、四角い何かがぶら下がっているが……それを使わせずに倒す。



「いきなりピンチだねこりゃ。あ、言うの忘れてた。私、アズフっていうんだ。よろしくね。」



「……!」



何なんだこいつは?


早めにケリを着けないと……ヤバい気がした。

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