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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
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150:東大陸

東大陸は他の大陸から離れたところに位置しており、それ故に船が発達するまで外国が干渉することは一切なかった。


昔の人々は自分たちのいる大陸以外にも大陸があることに気が付くと、未知を求めて旅をするようになった。そのターゲットとなったのが東大陸であり、その中でも一番の領土を持つディブルだ。


しかし東大陸は遠く、昔の技術では辿り着くことが困難であった。そのためか、そこには黄金が溢れているだの、模倣出来ない文明が栄えているだの、根も葉もない噂が飛び交った。



「実際にはそんなことはなかったんだけどねー。」



異なった文明が築かれていたことは間違いないが、技術等に大きな差異はなかった。


それに気付いた他大陸の冒険者たちは、次に商売を考えた。自分たちの持っている物を売りつけることで、金儲けをしようとしたわけだ。


ディブルはそれを拒まず、あらゆるものを受け入れた。


結果――。



「四大大陸の文化が混じり合った感じになったんだよねー。はいコレ。」



「あ、どうも。」



南大陸で有名なお菓子を屋台から買い、エレジーナはサンナたちに渡した。



「そういや、エレジーナの持ってる手裏剣もここから仕入れたんだよな?」



「そうそう。船便でやって来たのをね。マイナーな武器だから使いやすいんだよ。」



「……?」



サンナは首を傾げたが、すぐに理解し頷いた。


マイナー故に相手はそれを知らず、対処されにくい。そういう意味なのだろう。



「武器も色々と見てみたいけど、それは後にしよっかー。」



「そうだな。というか、金がないんだから買う余裕はないっすよ。」



「うぐっ……。」



武器や道具を大量に購入することの多いアサシンにとって、資金問題は深刻だ。



「ただでさえウルミ用の道具の費用が深刻なんだから。」



「そうなんですか?」



「ああ。一番使うからな、こいつは。」



エレジーナたちに比べるとまだ幼く小柄なウルミは、その力量の差を埋めるべく多くの道具と武器を扱う。暗殺者の扱う物は使い捨ても多く費用がかさむ。



「……。」



ウルミは不機嫌そうにマカナを睨んだ。



「費用といえば……ディブルにしばらく滞在するなら、金を何とかしないと。当てはあるのか?」



「……勿論さー。町のギルドに加入して、稼ごうと思っていたからねー。」



「……はぁ…………。」



サンナは呆れ声を出してしまった。


このパーティ……思っていたよりも駄目なのかもしれない。


よくこれまで上手く工面出来ていたものだ。



「もっと楽に稼げる方法があればいいんだけどねー。例えば天使が踊るだけでお金が貰えるとか。」



「そんな職業、あるわけないじゃないですか。」



能天気なこと言ってないで、もっと真面目に考えてほしいものだ。



「天使?皆さんは天使なんですか?」



「えっ?」



通行人の一人が話しかけてきた。


長い金髪のお淑やかそうな女性だ。



「このピンクの髪の娘がそうですよー。」



あなたもでしょうが。



「わぁ!私、天使の方って初めて会いました。やっぱり、人間とは違うんですよね?」



「えぇ……まぁ、飛べるんですけど……。」



「そうなんですか?ぜひ見てみたいです。飛んでるところ!」



何なんだろう?この女性ヒトは?


雪のような白い肌と整った顔立ち。服装も高級そうなものを着ている。どこかのお嬢様のように見える。でも、お嬢様が一人で町に出るだろうか?



「おひねり貰えるならいいですよー?」



「ちょっと!エレジーナ!」



何を勝手に……というか、初対面の人にいきなりそんなこと言うか普通?


あ、普通ではないか。この人は。



「はい、どーぞ。」



女性は快く一枚の金貨をエレジーナの手に握らせた。



「どーもどーも。じゃサンナちゃん、お願いねー。」



「まったくあなたという人は……。」



文句を言おうとして、諦めた。エレジーナに何を言っても無駄だろう。


幸い、エレジーナに着せられた服には背中側にスリットが入っており、そこから翼を出すことで服を傷めることなく飛ぶことが出来る。



「――おぉー!これが天使の飛ぶ姿なんですね!感動です!」



飛んでみせると、女性は大袈裟に思えるほど喜んでいた。



「あ、サンナちゃん。スカートだからあまり飛ばない方がいいよ。」



「先に言えー!!」



サンナは急いで着地するとエレジーナを引っ叩いた。


次いでマカナを睨みつける。



「……ん?何だ?」



当のマカナは興味なさそうにそっぽを向いていた。


……見てなさそうだな。


一応、六号の方も見てみる。



「……。」



ウルミはグッドポーズをした。


え?何の反応だコレ?



「飛んでいただきありがとうございました。今の光景は一生忘れません。では、用があるのでこれで失礼しますね。」



「はいはーい。どーもでしたー。」



歩いて行く女性を見送ってから、エレジーナは貰った金貨を財布に入れた。



「いやー親切な人もいるもんだねー。じゃあ、そろそろ行こうかー。」



「……?どこにですか?」



「お城だよ。領海の件で話があるって言えば、入れるはずだよー。それから本件の話をすればいいと思うんだよねー。」



町の中心にある城を見やる。


普通の城とは違い、神殿のような四角い建物だ。



「ほら、行くよー。」

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