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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
150/222

147:立ち回り

「……!?」



一呼吸置いて、ネモフィラは目を見開いた。


自身が放った劫火がこちらに襲いかかってきたためだ。



「ネモフィラくんッ!!」



劫火の中、霊体を維持しているリコリスは叫んだ。


それは仲間への心配でもあり、目の当たりにした光景を伝えたいがためでもあった。


アギオスが左手を前にかざすと、劫火が跳ね返るようにネモフィラへと向かっていった。


――これが聖人の魔法か!?



「ぐぅっ……この……!」



炎が収まると、腰を落とし杖を前へと突き出しているネモフィラの姿がそこにはあった。



「ほう……。」



新たに炎を放出し、向かってきた炎を迎え撃ったのか。


下手に逃げようとせず、その場に止まるという判断も見事だが、自分の魔法を打ち消すほどの威力を咄嗟に創れるその技術も見事だ。



「流石、といったところか……だが……。」



アギオスが飛び退き、直後に立っていた地面を衝撃波が抉った。



「くっそ……!」



ラフマが悔しそうな顔をした。


完全に死角だったのに……!


聖人はそのまま動き、立ち上がったアベリアの元へと駆ける。



「ん……それッ!」



肉体強化魔法――!


岩をも砕く力で殴りかかるが、アベリアはその拳に鉄板を叩いたような衝撃を感じた。


腕が痺れるような……力負けしたことが分かる感覚だ。



「――へ?」



拳を掴み、ぐるりと回転するように引っ張り、アベリアをリコリスに向けて投げつけた。


その速さはアベリアのそれを大差ない……どころか完全に同等だ。


……受け止め……無理だ!


速すぎる。霊体化のままリコリスは飛ばされてきたアベリアを素通りする。



「ちょおぉいっ!」



ラフマが慌ててアベリアをキャッチし地面を転がった。



「――パーティ単位では動けていない。そういう印象がある。」



「……ッ。」



図星だ。


スクォーラが抜け、アベリアが入ったことによる変化をまだ、パーティとして補完出来ていない。


連携には粗があり、個人主義のような立ち回りになりがちである。



「もっと強力な連携を見せてみろ。でなければ、この私を倒すことなど到底出来やしない。」



「上等だ!」



鉄杖を振り回し、ネモフィラが聖人へと襲いかかる。


弧を描くように回転させ、突如として軌道を変え殴りかかる。



「――ッ!」



鉄杖を正面から捉え、斜めになるように腕を構えた。


それにより鉄杖は籠手に当たり、そのまま滑るように外へと弾かれた。


ネモフィラは素早く逆手に持ち替え、掬い上げるように振るうが、それもまた同様に弾かれる。


――こいつ……!


受け流すのが巧い……!


最低限の、無駄な力の一切入っていない受け流しだ。それ故に体力の消耗も少なく、使う筋肉も最小限。この事実と強盗の時の立ち回りを鑑みると――。


――柔術の使い手か!



「……そろそろだろうと思っていた。」



ネモフィラに対して半身になり、背後から来たリコリスのナイフをもう片方の籠手で受け止めた。


視野の広さは流石ってことだね……!



「でも……分かっていれば良いってもんじゃないよ!」



再び霊体化し、アギオスの身体をすり抜ける。



「ふむ……。」



触れているはずだが、何も変化はない。


やはり、少年リコリスのは魔法ではなく体質か。犬耳ラフマと同様か。さて、どうしたものか……?


アギオスは表情を変えずに悩む。


相手にし辛い二名だ。後回しにするべきか?



「……。」



攻撃を繰り出しつつ、ネモフィラもまた思考していた。


あれ以降、押し返してくるような魔法を使ってこない。何か条件があるのか?


視線を奥にずらすと、起き上がり隙を窺うラフマとアベリアの姿が見えた。



「こんのッ……!」



リコリスはしつこく付け回すように動くが、どうにも上手くいかない。


アギオスがそれ以上に上手く動き、リコリスが攻撃しようものならネモフィラに当たる可能性があるようにしている。


ネモフィラくんの相手をしながら僕の動きもしっかりとチェックして……でも……。


時間的にそろそろ、武闘派二人がこちらに来る頃だ。このまま囮となって……。



「……そろそろか。アベリアだな。」



唐突に振り向き、迫ってきていたアベリアの拳を真っ向からアギオスは迎え撃った。


両者の拳がぶつかり合い、これまで以上のスピードでアベリアは後方へと吹っ飛ばされた。



「いっ……たっ……!」



石壁に激突し、そのまま崩れた石の下敷きになったアベリアは呻いた。


これまでよりもさらに魔法を込めて殴ったのに、また力負けした……!



「こんにゃろ!」



今度はラフマが爪で斬りかかるが、アギオスは冷静に籠手でそれを払った。



「ふむ……煽ったのは失敗だったか。」



底力を見せてくるかと思ったが、かえって動きを単調にさせてしまったかもしれん。


やはり、人というのはよく分からんものだな。



「……お前。」



ネモフィラは攻撃を止め、数歩下がった。


今の出来事を見て違和感があった。


アベリアの攻撃は迎え撃ち、ラフマの攻撃は受け流した。自分ネモフィラの攻撃も同じだ。炎はぶつかり合い、鉄杖はそうしなかった。



「ふむ……気付いたとみえる。」



だが、昨日の強盗の件も踏まえると、はっきりとは見えてこない。



「貴方たちの力を見るためにも、話しておこう。私の魔法センスについて。」

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