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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
144/222

141:フェルティ

城内はかなり暖かかった。


寒い気候のため、快適さを求めるとこの暖かさになるのだろう。


レグヌムの気候に慣れているフィカスたちにとっては、少しばかり暑いと感じる室温だ。


好奇の視線を浴びながらずんずんと進み、豪華で大きな扉を開けると玉座の間に辿り着いた。



「む……賢者か。一体どうしたというのだ?」



「どーも、国王さんよぉ。ちっと話があってな。」



この人がこの国の王様か……。


中肉中背の男性だ。頭が少し薄くなっている。



「……賢者がそう言うとは珍しい。が、その前にこちらも言っておくべきことがある。」



「あ?んだよ?」



「その態度だ。周りを見てみなさい。」



警備兵が武器をドゥーフに向けて突きつけている。


警戒度マックスだ。



「……?ザコどもが俺に向かって無礼な行為をしているとしか思えねぇけど。」



「その態度だ!君はいつもいつもそうやって……!」



王様は立ち上がったが、すぐに座り直した。



「失礼。取り乱してしまった。賢者の称号を持つ以上、それに相応しい態度をしてほしいということだ。」



「へいへい。善処しますよっと。」



あ、多分言うこと聞かないな。



「――さて、挨拶が遅れてしまったな。私がこの国の長・フェルティだ。初めて見る顔ぶれだが……。」



「ああ。こいつらのことで話に来たんだ。おらフィカス、セプテム、話せ。」



「えっ?私は?」



スルーされたエヌマエルは置いておいて、フィカスとセプテムは前に出て話を始めた。


ここに来ることになった経緯いきさつ……レグヌム国で何があったのかを。


フェルティ国王は難しい顔でうんうんと頷き、ただ黙って話を聞いていた。そして話が終わると難しい顔のまま口を開いた。



「……事情は分かった。君にも何か信念とも言える正義感があるのだろう……しかし、それを国相手にぶつけるというのは、はっきり言って愚かだ。」



……やっぱりそうだよね。


分かっていたことではあった。国のトップに立つ者ならば、同じ捉え方をしても不思議ではない。


ショックはなかった。否定されるとは薄々分かっていた。でも、何でドゥーフはここに来ることにしたんだろう?


こう言われることは、彼にも分かっていたはずだ。



「だが……未来ある若者を早々切り捨てて良いものはない。」



「……え?」



国王はこう続ける。



「しばらくはここに住むと良い。もちろん、対価として働いてもらうが。いいかな?」



「ああ、もちろんだ。さらに言えばこいつらはかなり特別な魔法が使える。確保しといた方がいいんじゃねぇか?国王さんよぉ?」



「何であんたが返事するのよ……はい。もちろん構いません。」



「決まりだな。では誰か、この者たちを案内せよ。」



臣下の者に部屋に案内される途中、ドゥーフが口を開いた。



「な?来て良かっただろ?」



「うん。」



予想外の好待遇だ。


城にいれば追手に見つかる心配はないし、もし見つかったとしてもそうそう手出しは出来ない。



「ていうかあんた、王様にもあの態度なわけ?」



怖いもの知らずというか、ここまでくると傲慢を通り越して、もはやバカなんじゃないかとさえ思えてくる。



「ああ。何せ俺より強い奴はいないからな。その気になれば、国だって亡ぼせるぜ。」



「おい!そんな態度ばかりだと……!」



先頭を行く案内の者がドゥーフを睨みつけた。



「へいへい。分かってるって。じゃあ俺は帰るから、後は上手くやれよ?」



「へっ?ドゥーフさん、帰るんですか?」



「当たり前だろ?協力すると言っただけだ。じゃあな。」



てっきり、このまま同行してくれるのかと思っていたが、そういうわけではないようだ。


手をヒラヒラと振り、振り向きもせずに彼は去っていった。



「……まぁ、アレが仲間だったら、それはそれで大変よね。」



「たしかに……そうですね。」



僅か二日で彼の性格は分かってきた。


それで断言出来ることがある。


彼はパーティを組むことに向いていない。協調性も何もあったものじゃない。



「でも、凄いのも確かなんだよね。何だかもったいない気がする……。」



周囲の態度を見る限り、嫌われ者のように感じる。それでも生きていけるくらい彼は強い。


そんな彼がパーティを組めば、これまで以上に強くなれるはずだ。それなのに、敢えて独りでいることを選んでいる気がする。



「それはそうですね。例えば、フィカスさんと組めば最強コンビになるんじゃないですかね?」



「魔法だけ見ればね。性格的に見れば、穴だらけになりそうだけど。」



フィカスが創造し、ドゥーフがそれを操る。


たしかにそれは最強とも言えるコンビだ。


だがコンビというのは、ただ強い者同士がいれば良いというものではない。大切なのは連携力。如何にパートナーを気遣えるかだ。



「サンナとエレジーナなんか、いいコンビになりそうじゃない?」



「うーん……どうだろうね。」



詳しくは知らないが、エレジーナと戦った後のサンナはどこか暗い表情をしていた。



「――ここが貴方たちの部屋です。それで早速ですが、取り掛かってほしい仕事が――。」



……皆、今頃どうしているんだろうか?


仕事の説明を受けながら、ふとフィカスはそう思うのであった。

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