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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
143/222

140:話し合い

舌打ちをした後、ドゥーフは短く息を吐いた。



「……今回は俺の負けにしといてやる。」



「何よその言い方は?」



「殺さない勝負だったからな。殺しアリだったら俺が勝つに決まってるだろ。調子乗んなよ。」



――あの野郎。


着地を決めたフィカスを見つめる。


セプテムが派手な攻撃で注意を引きつけ、エヌマエルと連携している間に風魔法で上空に行っていたのか。それで死角から――意識の外から奇襲をした。


言葉にすると単純だが、実行するとなるとそうはいかない。


相手に気付かせないタイミングの取り方、空中でのバランス感覚……その他諸々が揃っていないと出来ない芸当だ。



「ハッ!やるじゃねぇか。気に入ったぜ。」



ドゥーフはフィカスに近寄り、手を差し伸べる。



「てめぇらに協力してやるよ。ありがたく思え。」



「あ、うん……ありがとう……。」



協力してくれるのはありがたいんだけど、言い方が言い方だけに素直に喜べないなぁ……。


でも、賢者と呼ばれる彼が協力してくれるのは頼もしい。



「さて、町に戻るぞ。」



町に帰ってくると、往来する人々が増えてきていた。町が起きだしたのだろう。


泊まっていた宿に入り、部屋のドアを閉めたところでドゥーフが切り出した。



「――まず、てめぇらは追われているんだな?」



「ええ。逆賊扱いのはずよ。」



……そんなに物騒な話だったんですか?


エヌマエルはそう思ったが、口を挟むのは止しておいた。



「港はここにはねぇ。だから追手が来るとしても、もう少しかかるはずだ。で、その間にてめぇらは何をしたい?」



追手が町に溢れかえれば、身動きが取れなくなる。そうなる前に、出来ることはやっておくべきだ。



「と言ってもねぇ……。」



逃げることが最優先であって、この先どうするかを深く考えたことはなかった。考える暇がなかった。そのため、これからのことは定まっていない。



「……計画ゼロかよ。よくもまぁ、そんなんで逃げる気になったもんだ。」



「うるさいわね。実際、それで逃げ延びてるんだからいいのよ。」



追手が来ることは分かっていたし、増えれば自由に歩けなくなることも分かっていた。だが、それを理解していたところで、何か出来たわけではない。



「城があるってことは、やっぱり冒険者も来やすいの?」



「ああ。国で一番デカイ町ってのは、色々と人を呼ぶからな。うぜぇもんだ。」



恐らく、自由に動ける時間はあと僅か。


となると、この場に留まることはよくないか……。



「来たばかりだけど、移動しよう。」



「まぁ……そうだけど、ちょっと早いんじゃないかしら?」



このまま留まり続け、いないと判断され追手がいなくなるのを待つという選択肢もある。


フィカスの判断は早計とも言える。



「うん……かもしれない。でも、何というか……。」



嫌な感じがした。


このままだと、誰かに行動を読まれて見つかるような気がする。



「……直感ですか?なら私はそれを信じますよ!」



「だとしてもよ。もう少し何かやっておくべきよ。」



先手を打つことは大事だが、休養も大事だ。


焦って動いてばかりいては、摩耗していくだけだ。



「――とりあえず、城に行くか。」



黙ってやり取りを見ていたドゥーフが、そうポツリと呟いた。



「は?城に?」



「ああ。勇者とその仲間なんだろ?いい待遇が受けられると思うぜ。」



候補よ、とセプテムは訂正した。



「ていうかあんた、城に行ける身分なわけ?」



「当たり前だろ。この国で最強は俺だぜ?」



この態度があるから疑ってんのよ。


この口の悪いのが賢者だなんて、この国は大丈夫なのかしら?



「反対意見がないってのなら、城に行くぞ。」



宿を出て城への道路を進む。


往来の視線はドゥーフによく寄せられた。


賢者への尊敬の視線もあったのだろうが、それ以上に悪い雰囲気のものが寄せられていた気がした。



「……ねぇ。ドゥーフは正義って何だと思う?」



道中、フィカスはそう尋ねた。



「正義?んなもん、強さに決まってるだろ。」



そうあっさりと返事がきた。



「誰が何と言おうと、強い奴が絶対なんだよ。どんな理想言ったって、弱者の言葉だったら誰にも届かない。だから強さが正義だ。」



だから俺は正義そのものだ。


とドゥーフは付け加えた。



「あんたが正義ってのは疑問があるけど……言い分は分かったわ。たしかにそうなのよねぇ。」



怪盗シャドウも勝っているからこそ、それを正義とみなすことも出来た。あれで弱かったら、ただのこそ泥に過ぎない。


強いからこそ、その信念に意味がある。



「強さ……か……。」



スクォーラさんだったら、何て答えたかな?


まだフィカスは正義とは何か、堂々と言える言葉を持ち合わせていない。



「着いたぜ。ここがフェルティ城だ。おい、ここを通せ!」



悩んでいるうちに、いつの間にか到着していた。



「な、お前は……賢者ドゥーフか!くそっ……ほら通れ!」



悔しそうな顔をしながら番兵は門を開けてくれた。



「ハッ……ご苦労さん。」



「ぐっ……!」



「……ホント嫌われてんのね、あんた。」



「嫌われてねぇ。嫉妬だあれは。」



まぁ嫉妬の態度でもあったのかもしれないけど、絶対嫌われてる。断言出来る。



「まぁんなことはどうでもいいんだよ。さっさと王に会うぞ。」

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