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マジックセンス  作者: 金屋周
第十一章:英雄
142/222

139:賢者・3

「分かったって、フィカス……本当なの?」



「うん。とは言っても、確定は出来ないけどね。」



流石に完璧に言い当てることは出来ない。けれど、おおよその推測をすることは出来た。


戦いの最中、ヒントはあったんだ。



「ドゥーフの魔法……それは、生物以外を操る魔法だと思う。」



金属に地面、それとセプテムの引っ張られたという話……どれもバラバラなようで、生物ではないという共通点があったんだ。



「あれ?だとしたら、セプテムのお話はどういう……?」



「それなんだけど多分、身体じゃなくて服が引っ張られたんじゃないかな?」



生物を操ることが出来るなら、そもそもこんな戦い方をする必要はない。直接、僕たちを操れば良いだけの話だ。


でも、そうしないということは、生物は操れないということ。それに……。



「ヒントはもう一つあったんだ。僕たちのすぐ近くに。」



「近く……ですか?」



今、周囲にあるのは折れた木々。それと荒れた地面。



「……樹が操られた跡がない。」



「うん。だから、僕の予想は当たっていると思う。」



これなら、僕が創造した柱が動き出したことにも納得がいく。そして、その時のことからもう一つ――。



「それで、操る対象に意識を向けないといけないはず。」



セプテムとエヌマエルが近接した後、僕に襲いかかっていた柱と手は動きを止めた。


その時は不思議に思うだけでそれ以上考えなかったが、こう考えるとしっくりくる。



「それに今は攻撃してこない……だから合っていると思うんだけど……どうかな?」



何だかんだ言っても、所詮は推測の域を出ない。


自分一人で結論付けるのには不安が残る。



「うん。当たってると思うわ。」



「はい!流石はフィカスさんです!」



「あはは……ありがと。」



面と向かって褒められると、何だか照れくさいな。



「それで……作戦があるんだけど――。」





「……仕掛けてこねぇな。」



地面からせり出した柱を元の高さに戻し、ドゥーフは三人が隠れた地点を見つめる。


最初はその場しのぎで隠れたと思ったが、それにしてはアクションがなさ過ぎる。


……そもそも、このタイミングで諦めるなんてことはねぇだろうが……。



「……仕掛けるか?」



自分自身に問いかける。


樹木が比較的多い地点に隠れている。攻撃するには立地が少しばかり悪い。



「大体、何であんな……まさか……。」



俺の魔法に気付いたのか?


国にいる奴ら……国王ですら、俺の魔法がどういう類のものであるか、詳しくは知らないというのに。


もしそうだとしたら、相当の観察眼と推理力だ。


……面白ぇ。やってやるか。



「おい!てめぇらが来ないなら、こっちから行くぞ!」



「言われなくても……やってやるわよ!」



木陰から褐色の小柄な少女が飛び出してきた。


残り二人は……姿が見えない。


こいつは囮で気を取られた隙に仕掛けるつもりか?



「――だとしたら、単純過ぎるんだよ!」



こいつだけに気を取られないよう注意しつつ、地面を操り巨大な棘を少女に向けて突き出す。



「単純で結構よ!」



少女は避けず、炎魔法で正面から押してきた。



「力比べよ!」



劫火の火力が増していく。土は焦げ崩れ始めた。


チッ……だがよ。意識を向ければ、いくらでも操れるんだよこっちは!


地面を次々と追加していき、棘をより強固なものにしていく。



「上等!」



劫火もますます強くなる。


……で、こいつに集中させている間に……。


脇から緑色の髪をした女性が飛び出してきた。



「だから言ったろ!単純なんだよ!」



金髪の姿はまだ見えない。となると、こいつも囮か?


まぁこの女に関しては、そこまで警戒する必要はない。実力は下の上、そんなところだ。


女の前の地面をせり出させ、壁を生成する。


これで充分……。



「おりゃあー!!」



だが、女はその壁を飛び越えてきた。



「は?」



人間に出せる跳躍力ではない。何をした?


だが魔法使いから視線を動かすのは危険だ。最優先が魔法使いの少女であることに変わりはない。


ドゥーフは三歩下がり、視界に映る範囲を広くする。



「ハッ……無駄な努力ってことを教えてやるよ。」



劫火の前に巨大な壁を建て、迫りくる女へと意識を向ける。



「へ……わわ……!」



コントロールする対象は、その女の着ている服。


このまま後ろへと押し出し、地面に叩きつける。それでこいつは終わりだ。



「わわわ!ちょ、強いですって!」



「なに……!?」



女の身体は後方に行くどころか、こちらに向かって動き出した。


俺の魔法が効いていない?いや……それはない。だとすれば……。



「くそがッ!」



風魔法か!奴の魔法で反発するように女の身体を押している。



「だがよ……。」



それが何だって言うのか。それで俺の魔法を攻略したつもりか?



「誰が近接戦が苦手っつったんだよ!?」



槍で女の持つ剣を弾き飛ばし、柄で腹を突く。



「ぐっ……ふっ……!」



エヌマエルは腹を押さえ、その場にうずくまった。


直後、脇から爆発音がした。



「よーやく意識を逸らしたわね!」



土の塊を全て破壊し、セプテムがドゥーフに肉迫する。


その手に持つ短刀が朝陽を浴びて輝き、喉元めがけて突き出され……。



「ぐっ!?」



突如、短刀が思わぬ方向を向いた。


それにより腕も引かれ、セプテムは大きくバランスを崩した。



「終わりだ。」



「まだよ!」



短刀を投げ捨て、右手に氷魔法を発動させる。


――それで攻撃するつもりか?間に合わねぇよ。


槍をセプテムへと向け、腕を前へと突き出す――。


その刹那、ドゥーフは地面に映る影が大きいことに気が付いた。



「しまっ……クソがよ!!」



上からの強烈な衝撃によって、手にしていた槍が叩き落とされた。



「ナイスタイミング!フィカス!」



風魔法でフィカスを宙へと投げ、セプテムは氷で作ったナイフをドゥーフの胸元へと突きつけた。



「これで……私たちの勝ちね。」

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