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マジックセンス  作者: 金屋周
第十章:逃亡
135/222

132:港町

町に到着すると、入り口付近で馬車は停車した。


町中から好奇心の視線が送られる中、サンナたちは馬車を降りた。



「俺はここで待機してるんで、三人は交渉の方をお願いします。」



「はいはーい。任せてねー。」



留守番をマカナに任せ、三人は見知らぬ町の散策を開始する。


港町だけあって風が強く、建物のあちこちに魚が吊るされている。



「で、どこに向かいますか?」



「んー……とりあえず、一番大きな家に行こう。」



どの建物がどんな建物なのか分からない。けれど、偉い人ならば当然大きな家に住むだろう。


そんな推理とは言えない推理のもと、一行はあちこちを見渡し始めた。



「あの、町長の家はどこでしょうか?」



それにじれったいと感じたのか、サンナが通行人にそう尋ねた。



「ああ、それなら――。」



通行人が指差したのは、赤い屋根の大きな家。


アベリアの屋敷ほどではないが、普通の家よりも大分大きな家だ。



「サンナちゃんって、効率重視だよねー。」



「省けることは省いた方が楽ですから。」



町長の家に到着し窓から中を覗いてみると、数人で集まっている様子だ。



「……何かの会議でしょうか?」



「……悪い作戦には見えないね。何かに悩んでいるって感じかなー?」



さも当然のように盗み見するアサシン三人。当然ながら一般人は、窓から盗み見してから訪問するなどしない。



「声までは聞き取れないからねー……まぁ入ってみようかー。ごめんくださーい。」



ドアをノックすると、すぐに開いた。


中から使用人と思われる女性が顔を覗かせる。



「冒険者でーす。お困り事がおありでしたら、ぜひ私たちを頼ってください。」



「ああ、国の……どうぞ、お入りください。」



意外とあっさり通してくれた。これも普通に見える服を着ている効果か。


しかし、こちらの言い分をこうも信用するとは、警戒心が薄いというか平和ボケしているというか……。まぁそれのおかげで入れたのだから、ここでは文句を言わないことにしておこう。



「旦那様、冒険者の方々がお見えです。」



「おお……良い時に来てくれた。」



町長は丸々と太った、気の良さそうな男性だった。



「口ぶりからして、何かお悩みでも?」



……よくもまぁ、とぼけることが出来るものだ。


覗いていたとは思えないような自然な態度のエレジーナに、サンナは心中呆れていた。


演技であるとは分かっているが、分かっているからこそ妙な気分になる。



「ああ。実は漁獲範囲の話でな。向こうの国から圧力をかけられているんだ。」



港町にとって重要なことは、海のどこまでの範囲を領海として良いかだ。その範囲が広ければ広いほど大漁が狙え、儲けることが出来る。


逆に如何に目の前に海があろうとも、領海が狭ければ満足に漁も出来ず赤字になる。


もしその範囲を超えてしまえば罪となり、制裁を受けることとなる。



「国と言うと……南にある……。」



「いや、そっちではなく、東の方だ。南の方は漁に興味がないからな。問題にはならんよ。」



南大陸にある国――パラディソスは漁業に対する関心が薄い。そのため、距離的にはそれほど離れているわけではないが、領海で揉めることはない。


しかし、東にある大陸の国――ディブルは違う。多様性に富んだ国であり、同時に貪欲さも持ち合わせている。多くの文化が混じり合ったからこそ、多くのルールや考え方が生まれ、それが国力へと繫がっている。



「東はここからだと、かなり遠いですよね?それなのに、ですか?」



「ああ。前にも一度、領海を広げると言われたことがあったんだ。その時はレグヌムの王様が向こうと対談して、こっちが譲歩することになったんだが……今回もとなると、厳しいところがある。国に連絡はしたんだが、返事はまだないようだし……。」



レグヌム城は現在、混乱状態にある。この町にとっては重要な問題でも、国はそれに構っている余裕がないのだろう。


だが、この話をチャンスに変えれば良いだけのことだ。



「分かりました。では、私たちがディブルに行って交渉をしてきましょう。」



「おお……!それは本当か!?」



「ちょっと、エレジーナ!?」



サンナはエレジーナに耳打ちする。



「そんなクエストを受けてる余裕はないですよ。どういうつもりですか?」



「何言ってるのさ、サンナちゃん。」



船を借りて外国に行くことが出来る。これだけで大きな進展だ。さらに交渉を成功させた報酬として、しばらく船を借りることも可能となるだろう。



「寄り道に見えても、長い目で見れば近道になるよ。それに、フィーくんのことを聞く機会でもある。受けない理由はないよ。」



「……。」



エレジーナの言い分に反論は出来ない。けれど不安はある。


相手は国だ。交渉がそう易々と通るとは思えない。



「では、東に行くための船を貸していただけませんか?出来れば馬車が乗れるような。」



「おお、任せておけ。町で一番大きな船を貸そう。」



ちゃっかり馬車を乗せられる船を借りることに成功。



「さ、六号ちゃん、サンナちゃん。マカナくんのところに戻ったら、早速旅立とうかー。」

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