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マジックセンス  作者: 金屋周
第十章:逃亡
129/222

126:結成

「ありゃりゃ……こりゃあ凄い騒ぎになったね。」



レグヌム城・パーティー会場会場にて――。


レグヌム国王の口から、フィカスが逆賊であると告げられ、パーティー会場は混乱に陥っていた。その中で国王から集まっている兵士・冒険者たちが捕まえる指示を受け、次々と城を出ていった。



「けど……フィカスくんが意味もなく反逆するだなんて思えないんだけどなぁ……。」



リコリスはそう呟いて頭を掻いた。


事の発端は、会場にフィカスとセプテムの姿がなかったことだ。


それに気付いた彼らの仲間が国王に尋ねたところ、逆賊であるため逃げ出したと言いだしたわけだ。



「だが、事実フィカスはここにいない。英雄と言われた彼がいないことが、国王の言い分を裏付けている。」



「分かってるよ、ネモフィラくん。でも、僕はフィカスくんを信じたいね。」



「なら決まりだな!」



ラフマが元気よく頷いた。



「ああ――パーティを再結成……。」



勇者がいなくなり、これからどうするかまだ決めあぐねていたが、これからの道は決まった。


その時、三人に近づく者がいた。



「アベリアさん……?どうしたんだい?」



フィカスの仲間であるアベリア。


彼女はリコリスの前に立ち、その頭を下げた。



「私をパーティに入れてほしいの。お願い!」



「へっ?」



君はフィカスくんのパーティメンバーだろう?どうして僕たちのところへ?


リーダーが不在でも、残ったメンバーで捜しに行ってもいいはずなんだけど。



「さっき、サーちゃんとジギくんと話し合ったの。一度解散して、別々でフィーくんを捜そうって。」



フィカスが逆賊であるはずがない。


彼女もまた、そう信じているのだ。



「そういうことね……どうする、ネモフィラくん?」



「ここで俺に投げるのか……。」



ネモフィラは溜め息を吐いた。



「そりゃ僕たちのリーダーだからね。決定権は君にあるよ。」



――この少女は肉体を強化するという、珍しい魔法を扱える。戦力としては文句なしだ。


けれど読めないというか、性格がいまいちつかめない。ただでさえ問題児であるリコリスとラフマがいるというのに、彼女アベリアが加わればますます面倒なパーティになる。


だが……。


自分の仲間の潔白を晴らしたいのであれば、その信念からくる行動は誠実なはずだ。妙な問題は起こさないことだろう。



「――分かった。俺たちのパーティに入ってもらおう。」



「ありがとうございます!」



「これからヨロシク!アベリア!」



ラフマが肩を組んで笑いかけた。


その様子を見て、リコリスが微笑んだ。


――うんうん。やっぱり女の子がいると、華やかさがあるよね。


ラフマも女の子だって?いや~ラフマに色気はゼロだから。



「……なんか失礼なこと考えてない?」



「いや~全然。」



ラフマに睨まれ、リコリスはひらひらと手を振った。



「それでだが、国王の話では――。」



咳払いをし、ネモフィラが説明を始めた。



「逃亡先があるとすれば、海辺に行くことが予想されている。船で海外に行くという可能性だ。そのため、先に行った兵士や冒険者は海辺を目指しているはずだ。」



「でも――あのセプテムちゃんがいるんだ。そんな安直な行動をするかな?」



贔屓しているウェイトレスが怪盗シャドウであるという事実には心底驚かされた。けれど、その事実を一度受け入れてしまえば、ただ頼もしい存在へと変わった。


その怪盗シャドウである彼女が、追手が海に行くことを予想していることを予想出来ないはずがない。何か別の手を打っているはずだ。



「その線は大いにある。そのため、俺たちは別方向から行くぞ。」



ネモフィラのその言葉に、新たに結成されたパーティメンバーたちは頷いた。



それとほぼ同時刻――。



「大変なことになったな、ジギタリス。」



城外にて、ジギタリスはある男と話していた。



「おう……けど俺は、いや俺たちは、フィカスがんなことするはずないって信じている。だから……。」



「協力してくれ、ということだろう?分かっているよ。俺としても、戦の英雄が反逆者呼ばわりされるのは、耐えかねないからな。……大きな声で言ったら、捕まってしまうだろうけどな。」



男はそう言って眼鏡をくいと押した。



「おう!ありがとなカイドウ!で……どうすんだ?」



「お前はともかく、俺とカナメは戦えない。そこでだ、カナメ。」



兄に呼びかけられ、弟であるカナメは頷き一枚の紙を取り出した。



「――軽く情報収集をしてきました。ジギタリスさん、王様の指示通りほとんどの人は海辺を目指しているそうです。他方向に行く者は今のところ確認されていません。」



「どこか、他に行きそうな心当たりはないのか?」



「心当たり……か……。」



隠れられそうなところ、つまり人が来ないところだ。


あるとすれば――。



「フィカスの故郷だ。あそこはそんなに人も来ないだとうし、隠れるにはいいんじゃねぇか?」



「よし。決まりだな。」



そして――。



「おや?サンナちゃんじゃないですかー?どうしたの?」



「しらばっくれないでください。エレジーナ、騒ぎはここまで届いているでしょう?」



エレジーナの貸家にて――。


サンナはそこを尋ね、交渉をしていた。



「フィカスを見つけることが出来れば、国からも莫大な報酬が出るはず。貴方エレジーナならば、引き受けても不思議ではないですよね?」



「だからそれに協力するってわけだねー?」



「はい。」



サンナは頷いた。


要はエレジーナのパーティに加わるということだ。



「それはいいけど……本当に見つけた時、サンナちゃんはどうするのかなー?」



「……さぁ?どうするでしょうかね?」



沈黙が流れ、睨み合いになる。


その空気を先に壊したのはエレジーナだった。



「いいよー。じゃあ一緒に行こうかー。」



今ここに、新たなパーティたちが結成された。

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