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マジックセンス  作者: 金屋周
第十章:逃亡
128/222

125:カフェ

青緑色の長めの髪をした女性のウェイトレスは、エレジーナの名前に強く反応しフィカスに顔をぐいと寄せてきた。



「え、えっと……貴方はエレジーナの知り合い……ですか……?」



突然の行動に戸惑いながらもフィカスがそう尋ねると、ウェイトレスはハッとした表情になり頷いた。



「はい……失礼しました。……それで、エレジーナを知っているのですか?あ、ご注文はお決まりでしょうか?」



――口ぶり的に、本当にエレジーナを知っているようだな。でも誰だ?


セプテムはウェイトレスを見つめるが、その顔に見覚えはない。



「……私はスパゲッティで。フィカスは?」



「僕も同じ……いや、このランチセットをお願いします。」



スパゲッティを上手に食べられる自信がないことに気が付き、テキトーにメニューを指さした。ランチセットはボリューム満点のイラストがメニューに描かれているが、気合で完食しよう。



「かしこまりました。マスター!スパゲッティとランチセット一つずつです!」



大声で厨房へと叫び、ウェイトレスはセプテムの隣に座った。


図々しいな……。



「で?エレジーナの知り合いなわけ?」



セプテムがウェイトレスを睨むと、彼女は誇らしげに胸を張った。



「私、エレジーナの相棒一号なんですよ!」



一号……?


その呼び方には聞き覚えがあった。


そうだ……初めて会った時に聞いた。



「それで、どうしてあなたはここに?」



思い出しながらフィカスは頷き、当然の疑問をぶつけた。


一号が辞めた理由をエレジーナ本人が喋っていたが正直、戦闘中の彼女の言うことは信用出来ない。



「それがですね……私にはアサシンは向いてないって言って、宿で寝ている私を置いてどっかに行ってしまったんですよ。ヒドイですよね!?」



「ああ……はい。」



「あ、名乗っていませんでしたね。私はエヌマエルっていいます。それでですね――。」



エヌマエルはまくし立てる。



「私は今、転々としながらエレジーナを捜しているんです!お二人がエレジーナのお知り合いならば、どこにいるか教えていただけませんか!?」



「それなら……。」



レグヌム城下町にいるはず。


と言おうとしたら、セプテムに口を塞がれた。



「私たちも最近会ってないのよ。で、あんた――。」



「へい!注文コンプリート!」



奥の方から威勢のいい声が聞こえてきた。



「すみません、一度料理を取ってきますね。」



そう言ってエヌマエルは席を立った。


今の声、ここのマスターの声だったのか。



「全然、マスターって感じじゃなかったわね……。」



「うん……。」



少しすると、両手にトレーを持ったエヌマエルが戻ってきた。



「お待たせいたしました。こちらになります。――で、何でしたっけ?」



「私たち、海を渡りたいのよ。だから、港を知らないかしら?」



「海……ですか……。」



エヌマエルは思考する。


ここから近いところだと……。



「ここから南西に行ったところ、ですかね?レグヌムから行く方が近いと思いますけど。」



セプテムはそれを聞いて舌打ちする。


今からでは、もう遅い。港に辿り着く前に追手に見つかるだろう。



「海はなしよ。逆方向……山に行くわよ。」



「うん。分かった。食べて準備したら出発……。」



「それなら!私も連れていってください!」



突然の大声に耳を押さえ、セプテムはジト目でエヌマエルを見る。



「何であんたを連れて行かなきゃいけないのよ?」



「エレジーナに会いたいからです!お二人は最近、エレジーナに会ってないんですよね?それはつまり、この辺りにはいないということ。なら、旅の最中に出会えるかもしれないじゃないですか!」



さっきのセプテムの嘘を真に受けているのか。


うーん……この人、良い人そうだけど、色々と単純というか……。


僕たちの事情を知ったら、どういう反応をするか分からない。だから、一緒に行動しない方が良さそうな気がする。



「悪いけど、僕たちは二人で旅をするから……。」



「何でですかッ!?」



再びフィカスに顔をぐいと近づける。



「私は荷物持ちでも何でもやりますから!連れていってください!お願いしますッ!」



「えっと……でも……。」



危険、というかリスクも多い。だから断りたいんだけど……。



「いいわよ。」



と、セプテムは首を縦に振った。



「セプテム!?」



てっきりセプテムも反対かと思っていただけに驚いてしまった。



「ただし、私たちの言うことを何でも聞くこと。それが条件よ。」



「はい!何でもやります!」



食いつきが凄い。



「決まりね、エヌマエル。さっフィカス。これを食べてすぐ出発するわよ。」



「うん……でも……。」



予想以上に量が多い。これを食べきるのは至難だ。



「少し手伝ってほしい……かな。」



「はい!私に任せてください!」



フィカスからフォークを奪うと、エヌマエルは凄い勢いで食べ始めた。


こうして、新たな道連れが出来たのであった。

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