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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
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114:読み

迫りくる死神を前にして、逃げたくなる気持ちをグッとこらえ、フィカスは目の前の景色に集中する。


見ろ……死神だけじゃない……全部だ……!


巨大な石壁を創造し、自らと死神との間を塞いだ。さらに己の武器を創造しておく。


石壁に亀裂が入った。鈍い銀色の刃がその亀裂から顔を見せ、そこを起点に壁が崩壊した。そして死神が崩れた石を踏みつけ接近してくる。


今だ……!


こちらに向かって歩きだしてきたこの瞬間――!



「……ッ!」



そのタイミングこそが、フィカスの狙っていたものだ。


先ほど創造した武器――それは大鎌。


大きく振りかぶり、横からそれを振るった。


――死神は壁を突破すること、そしてその奥にいる僕のことを考えていたはず。それはつまり、それ以外への意識が、警戒が薄れていたということ!


完全に隙を突いた一撃に、死神は驚いた様子を見せるとともに飛び退いた。


躱された……!



「けど……!」



一瞬。ただ一瞬さえあれば良い。その時間さえあれば、次の攻撃を繰り出すのには充分すぎる。



「喰らえェ!!」



ジャンプし、勢いをつけた縦斬りをジギタリスが仕掛けた。



「チ……。」



死神はまたもや躱した。


大鎌で反撃に出る余裕がないことの現れだ。


――良い陽動です。


ジギタリスが大声を上げたことで、空を切る僅かな音さえ掻き消えた。



「くっ……。」



サンナが空中からナイフで攻撃したが、死神が避ける方が一瞬早かった。ナイフはローブの端を裂いただけだ。



「まだだぜ!」



フィカスが正面に、ジギタリスが背後にそれぞれ回り込む。



「逃がさない!」



そしてサンナが二人の中間に降り立った。


これで準備は整った。


これで……。



「そこか……。」



先ほど仕舞ったナイフを取り出し、死神は三人のいない方向へと投げた。



「うっ……。」



跳び出そうとしていたアベリアは、それを見て踏み止まった。


読まれていた……?



「……クソッ!」



陣形が崩れた。今からでは、もう遅い。


そう判断するや否や、サンナが飛び出し死神に斬りかかった。


それを死神はバックステップで躱しつつ、徐々に三人から距離を取っていく。



「……っ!」



突如、大鎌を背後へと回した。


アベリアは急ブレーキで止まり、跳躍して後方へ移動する。



「このやろっ!」



――後ろにも目が付いてんのかよ!?


大剣で薙ぎにいくが、大鎌によって大剣が斬られた。


軽くなった大剣を捨て、ジギタリスはフィカスの元へと行く。



「同じの頼むぜ!」



「ああ!」



フィカスは大剣を急いで創造する。が、その時間があれば……。



「させるかッ!」



ジギタリスへと駆けだした死神を止めるため、サンナが接近を仕掛けるが、振り回される大鎌によりそれは阻まれた。


ぐっ……接近出来ない……。


全てを斬る大鎌。その存在のせいで、不用意な接近が許されない。


つまり、歩みを止める手段がない。


数の有利である、足止めが一切効かない。



「下がって!」



大剣の創造を一旦諦め、フィカスは前に出た。


小剣を構え、左右に揺さぶりをかけながら隙を窺う。


……どっしりと構えている……そんな感じだな……。


無理はあまりせず、出来るだけ安定した行動を好む。


これまでの戦闘ぶりから見て、そんな感想をフィカスは抱いた。



「――だったら!」



左足を奥に、重心を手前に。


出来るだけ身体を斜に構え、一気に接近する。


……無茶に対して、どう動く!?


ここで普通に斬りかかられたら、躱す術はない。しかし、無茶に対抗するには相応のリスクがある。



「……フン。」



死神はフィカスに対しては何もアクションを起こさず、脇に大きく跳んだ。


直後、アベリアが死神のいた地点を強く叩いた。


――読んでいた……プラス無理はしないってことか……それより!


重心を傾けた身体は、そう簡単に止まるものではない。



「ぶつか……ッ!」



「ごめんねっ!」



アベリアはフィカスの身体を受け止め、そのまま宙へと放り投げた。



「うわっ……っと!」



宙に浮かぶ感覚……とまではいかないが、浮遊感には慣れてきている。これまでと違い、そこまで慌てたりせずに済んだ。


……ちょっと高すぎないかな?


地上が遠い。というか、暗さも相まってほとんど何も見えない。


……見えてきた……あと、着地どうすればいいんだろう……?


サンナが斬りかかるのが見えた。


両手を寄せて、大鎌の柄に二本のナイフを当て奥へと弾く。その後、弾くために伸ばした両腕を下に向け、右足で回し蹴りをした。



「ぐぅっ……!」



鎧は身に付けていないか。


そのまま地面付近で一回転すると、その勢いのままに右手のナイフを投げつけた。


だが、それは振り下ろされた大鎌によって斬られた。けれど、これで刃は下を向いている。


好機チャンス……!


アベリアが拳を固め、死神に襲いかかる――。



「ん……それッ……!」



「何ッ……?」



しかしアベリアは攻撃せず、ジャンプして死神の頭上を飛んだ。そして落下してきたフィカスを受け止め、彼を小さく投げた。


よし……!


今ので体勢に余裕が生まれた……これなら……!


ブーメランを創造し、それを死神の首めがけて投げた。


バサッ……。


ブーメランは首まで届かなかった。フードを裂いただけだ。


――腕の振りが甘かったか……でもこれで、フードを剝げた……。



「……えっ!?」



死神のその素顔が今、顕わになった。

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