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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
116/222

113:連携・2

静けさを取り戻したと思われるレグヌム城下町に到着した時、ラフマが慌てた様子で駆け寄ってきた。



「フィカスたち!」



その様子を見るだけで、何か起きていることが分かった。


やっぱり、向こうの偵察兵の情報は正しいってことなのかな……。



「何があったんですか?」



「死神だ!奴がいる!」



死神――。


その名を耳にするだけで、背筋が凍る気がした。


あの時、死神に殺されかけた記憶はまだ鮮明だ。ちょっとでも仲間の到着が遅れていたら、僕はそのまま殺されていたことだろう。



「死神が来てんのか……。」



「フィーくん?」



迷っている時間はないはずだ。


過去がどうであれ、今どうすれば良いか、それ自体に変化はない。



「行こう、皆。」



「はい……それでラフマ、場所は?」



ラフマは真っ直ぐ奥を指さした。



「このまま進んでいった先。あたしも行きたいけど、ここにいないといけないから……頼んだよ。」



フィカスたちは黙って頷いた。


そして、闇の中へと向かって走り出した。


――少しばかり、身体が重い気がする。


……大丈夫。何とかなる。独りじゃないんだ。もしもの時は、皆を頼れば良い。


死神の元に向かいながら、フィカスは自らに暗示をかけるように言い聞かせる。



「……!あれよ!」



夜の闇の中、目立つ赤いローブを纏った背の高い男。


彼の近くに負傷した燕尾服を着た少女。そして、ドレスを着た女性を背負った女性がいた。



「皆!大丈夫!?」



「……やっと来たか……頼んだわよ……。」



セプテムが振り向き、絞り出すような声でそう言った。


あのセプテムがこうなるなんて……どれだけ強いんだ……奴は……。



「姉さん!?」



「あらアベリア、貴方もここに来たのね。」



姉であるアモローザに駆け寄り、アベリアは彼女が背負っているノウェムを見た。



「姫様は……?」



「命に別状はない……はずよ。それより貴方、早くあの男を何とかなさい。」



特に襲いかかってくるでもなく、ただ立っている死神に視線を送る。


その態度は自信か余裕か……。



「……分かってるわ。だから姉さんたちは、どこかに隠れていて。」



「あら?勝負の行方を見守らせてもらうわよ?」



「えっ!?」



あの妹が自分に対して、ここまではっきりと意見を述べているのだ。その成長ぶりを見逃す選択肢はない。


それに……どうせ負けたら、誰もが死ぬ。逃げるだけ無駄だと考えて良いだろう。



「姉さん……ええ。それでいいわ。」



アベリアは溜め息を吐いた。


どうせ自分では、彼女を動かすことなんて出来やしない。ここは素直に言うことを聞き入れるしかない。



「……フィーくん。」



「うん。やるよ、皆。」



フィカスを中心にアベリア、ジギタリス、サンナが集まる。



「――余計な準備は整ったか?」



そう死神が問いかけてきた。



「ああ。……僕のこと、憶えているか?」



「当然だ。フィカス。」



意外な返答だった。


死神にとって自分は、有象無象の一つでしかないと思っていた。けれど、実際はそうではなかったらしい。



「あの時は仕留め損なったが……今回はそうはいかんぞ。」



「あの時のようにはいかないさ。」



決意でもあり、払拭でもあった。



「……それは楽しみだ。」



死神が右足を動かした。


それと同時に――。



「――ハッ!」



アベリアが飛び出した。


肉体強化魔法で跳躍し、一瞬で死神に詰め寄り拳を向ける。



「……。」



死神は身を捩り、左手でアベリアの腕を掴んだ。そしてそのまま、流れのままに引っ張り地面に引き倒した。



「ッ……っと!」



倒れたアベリアはすぐさま両手を石畳につけ、逆立ちするように身体を起こした。そして腕を曲げ、空中へとジャンプした。


ワンテンポ遅れて、大鎌がその位置を横切った。


――今だ。


死神が空振りし、こちらに背を向けている。


サンナは金色の翼を広げ、滑空し接近する。



「フィカス!」



死神が自分の方を向いた瞬間、サンナもまた空中へと飛んだ。


――これで正面が空いた!


フィカスはすぐさまブーメランを創造し、間髪入れずにそれを投げつける。



「オラアァァッ!!」



ジギタリスがブーメランを追いかける形で走った。


これで……空から二人の攻撃。正面にブーメラン。それと時間差でジギタリスの大剣。


アベリアの攻撃はともかく、サンナの攻撃を避けきることは難しい。なぜなら、飛べるからだ。翼で自由に宙を動ける彼女から逃げることは、地上の生物にはまず無理だ。


……打ち合わせした様子はなかった。即興でこの連携か。



「――面白い。」



ただ一言、死神はそう呟き、行動を開始した。


まず、大鎌を宙にいる二人めがけて投げつけた。



「……ッ!」



狙いは雑だ。当たることはない。けれど、これにより攻撃のタイミングがズレた。


アベリアは空中で身体を捻って躱し、そのまま着地した。


――次は正面だ。


懐から再びナイフを取り出し、それを正面に向けた。



「ハァッ!?」



ブーメランはナイフに当たると真っ二つに裂け、失速するとともに落下した。


その様子を見て、ジギタリスは慌てて止まる。


大鎌だけじゃねぇのかよ!?



「……。」



派手な音を立てて落下した大鎌を拾い上げ、死神はフィカスに向かって走り出した。



「次は……。」



お前だ。


フードの奥から、そう言葉が零れてきた。

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