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マジックセンス  作者: 金屋周
第八章:決戦
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109:判断

「どうだ?痛むか、フィカス?」



「う~ん……多分、大丈夫、かな?」



試しに肩を動かしてみるが、痛みはほとんどない。


移動しながらフィカスはジギタリスに回復魔法をかけてもらい、怪我の治療を行っていた。



「おう!ならいいけどよ。」



この分から、もうしばらく活動していても平気だろう。


けど、気怠さや頭痛がまだ残ってはいる。快調時と同じことは出来ないことだろう。



「いいか?回復魔法は傷を癒すだけだ。疲労とかそういう類のは治せない。本当は寝るのが一番なんだけどよ……。」



「大丈夫。町で何が起きているのか、それを確認したら休むからさ。今だけは……。」



……無理をしてでも、動かないと。


ここで一人だけ休んじゃ、ダメな気がする。


根拠なんて何もない。けれど、ここで歩みを止めたら、後悔することになる気がした。だから――。



「僕は大丈夫だから。急ごう!」
















眼前へと迫りくる大鎌。


エレジーナはそれを、平常心で見つめていた。


どうしよう……今から足を動かしても間に合わない気がする……。


そう判断するや否や、エレジーナは抱いていたラフマを脇へと押した。



「ちょっ!?」



――あたしだけ!?あんたは!?


道路に倒れ込みながらラフマが振り返ると、一歩動き出そうとしていたエレジーナに銀の刃が触れるところだった。



「エレッ――!!」



彼女の肩に刃が入った。


そのまま刃は何にも滞らず斜めに身体を斬った。



「――!!」



その痛みにエレジーナは顔を歪ませた。けれど、声を上げはしなかった。


ああ……とても痛い。


でも、昔受けた翼の傷。あの時の方が痛い。多分、この大鎌は切れ味が良すぎるんだ。


だから、綺麗に斬れているからこそ、痛みさえも綺麗。それに……。



「……ッ……くそがっ!!」



一層激しい劫火が死神に襲いかかった。


これもすぐに斬られ消されるだろう。でも、この隙に動くことは出来る。



「エレジーナッ!」



ラフマが倒れている彼女に近寄ると、僅かながらまだ息をしていた。


切り傷が心臓を避けていた。あの時、一歩動いたことで心臓への直撃を避けたのだろう。


まだ生きている。しかし瀕死状態だ。すぐに治療しなければ命はない。



「あ……あの…………たち…………。」



「えっ!?なに……ダメ……喋らないで……!」



自分のせいで死ぬ。そんなことがあっていいはずがない。誰かの犠牲の上に生きていくなんて望んでいない。



「ネモフィラ!あたしはこいつを連れていく!ちょっとこらえてろ!」



「任せろ!お前は早く行け!」



炎を切り刻まれると、ネモフィラは杖を棍の持ち方に変え、死神に向かって駆け出した。


その様子を横目にラフマは瀕死のエレジーナを背負い、ゆっくりと走り出した。


出来るだけ、衝撃を与えないように……それでいて急げ!


救護班は……えっと……入り口付近にいたはず……!


敵は城へと乗り込むことを目的としているはず。それはつまり、余所見はせずに一直線に向かってくるということ。


そのため、隠しておくべき存在は入り口から脇へと行った先にある。救護兵もそこにいる。



「誰かっ!こいつの回復を!」



町の入り口まで来ると、ラフマは腹の底からそう叫んだ。



「っエレジーナ!?誰にやられたんだ!?」



エレジーナが死にかけるとは思っていなかった。


セプテムは石垣から飛び降りと、救護兵を呼びながらラフマに駆け寄った。



「死神だ!奴が来ている!今、ネモフィラが戦っている!」



「死神か……!」



直接目にしたことはないが、話はフィカスたちから聞いている。


先ほど聞こえた騒ぎがそれだとしたら、もう既に大半の戦力はやられていることだろう。


それに、生き残っていたとしても、逃げ出している可能性が高い。所詮、一番優先されるのは己の命だ。戦争とは関係ない、第三者にまで命を張る者はそういないだろう。



「こちらへ!すぐに回復いたします!」



救護兵がやって来て、慎重にエレジーナを抱えた。



「頼んだ。僕は死神のところへ向かう。ラフマ、君はここで敵の増援を追っ払ってくれ。」



「……分かった!」



もう一度、ネモフィラのところへ行きたいというのが本音だ。


しかし、この場に誰かが残らないと敵の兵士が来た時に対応出来なくなってしまう。



「あら、それなら私も行かせてもらおうかしら?」



「アモローザさん?いえ、貴方はここに残ってラフマの援護を……。」



彼女アモローザの魔法力は認めるが、実戦には不慣れだ。事実、取り逃がした敵兵も多い。


そんな彼女を連れていくことには抵抗があった。



「いえ、ここはあの娘に任せておけば問題ないでしょう。それに、戦力は多い方がいいんじゃないかしら?」



それならラフマを連れていく方が……いや、迷っている時間はないか。


生死を賭けた勝負において、時間はあまりにも貴重だ。ほんの一秒で、或いはそれ以下の時間で生死を分かつこともある。



「――分かった。アモローザさんと僕で行く。ラフマはここを。」



「任せとけ!」



「ええ。さぁ行きましょうか。」



「ああ。行こうか!」

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