01:ギルド
数多の冒険者が集う町一番のギルド――
おそらくほぼ全ての者が働きに出掛ける時間である現在、時計の針が午後二時を差している時間にも関わらず、ギルドは大勢の冒険者や彼らに対して商売を行おうと考えている者たちによって賑わっていた。
そんな昼下がりという時間帯においても騒がしい場所に、一人の少年が入ってきた。
地味なベージュの服に身を包み、穏やかそうな顔つきの少年。
その服装とは対照的に目立つサラサラした綺麗な金髪。
男にしては少し長めな金髪を持つその者、フィカスはギルドの受付へと足を運んだ。
「あの、すみません。冒険者?というのになりたいんですけど……。」
受付嬢は少し驚いたが、その感情は表には出さず、営業用の笑顔を向けて説明を開始する。
「新規登録の方ですね?でしたら、まずはお名前と年齢、性別。それと職業――すなわち冒険職をお教えください。」
金髪の少年は頷いた。
「はい。名前はフィカス。年齢は十五歳です。性別は男です。」
緊張しているのか、一言一言で区切るように喋る。
「えっと職業は……魔法使い、です。」
魔法使い――この世界において、その職業は少数であるといってよい。
人間だけでなく、ワーウルフ、エルフ、ドワーフ……多くの種族が共生している。
全ての種族に共通している点は一つ、生まれ持った才能は一つだけであること。
魔法は生まれつき才能がある者だけが扱え、後天的に扱うことは決してできない。そして、その才能を持った者も、一つの魔法しか扱えない。
炎が操れるものは炎だけ、風が操れる者は風のみ、である。
基本スペックが他種族に比べ劣る人間が魔法の才能を持ちやすいと言われているが、定かではない。
「魔法使いですか?それなら重宝されていますので、すぐにパーティーに入ることが可能ですよ。」
「あ、いや、できれば……同い年の人と組みたいんです……。」
「同い年ですか?でしたら……。」
フィカスの謎の注文に応えるべく、受付嬢はパラパラと書類をめくる。
「……現在、フィカスさんと同じ十五歳の方が所属するパーティーはありませんね。パーティーの新規登録ということになりますが、よろしいでしょうか?」
「えっと、はい。」
受付嬢の言葉の意味はよく分からなかったが、その道の人が言っているのだから、平気だろうという考えからフィカスは頷いた。
「では、フィカスさんがリーダーの新パーティーの結成を承認します。同い年であること以外に、何か募集条件はおありでしょうか?」
「いえ、特にないです。」
「かしこまりました。それでは、年齢以外に条件はなし、ということで募集を開始します。どうぞ、あちらにおかけになってお待ちください。」
言われるがままにフィカスは隅のテーブルに腰をかけたのだった。