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天魔王(前編)

 開け放たれ寺の本堂。その前庭で護摩が焚かれている。

炎が舞い上がり、煙が本堂にある大日如来を隠しながら、夕焼け染まる空へ昇っていく。

護摩の前に山伏の衣をつけた男が、大きな玉の数珠を首にかけ、目をつぶっていた。

護摩をはさむ形で、身なりの良い武士が対峙して座っている。

二人とも、額に浮かぶ汗が凄い。

  エャーーーーッ!!!

山伏装束の男が喝を入れた後、項垂れるように身体の力を抜いた。

 「寿世ひさよか」

静かだが、重い声音が山伏の口から出てきた。

 「叔父上! いや信英殿か?」

対峙していた武士が、思わず身を乗り出したが、護摩の熱さに元の体制に戻る。

 「何故儂を呼んだ?」

武士とは対照的に、重く静かな声に感情は伺えない。

 「はっ、嫡子の件で相談したく」

 「この世の物でない儂にか」

 「はい、主君押込の疑いのあった叔父上に伺いたい」

 「・・・」

山伏は探るように、寿世を見る。身なりは山伏だが、目は侍のような鋭さがある。

 「次の主君を仰ぎたくないという事か・・」

 「叔父上と同じですよ」

静かな山伏の言葉に、寿世は卑劣な笑みを浮かべた。

 「わかった」

山伏は脇にあった短刀を握り立ち上がると、いきなり自分の腹に突き刺し、横へと切り裂いていく。

寿世は、山伏の突然の行動に驚く事もなく、胸元で印を紡ぎ始めた。

     ドサッ!   バキ!

山伏は炎舞い上がる、護摩壇の上へと倒れ込んだ。

肉の焼ける匂いが、煙と共に空へと昇っていく。

寿世は紡いでいた印をほどき、座したまま気絶したように項垂れ、その場で崩れ落ちた。

陽は沈み、闇が本堂前を支配する。

    チリーーーン  と小さな鐘の音が響く。

護摩壇の火は消えているが、くすぶるような煙が、夜空へと昇っていく。

      カサカサ

星明りのなか、立ち上がる人影が見えた。

寿世だ。

立ち上がった寿世は、両手首を動かし、首を回す。

 「ふん、若い身体は悪くないな」

暗闇の中でも、笑っているのが分かる。

寿世は、石段を降り、闇の中へと消えて行った。



 「ほうー、 ここが恐山菩提寺ですか」

 「さよう、比叡山、高野山と並ぶ霊場です」

 「確か、百以上の地獄があるとか」

 「そうですよ、それぞれの地獄の番人がいると伝えられています」

光圀一行は東北の霊場、恐山菩提寺を訪れていた。

 「弘前藩の管轄でしたかね」

 「弘前藩は少し揉めているという噂がありましたが」

 「粛清後は乱れるものです。それを抑えるのが藩主の責です」

弘前藩は数十年前に後継ぎで揉めた経緯があった。幕府の介入で鎮静化したようにも見えるが、その火種はまだ燻っていると噂されていた。

 「そこは信政殿の手腕ですな。お参りも済ましたし、宿を探しましょうか」

光圀達はあくまでもお忍びの旅だ。お家騒動には口を出さない。弘前藩に顔を出す事もない。それに水戸家は退魔が役目、妖が絡まない限り弘前藩と接する事はないだろう。

宿をとり、食事を済ませた後、近くに温泉があると聞き、三人は向かう事にした。

 「温泉とは助かりますね」

 「ええ、北の地ですから、夜は少し冷えるので温まりましょう」

湯舟に浸かり、目を閉じる光圀の耳に唄が聞こえてきた。

     人間五十年   下天の内をくらぶれば 

光圀が湯けむりの向こう、目を凝らすように見た。

見た目は若いが、どっしりとした風格の男が目を閉じ、唄を口ずさんでいる。

 「ほう、敦盛ですかな」

白髪の老人の言葉に、若者が唄を止めた。

 「これは失礼」

光圀は若者が気分を害したのではないかと思い、頭を下げた。

 「いやいや、こちらも失礼した。湯の気持ちよさに思わず口からでてきたのだ」

若者は気さくなのか、年寄りの光圀に対して敬語を使う事もなく三人の方を見る。その雰囲気から、どこかの侍のように思われた。

 「私は幸若舞の敦盛が好きでな」

 「ほう、お若いのに。失礼ですがお侍様でいらっしゃいますか」

 「ははは、ここは裸の場。身分等どうでもよいではないか」

 「そうですな、野暮な事をお尋ねしてしまいました」

 「ハハハ、気にする事でもない。私はそろそろ上がるゆえ、其方等はくつろがれよ」

若者が湯舟から上がり、出ていった。その後ろ姿を光圀が凝視する。湯気のせいか、若者の身体が揺らいで見えた。

 「肝が据わった若者ですな」

角も若者が出て行った方を見ながら呟いた。普通は角の巨体を見たら、眉を凝らすかするのが常だ。しかし若者は動じる事なく話を進めていた。

 「・・・・」

 「ご隠居、何か気になる事が?」

 「いやいや、気のせいなら良いのですが・・・」

湯舟に溜まっている温泉水のように、光圀は言葉を濁した。




 「何者だ!」

夕日が刺す山道で、複数の侍の姿が見える。

山道を下ってきた者達は身なりの良い侍で、襲撃するように待ち構えていた物達は浪人なのか、薄汚れた着物を着て、精気のない顔色で侍達を見つめている。

 「我らを信寿のぶひさ様の側近と知っての狼藉か!」

身なりの良い侍達が言葉を荒げながら叫ぶが、浪人達の方は無言で、それぞれ刀を抜き構えだした。

 「構わぬ、切捨てよ!」

侍達の方も刀を抜いて浪人達に切りかかった。  

     キン!   キン!

刀と刀がぶつかる音が山道に響く。

    ブス!   キン!    ズサ!

肉を切る音、着物を着る音等が混ざりだす。

あきらかに侍達の方が強い。浪人達は剣術を得ているとは思えないような刀の使い方で、次々と侍達に倒されていった。

 「ふん、たわいもない奴らじゃ。須藤! こ奴らの懐を探れ」

須藤と呼ばれた若い男が、倒れている浪人から、何か素性が判明する物がないか調べ始める。何処の手の者が自分達を襲ってきたか知る必要があるからだ。

浪人の懐に手を入れ須藤が、何か違和感があるのを感じ顔をしかめた。

 「どうした須藤?」

須藤は返事をせずに、懐から手を出した。汚れていない自分の手だ。

そう、普通は切られた者の懐を調べた時は血がつく。けれど須藤の手は血で汚れていない。それに、懐に手を入れた須藤だけが気付いた事。冷たくて硬い。今切り殺したはずの浪人の身体が、冷たく硬かったのだ。

     シャァーーーー

     ギャーーー!!!

切り殺されたはずの浪人が、行き成り須藤の腕を噛み、肉を喰いちぎった。須藤は大きな悲鳴を上げて、浪人を蹴飛ばした。

     シャァーーー

浪人が四つん這いにになり、侍達を威嚇する。それに呼応すかのように、倒れていた浪人達もゆっくりと動きだした。

 「な、なんだ!」

 「分からん、こ奴らは先程切捨てたはずだぞ」

 「そ、そうだ、確かに切った」

狼狽える侍たちは円の陣形で浪人達と対峙する。浪人達に刀を構える者はいない。四つ這いで侍達の周りをうろつく者ばかりで、まるで獲物を囲む狼の群れのようだ。

      シャァーーーー

浪人が歯をむき出し、侍達を威嚇する。

      シャァーーーーーー

        シャァーーーーーー

          シャァーーーーーー

浪人達が呼応するかのように、それぞれが威嚇し始めた。

       グォーーーーー

一人の浪人が侍に飛びかかる。それを合図に残りの浪人達も獣のように次々と、侍達に襲い掛かっていく。

     ギャーー

          グォーーー

     この野郎!!!!

          グォーーーー

侍達は刀を振り回しながら応戦するが、腹、胸を突き刺しても浪人達は息絶える事なく襲い掛かってくる。

飛び掛かってきた浪人の脚を侍が切り落とした。それでも浪人はバランスを欠きながらも起き上がり、再び襲い掛かろうとする。

 「皆!  手足を切り落とせ!」

一人の侍が、脚を切り落とされた浪人の動きを見て叫んだ。

侍達は勝機を得たかのように、次々と浪人達の手足を切り落としていく。驚いた事に浪人達は手足が無くなっても芋虫のように這いずるながら侍達の方へと動きだす。しかしスピードが遅い。背中を侍に踏みつけられ、頭を切り落とされていく。

頭の無い胴体は数分間はバタバタと地面でもがいているが、電池がきれたかのように動かなくなっていった。

 「何なんだ・・・」

 「・・・・」

侍達は地べたに座り込み、動かなくなっていく浪人たちだったものを見つめていた。

 「大丈夫か須藤」

 「はい」

須藤は、噛みちぎられた皮膚から流れる血を手拭いで拭き、止血の為に縛る。

少し垂れた須藤の血が、地面を赤く染める。しかし浪人達の血は流れる事もなく、地面を汚す事も無かった。

暮れかけた夕日が、血液の代わりに、地面を赤く染めていった。



 「信寿様の所もたいへんだな」

 「ああ、死人の群れだからな」

菩提寺を訪れ、湯治のため暫くこの町でくつろいでいた光圀の耳に不穏な言葉が入ってきた。ここは弘前藩城下町、料理が評判の飯屋だ。

 「なんで死人と分かったんだ」

 「切っても死なず、血も出なかったらしい。信寿様の屋敷で働く弟からの話だから確かだと思うぞ」

 「それは怖いな」

 「ああ、また城内で揉め事かな?」

 「俺ら下々の者には判らんさ、けど、とばっちりを受けたくはないな」

 「ああ、死人の話を聞いたら怖くなってきた。今日は早くけえるべぇ」

男達が帰り支度をしている時、一人で来ていた侍風の男が立ち上がり、男達の方へと向かって行った。

 「おいお前達、その話は本当か?」

侍風の男、先日光圀が湯舟で言葉を交わした男だ。男達は侍風の男に萎縮しながら頷いた。

 「死人とはどんな奴だ?」

 「はい、浪人風だが剣術が出来ていないとか」

 「ほう、そのように伝わっているか」

 「はい」

 「他には?」

 「はい、四肢を切り落として、何とか倒したと」

 「そうか。わかった。引き止めて悪かった」

侍風の男は男達の食事代も払い、店を出ていった。

話をしていた男達も引き上げていく。その後ろ姿を見送り、光圀は茶をすすった。注文した料理はまだ出てきていない。

 「ご隠居、今の話は」

 「ええ、ここでの滞在が長引くかも知れませんね」

 「しかし死人とは・・」 

 「ええ、厄介な事です」

 「あの男、尋ねるというより、確認しているように聞こえましたが」

角の言葉に助も頷いた。

 「弥晴」

光圀が下を向くと黒猫が控えていた。

黒猫は一鳴きした後、侍風の男が出て行った方角へと走り出していた。

 「今は報告を待ちましょう」

光圀達の前に膳が運ばれて来た。店の中は賑わっているが、ひろがりつつある不穏な噂が、店内に影を落としていた。




 「今帰ったぞ」

寿世が暗い屋敷の門をくぐる。津軽寿世。後継ぎで揺らぐ弘前藩の重鎮だ。津軽信寿と並んで五代目藩主にと担がれていた。しかし跡取りはほぼ信寿にきまりつつある情勢で、彼には分家の党首との話が持ち上がっていた。

主が帰って来た屋敷で、彼を出迎える者がいない。普通なら侍女などがいるのが当たり前の役職だが、屋敷の中は暗く静まり返っていた。

暗い屋敷の中を寿世が一つの部屋を目指して歩く。その部屋だけ薄く灯りが漏れている。

 「隋風、入るぞ」

寿世が襖を開けると、僧侶らしい男が座して書物を読んでいた。

寿世が隋風と呼ぶ僧侶。見た目は細く、書物を押さえる腕も骨が浮き出ているように見える。年齢は読みづらく、若いのか、老けているのか、曖昧さを感じさせる。

 「食事に行っていたのだが、お主の言う通り死人の噂が出ておったわ」

 「  ・  」

 「そうか、思惑通りか」

 「  ・  」

 「で、これからどおする?」

 「  ・  」

 「ほう、それは面白い」

寿世がが一人で喋っているようにみえるが、寿世の中では会話が成立しているようだ。まるで寿世にのみ、隋風の声が聞こえているみたいだ。

 「隋風よ、数は揃っているのか?」

 「  ・  」

 「ほう、よくそれだけの死体を集めたな」

 「  ・  」

 「そうか、死体は侍でなくて良いのだったな。農民でも町人でも」

 「  ・  」

 「ハハハ、もう少し数がいるな。近くの農村から調達するか」

 「  ・  」

 「そうだ、数を増やして信寿の所へ攻めいる。その後は天下布武じゃ」

 「  ・  」

 「わかっている。まずは弘前藩の掌握だ」

       カサ!

庭で物音がした。寿世が急ぎ刀を握り縁側に出た。

     ニャー

黒い猫が寿世の方へ光る瞳を向けていた。いや、その瞳は部屋の中の隋風に向けられているようだ。

猫は踵を返し、庭の雑草に紛れながら屋敷の外へと向かう。途中塀の前にある木に登り、塀を乗り越えようとジャンプした。

     ピシッ!

塀の上空で青い炎が上がり、猫を包み込みながら燃え上がる。猫は紙片へと姿を変え、燃え尽きていった。

 「猫か」

寿世はゆっくりと部屋へと戻る。彼には青い炎は見えなかったようだ。隋風はその姿勢を崩す事なく、書物に目をやっていた。        



 「ばっ! 化け物だ!」

夕日刺す村で、畑仕事を終えた村人が走る。とにかく家の中へと逃げ込む事しか思いつかない。

村人は帰路の途中で、うずくまっている男と遭遇した。身なりは浪人風だったが、知らないふりをして通りすぎるのも気が引けて、声を掛けてみた。

顔を上げた浪人に目が無かった。いや正確に言うと、片方の目玉が無く空洞で、もう片方の目玉は飛び出し、顔にぶら下がっている状態だった。

村人は村落の中を走る。途中知り合いに腕を掴まれ、止まらざる終えなかった。

 「どおしただ?」

 「ば、ば、化け物が・・」

後は震えて声にならない。村人と知り合いの男が村落の入り口を見ると、四つん這いで歩いて来る人らしき者が目に入った。 

 「何だあれは?」

 「ば、ば、化け物だよ。みんな逃げるだ」

村人は掴まれた腕をほどいて、自分の家へと走りだした。残された知り合いの男はもう一度入り口の方を見る。四つん這いで動く者の数が五つに増えていた。

知り合いの男も自分の家へと走り出す。途中声を張り上げ、村中に声を張り上げながら自分の家へと走っていく。

 「みんな!  戸を閉めて閂をしろ!」

知り合いの男はまだ冷静が残っているのか、村中に危機を知らせながらはしる。あの浪人の顔を見ていないから冷静さを保っているのかもしれない。しかし人が四つ這いで歩いて来る姿は異常だ、知り合いの男はありったけの声を張り上げ家へと急いだ。

村落の入り口に近い家の村人が、外の騒ぎを聞いて家の外に出た。出た瞬間何かが襲い掛かって首を噛まれ倒れこんだ。呼吸ができず薄れいく意識の中で、自分の喉元に噛みついている者の顔が視界に入る。ぶらついている眼球と窪んだ黒いまなこ。村人は恐怖を覚える間もなく絶命していった。

    バキ!   バキ!!

      キャーーーーーーー

        バキバキ!       バキ!

      ギャーーーーーー!!

      ワーーーーーー!!!

戸が破壊される音が響き、悲鳴がこだまする。

四つ這いで歩く者に対して、閂は通用せず、戸が破壊されて、中の村人が次々と殺されていった。

最初に浪人に声を掛けた村人の家も、戸が破壊され、血臭が家の中を満たしていた。

      ゴロゴロゴロ

陽が暮れ、血臭漂う村落に荷車が入ってくる。荷車を引いているのは曲げが解けている男で、その左右を子供が荷車を押すように歩いている。いずれも生気が感じられず、人形が動いているかのようだ。

黙々と村中の死体を無造作に荷車へと乗せていく様は、地獄で拷問を受け、動けなくなった罪人を運ぶ鬼のように見えた。

やがて死体の山で埋め尽くされた荷車は、ゴロゴロと地面を引きずるように動き出し、暗い山道を登っていった。




 「何! 近隣の農村に人がいないだと!」

津軽城に異変の報告が届けられた。

 「はっ!  ここいらの村で行方不明の者が出ていると報告を受けていたのですが、一つの村では人が居なく、家が壊され、いたる所に血痕があり、まるで盗賊に襲われたかのようです」

 「盗賊だと?」

 「しかし盗賊の仕業だとして、食料はそのままで、死体が一体も無いのです」

 「熊等に喰われたのではないのか?」

 「いえ、それでしたら何かしらの肉片が残るはずですが」

 「何も無いのか・・」

報告を受けた家老の岩泉源豊いわいずみげんほうは顔をしかめる。村人が一人もいなくなるというのは初めての事だ。しかも村中に血痕があるのに死体が無い。これからの対処が必要になる事態だ。先日信寿の部下が化け物じみた者達に襲われたのも気掛かりだ。

 「上様に報告しに行く。各役職者に連絡を」

 「はっ!」

岩泉はこれからの事を話合う為に重鎮会議を招集した。皆信政の前で頭を下げている。

 「皆、顔を上げよ。岩泉、急な会議とは何事じゃ」

 「はっ、以前から行方不明が出ている村落の件でございます」

 「不明者が見つかったのか?」

 「いえ、さらに悪い報告であります」

岩泉の言葉に信政は眉をひそめる。

 「どう言う事じゃ」

 「村から、人が消えました」

 「何! 消えた?」

 「はっ  このまま放置しておくと他の村も危ないかもしれません」

 「む・・・」

他の村からも人が消えてしまうと、税が滞り藩の財政が立ち行かなくなってしまう。税だけでは無い、村で作物を育て収穫する人間がいなくなるという事だ。

 「殿、至急対策を討たねば大事に繋がるかと」

 「捜索隊を派遣せよ」

 「はっ それと信寿様の配下の者が襲われた件と関係しているのでは」

岩泉は信寿の部下が、化け物じみた者達に襲われた件を口のした。こちらも怪異な件だ、どこかで繋がっているかもしれない。

 「捜索隊には化け物の事を考慮し、人数を集めろ! それと陰陽・・・」

岩泉は後の言葉を飲み込んだ。信政も聞かない振りをしている。

 「捜索隊の手配を」

 「わかりました」

怪異な事案だが、岩泉と信政は陰陽網への連絡を拒んでいる。水戸家の介入というよりも、幕府の介入がいやなのだ。何とか藩内だけで事を解決しいと考えている。

城内が慌ただしく動き出す。いくさとは違い明確な敵が見えない事態に、城の者達の狼狽は隠せない。しかし動かねば事態が悪化する事だけはわかる。戸惑いを見せる城内に、秋を告げる冷たい風が吹き抜けていった。











 

































 


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