3話
前世の記憶を取り戻してまずしたことと言えば、この家にある書物を読み漁ることでした。知識は私の武器になり、盾にもなるからです。例え親から勘当されたとしてもこの世界を生き抜くために必要であると感じたからです。まずは自分の身を守るためにこの世界に存在する魔術なるものと、陰陽術なるもの。そしてなぜその力が必要とされているのか知る必要があるからです。
確かに、恋愛小説のための世界なのかもしれません。ですが私と言う存在が生まれるということはそれ相応の理由が生まれたのだということだろうと仮定しました。その理由を知る必要があるということも。
思考の海に沈んでいると部屋の扉をノックされる音に気づきました。今読んでいる本は子供向けではないことだと認識しておりますのですぐにベッドの下へと隠し、扉の方に声をかけた。
「どうぞ」
「白葉です。お嬢さま、失礼致します」
そう声がかけられると扉が開き、お父様の付き人でもあり護衛の白葉とその後に連れられた私くらいの子供が二人入ってきて、私の前で跪く。
「わたくしは、おとうさまほどえらくありませんから、どうぞきらくにしてくださいな」
「っ!?そう、させて頂きます」
私の口調が子供らしくもないことに白葉は感じたようですが、やはり上の者となれば聞くことは許されないことを分かっているのか何も言ってはきませんでした。私としては有難い事ですけども。
「いきなりどうしたのです?はくようがわたくしのへやにくることはありませんでしょう?」
「お嬢さまに我が子供たちを護衛と付き人に就かせようと思いまして参りました。娘が詩緒理、息子が雅久です」
白葉が私に護衛を付かせようとはどういう考えでしょうか。私の今している事が全て筒抜けになっているのではないかと不安な気持ちになりますがなるべく表情に出さないように気を引き締めました。紹介された詩緒理さんと雅久さんは私の顔を見て固まっているようです。何か付いているのでしょうか。ですがこのままでは沈黙が続いてしまいますね。仕方ないですが、私から話しかけて見るとしましょうか。
「はじめまして、わたくしはれいかともうしますわ。よろしくおねがいしますね」
「わ、私は詩緒理と申します。お嬢さまにお会いできて光栄です」
「まさひさといいます。おじょうさまのおつきになれてうれしくおもいます」
私が自己紹介を行えばお2人からも慌てたように自己紹介が行われました。詩緒理さんは、私よりも年上のようですわね。雅久さんは私と同じくらいでしょうか?まだたどたどしい感じの話し方ですから。
「おふたりがついてくださるのなら、あんぜんですわね。これからわたくしはさまざまなことをまなんでいきたいのです。ついてきてくださるかしら?」
「「もちろんです!」」
これから私の側で私についてくる覚悟があるのか聞きたかっただけですが、お2人のの目を見ればその強い覚悟が見て取れます。この短い時間で、私はこのお2人に何かの影響を与えたようですが、深くは考えないようにしましょう。私の進む未来の為に。