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幻実記  作者: Silly
メアラーシティ編
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Episode11 六大大陸

 しっかりと睡眠をとり早朝に村を出た俺とフィオは、朝焼けを眺めながらゆっくりと草原を歩いていた。


「次の目的地はメアラーシティ。このメアラー大陸から名前をとっているだけあって、大陸一番の規模を誇る北の都だよ」


「都と言われてもいまいち実感が湧かないな。それに大陸って?」


「大陸の事も覚えていないか。じゃあ、先にこの世界に存在する六つの大陸について簡単に説明をするよ」

 

「すまないな」


「まず、今いるここがメアラー大陸」


 腰の巾着袋からフィオは古びた世界地図を取り出して俺に見せ、その中からメアラーと書かれた大陸を指差す。地図には、海を隔てた六つの巨大な陸地の特徴的なそれぞれの形が事細かに描かれていて、世界の広さを俺は改めて認識した。ちなみに、メアラーは縦に長い楕円形をしていて他の大陸と比べると小さい方。一番大きな大陸の六分の一もないのではなかろうか。


「君が見ているここが、世界一の規模を誇るダイダル大陸。全土を一つの独裁国家が支配していて危険も多いところだけど、行くつもりだよ」


「そうか。あまり俺は気が進まないな」


「できれば私も死地に出向くような真似はしたくないけど、隠れ家としては絶好の場所だからあの男がいる可能性も高いんだよ」


 そう口にするフィオの瞳の奥には、明確な殺意が見えた。仲間を実験道具にされ、自分までも人外に変えられた彼女の怒りは相当なものだ。体に魔物を植えつけた挙句、記憶までもを奪ったデュランダルを俺もかなり恨んでいるが、彼女の底知れぬ憎悪には及ばないだろう。


 それからフィオは六つの大陸を、大きなものから順に、ダイダル、ロイ、アメジア、エイギリカ、メアラー、シュウリンと、指で差し示しながら地図で教えてくれた。


「話を戻すけど、メアラーシティは大陸中の情報が集まる場所なんだ。暫くの間は“ギルド”で稼ぎながらそこに滞在して情報を集めようと思ってる」


 聞き慣れない単語に俺はまた首を傾げた。


「ギルド?」


「そう。大規模な街に一つは設けられている旅人向けの施設だよ。ギルドの掲示板に記載された依頼を請け負って仕事ができるんだ。便利屋をイメージしてもらったら分かるかな。大体の旅人や冒険家は、その依頼をこなして旅の資金を得ているんだよ」


「なるほどな」


 確かに、そういった施設がなければ、旅を続けるのはよっぽどの金持ちでなければできない筈だ。旅人達の資金源はどこから来るのかと思っていたが、そういう事だったのか。持っていた金が底を尽きかけていた俺にとっては朗報だった。


「主にどういった仕事があるんだ?」


「街によって仕事は変わるけど、例えば、畑を荒らす獣退治。あとは街の悪党を捕まえて警察に送り届けたりかな。主に街の平和に貢献する仕事が多い気がする」


「街の治安維持が目的なら悪い気もしないな」


「そうだね。でも、報酬が高い依頼ほど、危険度は増す。自分の身の丈に合った仕事を選ぶのがベストだよ」


留意りゅういした」


「とはいっても、向こうに辿り着くまでに丸一日はかかるだろうけど」


「なかなかの距離だな。その都ってのは」


「大陸の北端にあるからね。都の近くには小さな港町があるし、都にある高台からは確か綺麗な海も見える筈だよ。昔に一度だけ前の仲間達と立ち寄った事があるんだけど、その光景だけははっきりと覚えてる」


「道のりは大変そうだが、疲れきった後に見る絶景は目の保養になりそうだ」


「うん。海と近いことで他の大陸との貿易も盛んだから、珍しいものもたくさん見られると思うよ」


「それは、楽しみだな」


 北の都には一体どんなものがあるのだろう。メアラーシティへの期待に胸を躍らせていた俺は、前方から迫る危険に直前まで気付かなかった。フィオが「ジン」と叫んで、ようやく俺はこちらに突進して来る猪の群れに気付いた。おおよそ二十は下らない大群、当たれば星の彼方まで飛ばされてしまいそうだ。


 俺とフィオは猪達の軌道から外れるように全力で走り、ぎりぎりのところでかわすことに成功した。あと一歩でも反応が遅れていれば無事では済まなかっただろう。猪の群れは俺達には見向きもせずに遠くへと走り去っていった。


「なんだったんだ、今の」


「彼らは北から来たようだね。様子が変だったし北の都で何かあったのかもしれない。先を急ごう」


「ああ」


 旅に危険は付き物だが、こう、何度も危機に晒されると生きた心地がしない。神様は、どうやら北の都に観光気分で行かせてはくれないようだ。得体の知れぬ何かが少しずつ近付いて来ているような不穏さを感じながら、俺は今一度気を引き締めなおした。いつかきっと失った記憶を取り戻す、そう言って俺は目の前を歩く彼女についてきたのだから、先を嘆いてはいられない。

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