プロローグ-過去-
人狼の住まう街、リズニバル。その街では、8年前の「異変」以来、人狼という生き物が大量発生していた。彼らは半分人で有りながら、人間を食らう。そんな生き物がいるこの街の、とある洋風の建物の上で····青年はただただ走っていた。
その走りは別に何かを追いかけているって訳ではない。かと言って、なんの意味もなく走っている訳ではない。「何か」に追いかけられているからだ。その姿に恐怖しながら···
金色に輝く目に、狼のような牙。立派に立った犬耳、人間にしては生えすぎた灰色の体毛。その姿は人であっても決して人間ではない、狼であってもオオカミではない存在····姿を見た者は誰しも恐怖する、「人狼」だ。
その見てはいけない姿を見てしまった青年はただ恐怖と絶望の感情を抱きながら逃げていた。そのまま逃げ切ろうとした····が、相手は人狼。オオカミのような素早い足で、青年にどんどん近づいてくる。青年が一歩踏み出す度に、人狼のスピードが速くなる。そして、ついに壁に追い詰められたのだ。
「頼む!見逃してくれぇっ!!!」
その人狼は即答する。
「嫌だ」
「どうしてだ!!どうしてお前達はこういう事をする!!?」
「"どうして?"人間を殺す事に理由なんていらねぇだろ····」
そしてその人狼は少しにやけてこう言った。
「まあ····それが人狼だから·····かな。」
終わった···そうとしか言いようがない青年の顔に、人狼は興奮して、食欲が増したのか、今にも地面に水溜まりができそうな量のよだれを垂らす。
「さあ、そろそろ食事の時間だ。大人しく喰われてくれよ···ククク。」
「うっ····うぁぁぁぁぁぁあああ!!!!!」
グシャ···!!!
そのグロテスクな音とともに周囲に多き血が飛び散る。噛まれただけでは飛ばないであろう血渋きが飛んだ。
青年は喰われた····はずだった。
「····え?」
青年は生きていた。しかも、さっきまで目の前にいたはずの人狼がいない···んじゃなくて、正確には、人狼の頭が無くなっている。
「やあ。君、ケガはない?」
目の前には紋章のはいった鎧を着ている、力強そうな中年の男性がいた。青年はその紋章を確認すると、ホッとしたように倒れこんだ。
「おっと····あんまり無理しないでね。」
彼は対人狼調査団という唯一人狼に対抗できる組織の中の一人だ。鎧の胸の方にはいった紋章を確認すれば分かる。
あの紋章は、フクロウと言われていて、名前の通りフクロウをイメージしているらしい。
「ワタシは対人狼調査団に所属しているベル・ソウルと言う者だ。君、名前は?」
「おっ···俺は····カミル・アドバルスと申します······」
「そうか。では、ワタシが家まで送り届けよう。」
「あっ······はい。」
カミルはそのまま家に送り届けてもらった。自分のような一般市民を救う、ベルを勇敢な姿をカミルは目を輝かせて見ていた。
とりあえずプロローグだけ投稿しました。評価が良かったら一週間後くらいに一話投稿しようと思います。