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1節
ビデオを見る前、木村は発端を反芻していた。
2014年、木村たちはまだ高校二年生で、一学期終業式の少し前。昼休み、昼食を食べ終えて夏休みの課題に目を通しているときだった。
一人の少女が目の前にやってきた。
少女の名は長野若菜。小さい身体で、いつも元気で優しい、木村はそんな印象を持っていた。
長野は木村に目を合わせる。あまりの突然のことに、木村は目を背けた。
「えっと、あのね」
微妙な空気を彼女の言葉が紡ぐ。
「夏休み、空いてる?」
長野は少し躊躇しながらも尋ねた。
「えっと、いつ頃?」
「8月はじめくらい」
「うーん、まあ多分大丈夫かなあ。でも、突然どうして?」
「あのね、みんなでお泊まり会みたいなのできたらなって」
「あー、そういうことか」
木村はそう云って、
「俺は行くよ、どうせ暇だし」
と安請け合いをした。
「わかった! ありがとう」
とだけ云って、長野は木村のもとを離れた。
すると、木村の肩を叩く男が一人いた。