プロローグ 5
南へと車を走らせていた。雨は止んでおらず、ワイパーの動く手は止まる兆しを見せなかった。
国道をある程度進み、左折をすると和かな田園風景は広がる。雨の日にはなんだか頼りなかった。
二車線に満たない道路で、離合に一苦労だった。自転車で通っていたあの快適さに戻りたくもなった。
例の場所には既に何台かの車が停まっていた。
「おー、ようこそ。久しぶり」
そう云って男は駐車場へと案内した。車を停めて、例の場所--ある友人宅--の玄関へと歩いた。
「もう、みんな来てるから、見ようぜ」
男は木村の方を一度も見ていなかった。約束の時間までまだ二時間以上あると云うのに暇なやつだ、と木村は男を見て考えていた。家の中に入り、案内された部屋に入る。
大きい家と云う印象通り、部屋も大きい。木村の住むアパートの2倍はありそうな部屋に旧友たちが集っていた。
口々に再会の挨拶を云う中、男が大きく手を叩き場をしきる。
「久しぶりに木村が戻ってきたから、ようやくビデオを見直せる。改めてあのときを思いだそうじゃないか」
そう云って、再生ボタンを押す。
画面が少しずつ明るくなっていった。
あの、2014年の出来事が掘り起こされようとしていた。