プロローグ 3
足早に改札口を抜けると、あの日と変わらない街並みが、雨の中ぼんやりと浮かんでいた。
木村は雨を避けるようにしてバス停へと向かう。
次のバスまでは、まだ20分近くあった。
待ち時間の傍ら、携帯電話を手に取った。
ディスプレイはメッセージの受信を表示していた。送り主の名を見て、木村は空を仰いだ。
「お盆、今度の土日からだよね? みんなで例のビデオを見たいと思っています。着いたら連絡ください」
ざっとこんな内容であった。
木村はディスプレイから目を離す。一台の気道車が駅から滑り出しているところだった。
再び携帯電話に目を落とし、電話帳を表示させた。
そして、一つ電話をかける。
2コールもしないうちに相手は出てくれた。
『木村?』
「おう。久しぶりだな」
『今どこいる?』
「もう久留米だよ」
『早く連絡しろよ!』
「すまんすまん。今日空いてるかな」
『ああ、多分みんな空いてるよ』
「じゃあ、今日見よう」
『わかった。決定。じゃあ、3時ごろ例の場所で』
「了解」
『変更したら追って連絡する』
電話を切ると、バスは既に停留所へ止まるところだった。
木村はバスへと駆け込んだ。
雨はまだ止みそうになかった。