工房衆 って感じ(1)
2015・5/25 改定
ゲーム内2日目
起きてすぐに宿を出る。皆、同じ時間に宿に入ったためにレイド工房衆は、数名をのぞき、集まって工房に向かう。
仕事は今のところローテーションで回るようになっているため、本来なら買占め班であるのだが皆に謝り、しばしログアウトをする事を告げる。
家族にこの土日を殆どログインするために説明するためだ。と告げると他のメンバーも気づいたみたいで一人暮らし組を除き、任意で身体は工房のままログアウトする。
リアルに戻るがまだ3時間も経っていない、逆浦島太郎状態である。急いでリビングに向かい、まだ起きてBSで通販番組を見ている女房殿を発見。
『急にごめん、この土日は別段予定無かったよね?悪いんだけどアプリ内でちょっとイベントが起きて、土日のほとんどアプリ内で過ごしたいんだけどいいかな?買い物とかあったら車出すのはするから』
とお願いしてみた。こう見えても俺たち夫婦はラブラブだ。ただ金関係に厳しいだけで…だから土日に一緒にどっかに行かないってのは、今まであまりなかったんだ。
黙って明日の朝までほっておいたら、下手したらギアを取り上げられてもおかしくないからな。
私もやりたかった。という女房殿を宥めつつ交渉をするが、日曜日の夜9時で 交代して、日曜の夜は女房殿に使わせるって所でお互い妥協した。
ただし明日は1回、業務用スーパーに連れて行けという条件も含まれてだ。
こういう時は独身の一人暮らしは羨ましいが、朝昼晩メシはチンすれば食べれるように準備しておいてくれるという、ありがたいお言葉もいただけた。
『用があるときは携帯に電話してね』
とお願いをしてアプリ内に戻る。まだ女房殿は不満げであるが、この調子では爆発はするまい。夫婦になって長いので、女房殿の地雷の爆発起点位は分かっているつもりだ。
『おまたせ遅くなってすまない、今のところ途中ログアウトで用事が一つと、さらに悪いがラスト1日位にログインできなくなった。それ以外は食事・トイレ・風呂は最小限の時間で確保できた』
と工房衆メンバーに報告する。メンバーからは「仕事の夜勤か?」とか心配する声もあったが、正直に家族とギアが共同なので、リアルで日曜の夜9時位から交代を条件に他の時間は許してもらった事を告げ、買占め班の仕事に向かう様に指示を受ける。なにやら買占めを他のグループでもやっているらしい。
ちなみに、作業のローテーションに親方さん’Sは含まれていない。二人にはいい製品を作ってもらうために 研究班さらに二人のみ先に製品候補作成担当である。同じ事を続けてはいけないかもしれないが、リアルで経験者はイニシアチブがあるので、休憩は自由で「使えそうな武器を作ってください」とお願いしたのだ。
自販街に向かいメンバーと交代しながら買占めを続ける。確かに他に買っているPCもいるみたいだ、中には”裁縫場”で見たマダム達も混ざっている。
加工は出来るとのWIKIの発表後、だんだんと価格が上がって、今では3000YANと三倍になってるのも、昨日に比べて売りに出されてる数が少ないのも微妙に痛い。
基本武器を買い占めを続ける、しかしグローブが少ない。今現在”工房衆”が所有している数は、13組と群を抜いて少ない。皮は緩衝材としても使えそうなので、最悪ギルドで買わざるをえないかもしれない。
時間になったので、他のメンバーと交代で研究班に回ることになった。
今まで分かった事は、作業道具で付いてくる永久使用アイテムが、
鍛冶は、初級で”砥石”・中級で”焼き入れ用オイル”焼き入れ用オイルとは焼きを入れる際、水でなくこのオイルを冷却に使うといいらしい。
上級は無し(これは受付のオッチャンに聞いて教えてもらっが、どの道具も上級には永久使用アイテムは付いてなく、制作スピードや作品の評価が上がりやすくなるらしい)
木工は、初級で鋲を含む”釘”・中級で”羽”だった。これは矢を作れということなのだろうか?
石工は、初級で”紙やすり”・中級で”磨き粉”だった。素材としては使えそうになかったが、仕上げで使えそうだという意見が多かった。
裁縫は、初級で”糸”・中級でボタン等の”留め具”ベルトに使ってる留め具もあった。何かに使えそうだな。
皮細工は、初級で”なめし剤”・中級で”にかわ”だった。なんでも”にかわ”は皮を固めるだけでなく、木を接ぐのにも接着剤の効果もあるらしく早速ゲンさんは使用していた。
調理道具は聞いた所、初級が”塩コショウ”・中級も調味料で”味○素”らしい。当然作業には使えそうになかった。
ガラス細工と、ねんど細工は道具自体が無く、竈とかを使う際に別途使用料がかかるみたいだ。
薬学は、初級で”薬瓶”・中級で”調合皿”とのことだ。薬瓶はそのまんまだが、調合皿は何に使うのかと作業場の受付のおばちゃんに聞いた所、ギルドの依頼にもあったベルファの実を使ってアイテムや体の色を任意で変えれるカラーエディットなるものができるという。
ちなみに、ギルドの依頼にあったもう一つ”ルーハの実”も混ぜると、髪を伸ばせて髪型も変えれるらしい。なんでギルドで嗜好品と言われていたのか首をかしげていると、
おばちゃんが笑いながら「実はGMは、禿げててねー髪が生えてくるくるかと買い占めてるのさ」と教えてくれた。それでも変化しないというのでPC専用かと思う。初級の薬瓶だが期待して鑑定するが、【薬瓶】とでるだけで、基本という表記は無かったので普通の薬瓶なのだろう。
そして消滅する基本素材は物にもよるが、一定以上の小ささ、大体握りこぶしの大きさ前後になると消えてしまう。ただし、大きくても縦・横・奥行のどれかが約2cm以下になると消滅してしまうようだ
それからは様々な武器を作ってはレシピを作り、そして分解という作業を繰り返し、今日の作業は終わった。
夜、また宿屋の一階の酒場で、情報交換と称しながらの飲み会で、
「ウチな、明日はユリと一緒に調理を覚えて食事番をやろうと思うんやが、ええかな?」
とラナさんが突然言い出した。不味い携帯食ばっかりだと確かに嫌になってきたところだ。それにゲームの中でも若い女の子の手料理は嬉しいものがある。
「ウチな一人暮らしで自炊してるんやけど、料理にはちょっと自信あるねん。ここのマスターには悪いけど、もっと美味いもん作れると思うんよ」
と自信ありげである。男衆は反対する理由もない、楽しみにしながら睡眠についた。
3日目
工房の共同作業用に広げた個室の一部が、調理場になった。調理道具に魔力を使い温める携帯コンロもあるのだが、炉の熱を使いながらの料理みたいだ。
紅二点と若干名、調理道具を買い料理をしている。
これも昨日分かった事なのだが作業を続けていると、普段の行動よりも空腹枯渇メーターの減りは早いみたいなのだからありがたい話だ。おそらく戦闘をしても早くメーターが減るのだろうな。
俺も、木工道具・鍛冶道具・皮細工道具の3種類の道具を買い、中級にランクアップさせていたので、開発を続けている。
『ふー、休憩休憩っと』
作業を休み、一服しているが、火を着けるのに毎回しんどい思いをするのは、どうにかならないものだろうか?
普通の木を細長く加工して、炉から火を取るのもいいが正直材料がもったいない。基本の材木は火を着けようにも破壊扱いになるらしく、素材でも火がつかない。
ふむ………と考えて、しなる木を鉛筆型に加工し、先の部分を茶筅みたいに、筆状に加工してみた。このまんま火を着けようにも火は着かない。
鍛冶道具の永久使用アイテム、焼き入れ用オイルの瓶に先を付けてみる……毛細管現象で油が吸い上がっている。いくら焼き入れ用とはいえ着火点が高いだけで、オイルは油だ、火は着くのではないか?
炉にかざして少しあぶってみる………おぉ、火が付いた♪
早速2本目のタバコに火を着け、吸いながらこのまんま消しても炉が無いと意味ないんだよな。
と考え、今のクエストを受けているので個室内でもアイテムボックスが使えるみたいなので、入れてみるが問題なく入るみたいだ。それも燃えたままでだ。
【【ピコーン】只今、”工房”で”魔晶5個”の発見がありました】
おっデカイ発見になった。続いてこんなインフォメーションが流れた。
【ライターが発見されましたが公表しますか?(公表する場合:魔晶5個・公表しない場合:魔晶1個)
公表する場合、現在所持している全PCの火打石を任意でライターと変更になります】
と出てきた。皆に相談したところ、魔晶を取るとのことだったので5個を選択した。
選択した後で、スキル枠の関係もあるから自分たちで売ったほうが、儲かったかもと思い至ったが後の祭りである。
そんなこんなもあったが、三日目の作業も無事終わり。
宿屋で恒例化しだした、晩飯兼情報交換タイムである。なぜ半端な味の店で?という意見もありそうだが、ラナさん達が作った料理も味がぼやけていて、宿屋の1階の居酒屋のほうがマシだったのだ。
それでも携帯食料よりかは美味いのは確かで、食材も安いらしく同じ100YAN前後で1食が作れるので、同じ出費なら作ったほうがいい……という出来だった。
「すまんなー、こんなはずでは無かったんやけど」
と、ラナさんは申し訳なさそうだったが、スキルが低いし仕方がないと思う。
情報交換も終わりかな、という頃に
「スミマセーン 少しよろしいでしょうか?」
と見知らぬPCから声をかけられた。
『間に合ってます』
と答え、情報交換を続けようとすると、
「やっぱり………私と会った事ないですか?」
と言い出した。俺にはこの世界では工房衆しか、まともに会っていない。リアルでも緑の髪の知り合いなんかいない………ん?
『も、もしかしてキャンペーンガールのねーちゃんか?』
「はい、最初は雰囲気が似てるけど、若すぎるし違うかと思ったのですが、耳のホクロが気になって声を掛けたんですぅ。
声が一緒だったんでそうなのかなと思って…アナザーワールドを選んでいたんですねぇ。知らなかったとはいえ、アプリの説明ができなかったことを気にしていたんですよぉ」
とのこと”工房衆”に断りを入れ、レイドチャットから外れキャンガの娘としばし話をする。身バレは嫌だが1回飲んだだけの人間だ、そこまで気にすることはあるまい。
話をするが、この娘は”ルリ”さん、見た感じ歳はいじってないな24歳位、顔は小顔に少しいじった程度だな。
ゲームを始め冒険者登録し、今まで”作業場”で、薬学と調理ばかりやっていたそうだ。
最初は薬学で治療薬を作っていたそうだが、質がいいのを作ろうとなると多量の薬草を煎じる必要があるらしく、コストが高くつくらしい。
それならば自分で薬草を採集すればいいじゃないか。とフィールドに出たが、生産をしようとキャラクターメイキングで、器用さに極振りしたせいで、攻撃は当たりやすかったが、ダメージがあまり与えれなかったらしく、スライム相手にも苦戦したらしい。死に戻りこそしなかったが命からがら街中に帰ったらしい。
それならば料理だ、と頑張ってみて納得できるものが出来て売り出してみたら。
先行PCが半端な料理を売り出して、”このアプリは料理の香りはいいが、味はイマイチ再現できていない。”とほとんどのプレイヤーが思ったらしく、売れなく途方にくれていいたという。
ヤケ酒だ、とこの居酒屋に来て一品を食ったが、自分の作った料理の方が断然ましだということで、缶ビールを売ってもらい(ここは持ち帰りもOKなのだ)どっかで、空しくても自分の作った料理でヤケ酒を飲もうとしていた所らしい。
なかなか不憫なものだ……っと待てよ。ここより美味い料理が作れるのか?
ラナさん達が、味がぼやけた物しか作れなかったが、試行錯誤しながら頑張ってたのを俺は知っている。
NPC店でも、ぼやけた味か、ぱさぱさの不味い物しか売ってるのを見たことが無い。俺たちもバカではない、またここで食事をしているのかというと比較的マシな味だったからだ。
基本、工房に籠りっぱなしでPCからは料理を買った事はなかったが……
料理の味が微妙なのは、そういうシステムかと俺も考えてた。
考えてちょっと待っててくれ。と断りをいれレイドチャットに割って入り工房衆に話しかけた。
『突然すまん。あのPC”ルリ”さんというらしいが、以前リアルで1回合ったことがある人みたいなのだが、このレイドに入れることを考えてもらえないか?』
「今更増やしてどうするんだよ!お前の知り合いかもしれないけど悪いが 今、人を増やすウマミはないぞ」
という至極真っ当な意見が出た。
『あの娘、今ここにヤケ酒飲みに来たらしいが、自分の作った料理の方が断然美味いからって一品だけ食って、どっかで自分の料理で飲む気らしい。
本当に美味いなら仲間に入れる事を考えるに値すると思うのだが?
それに販売するんだろ?接客なら男より女性のほうがいいんじゃないか?この娘さんはリアルで、なんと白樺屋を拠点にVRギアを20個を一月経たずに売ったセールスレディだぞ』
と告げると、皆考えて、本当に美味いなら参加さすのもアリかもしれないということになった。ルリさんに『料理は売ってもらうことはできるか?』と聞くと、ここは店の迷惑になるから外の広場ならということで、缶ビールを買い込み、勘定を済ませて広場に向かう。
ルリさんに広場で料理を作ってもらい、購入して食してみる。
クレープみたいな生地に、レタスとスライスされたから揚げが、くるまれている、ブリトーっていうのかなこれ? 価格は300YANか、ちょっと高いなと思いつつ、ガブっとかじりつく。
「「「「う~ま~いぞ~!」」」」
工房衆の声がハモった……は、どうでもいいんだが、確かに美味いっていうか普通の味なのだ、ぼやけた味ではない。普通に美味い、中身のちょっと濃い味付けのから揚げであるが、レタスがそれをクドくしていない。片手で持ちやすくビールに合う、鑑定するのを忘れて食べきってしまったのでもう1つ購入して鑑定すると【から揚げブリトー:評価5】となっていた。
なぜ、ぼやけた味じゃないのか?と聞くが「企業秘密です」と教えてくれなかった。
ここで拒否していたやつが「是非仲間に引き込め、彼女の料理は戦力だ」と色めき立っっている。
ルリさんに『このことは他言しないでくれ』と前置きし、俺たちのレイドクエストの話をすると「参加費用の3万はきついですが、他の生産も試したかったんで是非」というお言葉をいただき、最後のメンバーが揃った。
強制睡眠の時間が近かったので、今日はこの辺で詳しい話は明日ということで宿屋に戻り強制睡眠に入った。
連載は二日おきに予定していましたが、仕事の都合上ランダムになりそうです^^;
出来次第UPしますので、読者の皆様できましたら今後ともお付き合いください
作者の頭の中では、まだまだ先にセイは進んでおりますが・・・文章力がないものでそこまで書くのが進みません。出来る限り早めにUPしていきます。
感想 意見 評価いただけると 作者が踊りだします
えっ?見えないですって?
まぁ 作者がモニターの前で踊るだけですから^^;