きれいなそら
もうどれほどの間ここにいるのか。
少なくともそれを忘れてしまうくらい長い間、そうだ。
煩わしい自分の他には、暗闇の黒しかない。
ここに入ったのはどうしてだったのかも覚えていない。
私はずっと何かを考えることで記憶を上書きしてきた。今は焼き魚をどうして効率的に食べるかを考えていた。一番初めに骨をすべて除去してしまった後で全部食べる
のと骨を取りながら食べる以外の第三の方法を模索していた。
ちょっとした気の迷いだったのか、それともようやくこの時間に飽いたのか、自分でも分からないし、敢えて明らかにする気もない。
だが、私は確かに自分の意志で、ずっと扉に置いていた両手に力を込めて、外に出たのだ。
まず、溜息が出た。
目の前に広がったのは、圧倒的な空の色。
青という色はこんなにも澄んでいたか。群青というのはこんなにも優しい色だったか。本当に見たことがないのか忘れてしまったのかは分からないが、初めて見る『空色』だった。
体に溜まっていた重苦しいものを吐き出した息の代わりに肺に流れて来る空気は、心地良かった。
「いいな」
素晴らしさを表そうとして語彙が見つからない場合の多くの例に漏れず、意味のない感嘆が知らず零れ落ちていた。
弥塚泉からのお題。
『空』
今朝は雲一つない綺麗な空でした。




