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価値の天秤
車椅子の彼女はいつも植物庭園にいて、狂気にあてられて周りで狂い咲く花々を冷めた目で見つめている。
聞けば精神崩壊の末にこの病院に来たということだ。建前はそういうことになっている。
「僕は聞きたいんだ。君のその足の怪我は、嘘じゃない?」
微動だにしないその足が体を支えられることは、昨夜偶然目にした光景が何よりの証拠だ。
「あのねえ、そもそも私からすれば何もかもが滑稽なことなの」
呆れたような声を出して、立ち上がった。
「あべこべなの。分かる?」
意外に背が高かった彼女が見下ろす瞳の温度に、僕は心臓が凍らされたように動けなかった。
「あなたがた世界が狂ってて、もちろん私は正常。こういうとき、どうしたらいいと思う」
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「車椅子/周りで狂い咲く花々/狂気/精神崩壊/嘘じゃない」




