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責任と傷
数分前、俺は憂鬱な気分を引きずって、フォルトの鈴を鳴らした。
向かい合ってもコーヒーを啜るだけの俺に、彼女は不意に口元を上げる。
「美味しい?」
「……ん」
昔より不味くなったようだ。
この喫茶店は加奈子がバイトしていた店でよく使っていたが、最近はめっきり行かなくなった。俺と加奈子の交際は店名の如く失敗したという訳だ。思えば初めてここに来た時から縁起の悪い名前だと思っていた。
こうしていても、あの頃のことはガラスの破片のようにしか浮かんではこない。今の俺にとっては儚い思い出に過ぎないということだ。
「私は、あなたには聞きたいことがあると思っていたのだけど」
「ああ、もちろんある。こいつは誤りじゃ済まないぜ?」
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「喫茶店で/ガラスの破片/美味しい?/儚い思い出/嘘」




