短編9 異世界からぼくの娘がやってきて偉業を成し遂げさせようとする
似た話があったら教えてください。自分で読みたい話を作っているつもりです。
ただ、知らないだけで、似た話があるなら知りたいです。
今日はいつにも増して眠いなと思いながら、ぼくはうとうとと授業を聞いていた。
バン。と大きな音がした方を向くと、前のドアを開けて赤髪の少女が教室に飛び込んできた。
キョロキョロしている。
「おい。授業中だぞ。教室に戻りなさい。」
さすがに先生が注意しているけど、完全に無視みたいだ。
でも、先生その子きっと生徒じゃないですよ。制服じゃないし。誰かの姉とか妹とかだと思う。
おっと、ぼくの方に来たぞ。
「アナタがわたしのパパね?」
「オオォ」とかなんか周りが煩いぞ。
「お前子供とかいたんか。誰に産ませたんよ。」
隣の席の奴がそんな事聞いてきたし、女子達の目が痛いぞ。先生までぼくを睨んでる。
って、あるわけないじゃん。この子ぼくとそんなに歳違わなくないか?
いや、先生達もこの子がぼくの子供だなんて思ってないみたいだな。違う意味のパパだと思っているんだろう。
「ええっと、人違いじゃないかな?」
「アナタ、髪赤いじゃない。」
ええ、確かに赤いです。でも染めてるだけです。地毛はかなり派手に見える茶髪で、地毛なのに生徒指導に染めろって言われたから、反抗して赤くしました。
だからやっぱり人違いです。
「時間がないのよ。かっこいい顔してるし、髪も赤いしアナタがパパよ。さあ、来なさい。」
無理矢理肩に担がれた、って力凄いな。完全に運ばれているぞ。
「誰か助けて!」
はい、誰も助けてくれません。
彼女はぼくを担いだまま教室から飛び出したけど、先生はちょっと見ただけだ。
なんか「じゃ、授業再会するぞ。」とか聞こえた。無かった事にするつもりらしい。
やっぱり、自力でなんとかするしか無いんだな。とりあえず彼女と交渉するか。
「ちょ、ちょっと何処いくっ、痛っ」
「パパ。黙ってて、舌噛むわよ。」
遅いよ、今噛んだよ。
ぼくこれでも身長170後半だし、体重だって60越えてたはずだけど、そんなぼくを肩に担いだままでかなり速い速度で走ってるよ、この子。
「さあ、行くわよ、パパ。しっかり口閉じててね。」
行くってどこに?
無理矢理彼女の進行方向見たら、なんか黒いぐるぐるしている穴が開いてるんですが、何ですかね。
徐々に小さくなっているみたいだけど。
ぼくを担いだまま、彼女はその穴に飛び込んだ。
やぱりか、って落ちてるよ。
ぼくはさすがに目を閉じた。気絶しなかった自分を褒めたい。
すっごい長い時間が経ったと思ったら、地面に降ろされた。
「パパ。ついたわよ。」
嫌な予感しかしなかったけど、ゆっくり目を開けたよ。
なんか石でできた遺跡の中らしいけど、天井が崩れていて空が見える。
夜らしくって、暗い空は満天の星空だ。すっごい沢山の星が大きく見える。
ぼくの住んでた所は、都会だから、星なんて電気の明りでほとんど見えなかったんだよね。
さっきまで授業中だったんだから夜とかありえないし、こんなに星見えるわけないけどね。
「ここどこ?」
「うーんと、パパの世界で言う異世界ってやつよ。」
異世界か……そう聞くと意外と冷静になっちゃうな。
別に異世界とか信じているわけではないが、彼女がおかしい人だったりすると困る。
話しは合せるに限るだろう。
「戻れるのか?」
「……戻す気は無いわよ。」
それって戻る方法あるって言ってるのと同じだよね?
戻れる設定なのは良い事だ。
「何が目的なんだ。」
「これ読んで。」
本渡されたけど、なんかその本、今虚空から突然現われたような。
開いて読んでみたが、日本語じゃないがちゃんと読めた。
子供向けの偉人伝らしいが、基本は未知の土地を開拓する話しみたいだ。
「パパにはその本の内容を実践してもらいます。」
無理っぽいんだけど。なんか野獣?とか結構倒してるっぽいぞ。
「無理だよ。これは。」
そんな悲しそうな顔するなよ。
「理由を聞いても良いかな?」
「……。わたしのパパとママが死んじゃったの、それでね……」
この少女の説明は結構下手だったので要約すると、どうやら大好きだったパパとママが2年程前に事故で死んでしまったらしい。
彼女はその事故を起きなかった事にするために、いろいろ捜した所、この遺跡に誰も使った事がない過去に戻る魔法道具がある事がわかったと。
魔法があるんだな。異世界っぽくなって来た。
ただ、この遺跡の魔法道具簡単には使えない物だった。
過去に戻るのに必ず異世界を経由しないと無理、おまけに経由する異世界に縁のある物を持っている必要があるという制約の強い魔法道具だったのだと。
そうだよな、こんな少女がわかる事、他の大人が調べられない筈がない。単に誰も使えなかったってだけだ。
どうしてもなんとかしたい彼女が、調べている途中でどうやらパパが異世界から来た人だとわかったらしい。
「これで飛んだの」と言われて渡されたのは、完全に壊れてはいるが腕時計だった。
地味に見えるけど、限定版で結構値段の高いブランド物だ。
パパの持ち物だったらしい。
どうやら持ち主の近くに一度飛び、それから過去に戻れるとわかった彼女は、パパを連れて一緒に過去を改変する事に決めたわけだ。
パパの容姿は綺麗な赤髪ってことらしいので、ぼくが選ばれたと。
でもね、ぼくのは染めだからやっぱり別人です。それにその時計見た事あるよ。ぼくの隣の席の奴がつけてた。あいつ髪、黒く染めてたんだな。
顔は普通だと思ってたけど、この子が気付かないって事は、もしかしてそれもなんか工夫してたのかな?
まあ、今は言わない方が良さそうだ。
「それでなんでこの本の内容を実践するの?事故を避ければ良いだけなんじゃないの?」
「パパは凄い人だったの!成功しなかったのは、たまたまよ。過去にいけるんだもの!なんでもできるわ!」
要約すると、ついでに尊敬するパパに偉い人になって欲しいらしい。
「だからね、ここ、わたしの生れる10年前よ。飛んだ日からだと25年前。その本の人が活躍し始めるちょと前なの。」
どうやらこの少女15歳らしい。ぼくの2歳年下だな。
でも、少女の言う通りにするって事は、この本の人が実在の人物だとすると、その人に成り代るとか、邪魔する事になるような。
そもそも、ぼくにこの人と同じ事ができる気がしないんだけどね。
「パパ。もちろんママと出会って、わたしを産んで貰うわよ。ママもこの時代にいるはずだもの。手伝うからね。」
なんか空間から剣を出してニヤニヤ笑ってるんですけど、かなりこの子危険。
とりあえず、ぼくはしばらくこの子に協力したふりをして、元の世界に戻る方法を捜そう。
ただ、髪が染めだと気づかれたら、殺されるかもしれないって不安はあるな。
先行き不安だけど、どうにかなるだろうか。
(完:続きはありません)