短編8 これでもハーフエルフです
残酷な描写があります。嫌な人は飛ばしてください。
俺は今、鉄篭の中にいて、キャリーのような物に載せられて運ばれています。
運んでいるのは、猫耳の獣人女性。
白というか、光の加減で銀色にも見える髪で、ふさふさと毛が生えたやや大きな耳が本来人間の耳がある横から生えてる。
頭の上じゃないんだと思ったけど、彼女は尻尾が無いらしく、顔とかも含めて、耳が普通ならその姿はほとんど人間みたいだ。
胸もそのやや小振りの膨らみからして二つのようで、複乳とかではないらしい。
ただ、キャリーを押している手の甲とかに白銀の毛が生えているので、脱いだら毛深いのかもしれないな。
俺は彼女の裸体を想像して鼻血が出そうだと思ったが、今の体で鼻血が出るのかは良くわからなかった。
やっぱりこれって、出落ちすぎると俺は思うね。こんなんじゃ、すぐネタ切れだよ。
とか思いながら、これまでの事を思い返していた。
そもそも俺はこっちの世界に産まれてから1週間と経ってないはずだ。
産まれたのは洞窟の中だった。
苦しいと思ったら、産まれていたらしくて、ちょっと動いたら目の前に女性のあそこがあって、驚いたね。初めて実物見たもん。
えーそうです、俺は清い体でしたよ。一応大学生だったのですけどね。悪いか。
ま、そんな事は良いとする。
その時は、俺は飲み会の途中で眠くなって寝た記憶で途切れていたから、もしかして女性とイベント発生しちゃったか?とちょっと期待しながら、女性の顔を確認したね。
そしたら、びっくりしたね。
緑色の髪で緑眼、エルフ耳のすっごい綺麗な女性なんだもの。耳に飾りが付いていたりして綺麗だ。
ただ、目が虚ろだし、口から涎がたれていて、恐かったけどね。
状況確認のために周囲を見ると、さらにびっくりだね。
なんと……触手が一杯いました。なんか赤黒い色して気持悪い奴らです。
囲まれているので逃げられなそうなので、諦めてじっとしていたけど、別に襲ってこないようです。
時々エルフ耳ちゃんの胸から乳?を吸ってるみたいだ。
エルフ耳ちゃん、快感で震えてるみたいだけど、目が虚ろで超恐い。
で、俺、自分の体が変な事気づいたんですよね。
ええ、まあ、実は結構前から気づいてたんですけど、無視してたんです。
でもね、手とか足とか動かすとすぐわかっちゃうんですよ。
俺もね、触手でした。
でも周囲の奴らと違って、綺麗な緑色でしたよ。まるでエルフ耳ちゃんの目の色みたいに澄んだ緑でした。
俺はしばらく気絶してましたね。
でもね、腹が減ってだめでした。
死にたくはないもの。
エルフ耳ちゃんの乳をいただきましたよ。ええ。
最初良くわからなかったので、周囲の奴らの様子を観察して、ちょっと訓練したら、一応口がどこかわかりましたし。
洞窟の中は昼も夜も良くわからなかったけど、触手共はエルフ耳ちゃんをちゃんと休ませてあげてるみたいです。
夜に寝せてあげてるみたいなので、エルフ耳ちゃんが寝たのをもって1日って数える事にしました。
ちなみに、それ以外のタイミングでエルフ耳ちゃんが寝たりしようとすると、無理やり起してる触手がいたので、酷い待遇です。
ただどうにかエルフ耳ちゃんを助けられないかとは考えてましたが、俺も生きるのに必死でしたね。
あまり動けないんだもん。どうしようもない。
一応これって異世界転生とかだろうな、みたいな事を思って生きました。
日が経つにつれて徐々に動けるようになって来たかな?って時に、洞窟に日の光が差したかと思ったら、4人の人間が飛び込んで来て次々と周囲の触手を剣で切りつけたんだよね。
火とかも舞ったりしてた。
その時は俺も死んだと思ったね。
でも、猫獣人ちゃんが俺だけは切るなって指示したんだよ。言葉わかった事に感動したね。
「ありがとう!」って俺、ちゃんとお礼したよ。猫獣人ちゃんだけじゃなくて皆びっくりしてたけどね。
俺以外の触手が全部片づいたあと、猫獣人ちゃんがエルフ耳ちゃんの脈とか取ったり、目の光彩を見るとか医者みたいな事してたけど、デカい男に向いて首をふってたね。
ああ、まあそうだね。早めに産まれた触手達が育って来たせいで、乳だと不足しはじめたらしくて、ちょっと酷い事になっちゃてたものね……
エルフ耳ちゃんは洞窟の奥の方にデカい男と、ローブみたいなの着たやつに連れていかれていた。
二人は結構経ってから戻ってきたけど、デカい男は辛そうな顔してた。
猫獣人ちゃんにエルフ耳ちゃんの耳についていた耳飾りみたいな物を渡していた。
おそらくエルフ耳ちゃんは安らかに眠ったのだろうって事は俺にもわかった。
俺は泣いた。といっても涙は流れないから、嗚咽だけだったがな。
だって、俺のこの世界での母親だったわけだし、本当に助けたかったんだ。
猫獣人ちゃんが俺をなぐさめてくれた。
「おい。そいつも殺した方が良いんじゃないのか?」
デカい男が俺を不信そうな目で見てた。
まあ、殺されても仕方ないかなって思ってたから、少し覚悟した。
「だめニャ。この子はハーフエルフニャ。すごく貴重なのニャ。きっと女神様の御告げにあったのはこの子の事ニャ。」
え?俺ってハーフエルフなの?それに女神様や御告げって何?
「あ、あの?俺ってハーフエルフなんですか?」
俺がしゃべると、猫獣人ちゃん以外が「やっぱり、しゃべった!」みたいな顔してる。
「そうニャ。今説明するニャ。」
説明でやっぱりここは異世界らしかった。
猫獣人ちゃんの名前はシャーニャと言って、豊穣の女神神殿の高位の巫女なんだそうだ。
巫女って言っても姿はほとんど女騎士みたいだけどね。従軍巫女ってこんな感じなのかもしれない。
彼女以外の3人も神殿の関係者らしいけど、彼女以外はまだ俺に名前を教えたくないそうだ。
シャーニャはそれに良い顔してなかったけど、俺が仕方無いよって言った。
高位の彼女は女神様の声を聞く事ができるのだそうだ。
御告げでこの場所にエルフ耳ちゃんが居る事と、奇跡の種がいる事を予言されたんだと。
で、隊を組んでエルフ耳ちゃんを助けに来たわけだ。エルフ耳ちゃんはやっぱりエルフらしい。
そんでもってエルフってのは非常に少なくて、貴重らしい。
森の幸とかに貢献するので、豊穣の女神神殿が保護しているんだと。
それが一人攫われて、結局ここに居たって事らしい。なんでここに居たのかまでは、まだ不明だそうだ。
それで俺の事だけど、シャーニャは女神様の祝福で相手の健康状態とかある程度確認できるらしい。
健康状態ってのは種族によって違うわけだ。まあ、そうだよな。当然、人間と猫は脈の速度違うしな。
その能力で、俺の体の状態とかを見て、そこからハーフエルフだって判断してるらしい。
ただ、デカい男に「確実か?」って確認された時、一瞬躊躇はしてた。
「ハーフエルフはかなり珍しいニャ。わたしも見たの初めてニャ。だけどきっとそうに違いないニャ。この子、話がわかるしニャ。」
と言っていた。
まあ、それだけだと決め手にはやっぱり欠けるよな。
俺はデカい男の提案で、鉄篭に入れられた。
篭はもともとは伝書鳩用の篭らしい。この世界では遠くからの連絡は伝書鳩を使い、重要な連絡は複数羽飛すんだと。
伝書鳩を数匹入れるための篭なので、小くはないが広くもない。もう連絡に鳩は飛ばしたから中は空だったので、俺が入れられたわけだ。
「大丈夫ニャ。わたしが必ず面倒見るから安心するニャ。」
とシャーニャに言われながら、鳩篭を運ぶためのキャリーに載せられて運ばれているというわけだ。
俺この後どうなるのかな。
(完:続きはありません)
ここまで上げて気づきましたが、筆者の書く話しはほぼ一話めで、ヒローとヒロインが出会ってますね。