SUICIDE31〜片翼天使と指切りしましょ〜
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ゆーびきりげんまん、うそついたらはりせんぼんの〜ます♪
ゆびきった♪
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「ハァ…疲れた。てか死ぬ」
俺はベットの上で、シーツと同じぐらい真っ白に燃え尽きていた。
右手一本であの超人姉妹の猛攻をガードするのはもう限界だ。
麻依子と亮佑と洋が連れて帰ってくれなかったら、確実にやられ……いや、食われてたな。
「シン…真っ白……大丈夫…?」
「あぁ、死ぬ寸前だが、いちよう生きてる」
そして、今は小夜が見舞いに来ていた。
亮佑と洋が連れてきて、ここに置いてきたのだ。
「ムリしないで…シン」
「あぁ、大丈夫だ」
小夜はベッドの左側で、ただ車椅子に座っている。
あの姉妹のようなことをしない分、俺としてはありがたい。
「俺のことは別にいいさ。それよりも、俺がいなくても大丈夫か?」
「ダメ……さみしい」
「………」
普通、『大丈夫?』って聞かれたら『大丈夫』って言わないか?
…まぁ、そこが小夜らしいんだけど。
「まぁ、彩華とかがいるだろうから、寂しくはないだろ」
「…サイとマイ…サクとレイも来る。……だけど、シンいない…それだけで…さびしい」
確かに、小夜の表情の中には、微かに寂しさが感じられた。
「……ったく、んな恥ずかしいことをやすやすと言いやがって」
俺は少し手を伸ばして、小夜の頭に手を乗せる。
小夜は猫のように、目を細めながらその手に頭を擦りつける。
「そんなこと言うより、さっさとリハビリして、立てるようになれ」
「シンいない…だからムリ」
「アホ抜かせ。お前には十分出来る」
小夜が過去にリハビリを失敗したのは、精神的に不安定だったからだというのは、すでに知っている。
そして、その問題はすでに解決した。
周囲の協力もあり、小夜の精神状態はよくなっている。
さらに、最近は表情も少し柔らかくなってきた。
そして、リハビリだって精力的に続けてるから、残り一ヵ月もあれば自力で立つことが出来るだろう。
それは本人である小夜が一番分かってるはずなんだけど…
「ヤだ……シンがいない…ダメ」
「…ったく」
俺は自分の左腕を、小夜の頭から自らの頭に持っていく。
自分自身のことなのに、なんで俺が必要なんだ?
「…理由…かんたん」
「ん?」
頭を抱えていた俺の左手に、小夜の右手が重ねられる。
そして、その顔には微笑み……小夜にしては満面の笑みが浮かんでいた。
「シン、私…助けてくれた……だけど…私、なにも返せない…。だから、私が立つとき…シンに見てほしい。…ぜんぜん足りない…けど…少しだけ、恩返ししたい」
小夜にしたら珍しく言葉を続けた。
そして、その言葉一つ一つに、感情がしっかり込められていた。
そんな気遣い不要なんだけど…
「…分かったよ。その代わり、俺が退院したらビシバシいくぞ」
「……わかった。だから…早く帰ってきて…」
そう言って小夜は右手を降ろして、小指を立てた左手を俺の前に出す。
なんとなく察した俺は、その小指に自分の左手の小指を絡める。
「約束する。俺も頑張る、お前も頑張れ」
「……うん」
…たわいもない指切り。
その指に込められた決意や思いが交わされる。
手の中で一番小さな指で、お互いの心が繋がる
小夜の純粋に温かな心に触れて、疲れた心がほんの少し癒された気がした。