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SUICIDE2〜首吊り=〜

9/7、作者の手違いを修正→『黙殺』の部分を『台所進入禁止に』に変更








生にすがる誰かが言う

「死に何の意味がある?」



生を手放す誰かが言う

「死に意味が無いからこそ、我は死を求める」








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆





首吊り自殺…



男女問わず最も多い自殺方法


首を紐状のもので吊り、頸部けいぶを圧迫することで脳が急性貧血を起こし縊死いしする。


また、首吊り時の衝撃で頸椎けいつい骨折や脊椎せきつい損傷などで即死する場合もある。


故に首吊り=窒息死ではない。





◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆








「……成る程、じゃあシンジは『生きてる意味が分からなくなった』から、死んで……フグッ……みようと……モヒモヒ……思ったわけか……ムグムグ」

「あぁ、面倒になったってこともあるんだけど…食いながら喋るな、キタねぇだろが。生前に習わなかったか?」

「ふぁかぁっふぁ(分かった)」



ただいま、俺の目の前では黒ヘルがハムスターのように頬を膨らませて食事中だ。

もちろん、作ったのは俺だ。

『変な所から来た者に、料理をさせちゃダメよ』と、他人に注意されたことがあるし、実際黒ヘルが白い鶴嘴で料理しようとした時点で台所進入禁止にしておいた。



「ふぅ〜ゴチになります。……それにしてもシンジは料理上手いなぁ。死ぬのにはもったいないぐらいだ。……ここら辺は母親譲りか」



確かに、お袋の料理は格別美味かった。

仕方なく料理をしてた俺にとっては、超えられない存在だ。



「こんなのただのオムライスだろ?」

「……チキンライスじゃなくて魚介類のピラフ、デミグラスソースじゃなくて塩味のあんかけ、上に乗せる半熟卵には魚のすり身が…これをただのオムライスと言えるお前はなんだ?」



幽霊のくせしてグルメだな。

てか、幽霊のくせして朝の第一声が『腹減ったー』だもんな。

ったく、食べたものはどこに行ってんだか…



「中華丼の予定が、卵の賞味期限がギリギリだったからそうなったんだ。…そういやお前、やけに親父とお袋のこと知ってるな?」

「ん? 色々関係してるからな。二人ともあの世でいろいろやってるぜ…最近は、『閻魔大王とその部下の鬼数千体』VS『須千屋夫妻』で核戦争ゴッコやってポツダム宣言させたっけな♪」

「ちょい待て!? あの二人まだそんなことやってんのか!? ……閻魔っていう人、ちゃんと生きてんのか?」



核戦争とかポツダムとかは全力で無視。

だけど、あの二人に『遊び』なんかやらせたら、とにかくヤバい!(とくにお袋)

あの二人にかかれば、『トランプ』さえも殺戮に近いものになる。

内容は……頼むから聞かないでくれ…



「あの世で死ぬことはないけど、鬼達は三年、閻魔は全治十年以上の絶対的重傷だったな」

「……なんていうか……ごめんなさい」



あの世に行ったら、会った人全員に謝る生活を始めよう。



「謝らなくてもイインダヨー! 俺は楽しかったし♪」



訂正、黒ヘル以外には丁重に謝ることにしよう。






→→→→→→→→→→→→→→→






「んじゃあ、そろそろ始めますかっ」


朝食の食器を片付けて、リビングに戻ると目の前には、白い鶴嘴を振り上げた黒ヘルがいた。



「なにやってんだ?」

「なーに、ちょっと見てなって……」



振り上げられた白い鶴嘴が、握られた持ち手の部分から真っ黒に染め上げられていく。



「……焔獄羅刹よ……其の力を我に与え、この場にいにしえより伝わる生を断ち斬る処刑台を築かん!!」



なっ、なんか魔術っぽい!!



「自殺屋儀式……皇狩こうしゅ!!」


そして、黒ヘルは家のフローリングに黒い鶴嘴を振り下ろした。













…………へ?


いや、フローリングに穴が開かなかったのはビックリしましたけど……

俺の目の前に現われたのは



・天井からぶらさがったロープ(一部が輪になった)

・パイプ椅子(折り畳み式)




「黒ヘル? まさかこれって……」

「自殺屋が一番使う儀式・皇狩……首吊り専用フィールドだ♪」



やっぱり……

予想通りの答えに、俺は頭を抱えた。



「……俺パスするわ」

「えっ!? なんで? 『生きるのが疲れた』人たちの一般的かつ人気NO.1の自殺方法なのに」



いや、儀式の割にパイプ椅子(一部、黄色いスポンジ出てるし)ってショボいし、それに……




「俺……首吊り出来ないんだ」

「……なんだ、その小学生が『ぼく…逆上がり出来ないんだ』って、体育の鉄棒の授業で言った暴露話みたいな言い方は」



異様にムカつく表現してくれるな、このクソ黒ヘル……



「あ゛ー! もーいい! 自殺屋になんか頼らねぇ! 自分で自殺する!! だからとっとと出て行け!!」



俺は黒ヘルに怒声をぶつける。



「あー、無理アルヨ。一回自殺屋に仕事頼む、ソレから自殺屋の仕事以外の自殺で死ぬト……」

「死ぬと……?」

「……来世が犬の糞→豚の糞→牛の糞→金魚の糞→犬の糞の輪廻繰り返……」

「安全ダイジ!! これから頼んだぞ! 俺はお前に物凄く期待してるからな!!」



死んだら糞のオンパレードの無限ループなんて…絶対無理!! 死んでもなりたくねぇ!! てか、死ぬけどなりたくねぇ!!




「んじゃ、Let’s首吊り行ってみよう♪」



しゃぁない、あんま見られたくないんだけどな…



「……あぁ……でも、見ても驚くなよ」



俺は勧められるまま、パイプ椅子(一部サビ有り)の上に立ち、ロープの輪の中に首を通す。



「んじゃ黒ヘル、この椅子を蹴ってくれ」

「オウッ、任された!! ライ○ァァアアアアキィィイイイイック!!!」



俺の行った通り、パイプ椅子を思いっきり蹴った(初代仮面ラ〇ダー風)。

椅子が吹っ飛び、足場を失った俺の体は、地球の重力に引かれ下に落下した。

しかし、俺の足は地面に着かず、首に掛かったロープが首を締め付ける。

バッタ仮面の必殺技を食らった椅子は、我が家のガラスを割って隣の家まで吹き飛んでいった。

目の前では、黒ヘルが背中を向けて見事に技を決めた余韻に浸っていた。




あ、こっち振り向いた。



「おーぃ、生きてますかぁ? って生きてるわけないか……」



さぁ、今は誰が地の文やってるでしょう?

それが安全ダイジじゃないとしたら……






「俺は生きてるってことだ」

「オワァァァァァァァアアアアアアアアアアア!?」



黒ヘルは血相を変えて叫び、一瞬で部屋の隅にぶつかった。




「なななな、なんで生きてんだ!? 首だってちゃんとロープが巻かれてるし、しっかり手足だってブラブラしてるし……ナゼ!?」



だから驚くなって言ったのに…



「…俺の体は異様に頑丈過ぎるんだ。たぶん、お袋の血筋と様々な鉄拳制裁で鍛えられたせいで。それで首吊りとかで頸椎損傷しねぇし、気道も閉まらない…前に試した時もこの状態になって、動けなくなった所をお隣さんに見られて色々大変だった」



あの時は、いろんな意味で死ぬかと思ったぜ。

この体が俺の自殺願望の原因の一つなのは言うまでもない。



「…なんていうか…ごめんなさい」

「同じように謝るな。俺の不運と、お前のボキャブラリーの少なさに泣けてくるから」



こんな異様体質と、他人と同じ謝り方しか出来ない可哀相な人(自分の事はON THE棚)を見ると悲しいじゃないか。



「じゃっ、椅子戻してくれ。耐えられるといっても、せいぜい十分程度だし、この状態でいても気分悪いしな」



ユラユラ揺れている体と視界は、正直気分も気持ちも悪くなる。

てか、酔いそう……



「分かった。俺、お隣さんに行ってくる」




「……」


ちょっとまて。

なぜ、黒ヘルがお隣さんに行く必要がある?


「………」


今までの出来事を思い出す必要があるな…



『黒ヘルが背中を向けて見事に技を決め…』



もうちょい前だ。



『生にすがる誰かが…』



冒頭部分に戻ってどうする!



『しかし、俺の足は地面に着かず、首に掛かっ…』



そう、そこら辺だ。



『バッタ仮面の必殺技を食らった椅子は、我が家のガラスを割って隣の家まで吹き飛んでいった』



…………Oh! The chair goes to the house next door!

{ワォ! その椅子は隣の家に行きました!}



………隣の家!?

ヤベェェェェェェエエエエエエエエエエエエエエ!!!!



「うぉい黒ヘル!! 早く俺を降ろせ!!」

「へ? 椅子は?」

「椅子は返ってくる!! だか、その前にこの状況をなんとかしねぇと………お前の仕事がなくなる!!」



焦ってる頭で伏線引いてやったぞ、この野郎!!



「…………なんで?」



気づけボケヘルゥゥウウウウ!!








「シ〜ン〜ジ〜! なに騒いでんの? いきなりそっちから椅子飛んでくるからビックリしたじゃない」



玄関の方から無情にも聞こえる、女性の声…



あ、俺死んだかもしれね




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