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SUICIDE27〜救済の黙示録〜

『酒樽=PTA会長』って思いながら読んでください

1/25に本文中の『四谷』の文字を『戸野』に変更いたしました。

不自然な文章になってしまったことをお詫び致します。







秘密を握られた人間ほど、弱いものはいない










―――――――――――――――







取り合えず、作戦通り突入完了っと。

さて、どーすっかな。



「な、なにザマス!? あなたは…」

「あー、ハイハイ。扉はちゃんと弁償しますから心配ないです」



最初に目についたのはにケバケバしい酒樽みたいな人……あれPTA会長だな。

その酒樽の制止を遮ってその目の前に歩んでいく。



「その腕はな、なんザマス!? そんな危険なもの早く外すザマス!!」



酒樽はヒステリックな声を上げながら、俺の左腕を指差す。

…外せと、言われましても。



「これ、俺の腕なんで簡単に外せないんですよ……」



腕を外す代わりに、右腕で肘部分の赤い十字架の中心を押す。

すると、左腕全体の外装がパッカリと開き、中のワイヤーや配線が外に露出する。

その中に、人の腕が入るようなスキマはない。



「…分かってもらえましたか?」

「………」



これは、緊急時のメンテナンス専用に後づけした機能だ。

その様子を見た酒樽は、口を金魚のようにパクパクしていた。

てか、この部屋にいる麗花以外の人は、全員が同じ顔してるし。




取り合えず、開いた外装の一つ一つを手作業で閉じる。

そして、しっかり動くことを確認した後、その腕で左足のズボンを膝が見えるまで捲り、その足を酒樽の前の机に乗せる。

その行為と鉄製の左足を見て、さっきまで驚いてた人の目が更に見開かれる。







「俺の名は須千家真慈…地獄の黙示録の正当な所有者として、この集会の決定権が一方的な物と判断。よって須千家真慈は黙示録の第二の権限を執行し、この集会での発言権を取得する。無論、そちら側に正当な拒否理由が存在する場合、そちら側はこの権限を無効とすることが可能である……ってことで、文句ある奴は手ェ上げろ」


俺は、左膝部分の髑髏の額に彫り込まれた逆五望星を指差しながら、小難しいセリフをPTAの奴らに言い放つ。



……黙示録の第二権限。

それは『戸野周辺での会合や裁判等での一方的な決定や拒絶に対して、正当な発言権を得ることが出来る』


…この世には拳で解決できないことだってある。

この権限はそんな時、拳の代わりに言葉を武器にする権限だ。



ま、使うのは今回初めてだけどな。






「……そ、そんな、ありえないザマス!! アナタのような不良生徒が戸野の権限を…」

「不良生徒とは心外だな。この髪は染めたんじゃなくて地毛だ。まぁ、信じなくてもいい……本物だとしたら反抗した場合、それなりの制裁があるけどな」

「………」



俺の言葉にこの場の空気は固まった。


何人も動けない沈黙。


それほど、この権利は驚異的なものなのだ。




「……では、黙示録の権利を許可し、須千家真慈はここでの発言権を持ちます」



その沈黙を破ったのは、生徒会長である麗花。

……そして、この作戦に必要な欠片ピースの一つ。




『…こちらY01。R01の音声確認完了…2ndシークエンスに入るよ』



洋からの連絡がイヤホンから入る。

…ここから俺の腕の見せ所だ。




「…んじゃ、まずはこれを見てください」

「…失礼し…ます」


俺の言葉の後に、破壊された出入口から麻依子が入ってくる。

その手には、体が隠れるほど積み上げられた紙の斜塔が建設されていた。

そして、酒樽の目の前の机にドスンと置く。


「ご苦労様」

「……ふぅ、何であたしが力仕事なのよ」

「まぁ、それなりに力持ちだし、他の奴らも各所に仕事があるから」

「適材適所……私は余り物なのね」

『R01、M01。世間話は後にして欲しいな』




ついつい普通に喋ったけど、ここは敵前。

洋の言葉に、俺達は話を切り上げる。



「な、なんザマスその紙は!」

「生徒712人の署名用紙だ」

「違うよ。さっき5人も署名したから717人だよ」




…第一段階、署名提出。

人の名前が権力になる方法。

その名前が多ければ多いほど力は大きくなる。




「この署名は浅尾咲耶教師の解雇に抗議するものです。生徒の九割がこの解雇を不当と認識している」

「なに言ってるザマス! この教師は学生出産なんてことをしてたザマスよ? そんな教師にウチの子を教えるなんてとんでもない!」



酒樽の言葉に、PTA達の威勢が良くなる。

…同時に、怒りが俺の沸点に近づく。

元々プッツンしやすい性分で、すぐ殴る癖は治ってない。


『…落ち着いて。手を出したらその時点でアウトだ』



洋が俺の状況を察して、的確に指示する。

分かってる…でも、今の俺は狂気を出さないようにするだけで精一杯だ。

隠した右手を握り、下唇を噛んで精一杯押さえ込む。

もし、気を抜いたら……




「…真慈」



怒りを抑えるために握り締めた拳を、暖かな何かが柔らかく包み込む。

それは、俺の中で暴れる狂気を動きを止め、俺を落ち着かせてくれる。


後ろを振り返ると、そこには小さいけれどとても強い幼馴染み…



「落ち着いて真慈……アタシがついてる」



そうだ。

俺はこんなところで挫けるわけにはいかない。


…ホント、ありがとな。

俺は感謝の気持ちをその手を握り返すことで麻依子に伝える。



「…へぇ、アナタの息子さんはそんなに価値があるんですね」

「当たり前ザマス! あの子は成績優秀で将来有望。アナタのような人とは格が違うザマス!」



『予定通りだね…F01の用意も出来たから3ndシークエンスに入るよ』



…2ndシークエンスで俺の仕事は『署名の提出』と『PTAの会長ヘッドに息子の話をさせること』。

そして次の仕事は、隙の出来た敵(PTA)に詰めの一手を食らわせること。




「んじゃ、その息子さんは今なにをしてるのか見てみましょうか。麻依子、『アレ』を」

「はい」

「…は?」



酒樽の呆れたような声を無視して、俺は麻依子から『アレ』をもらう。

…まあ、『アレ』って言っても正体はワンセグ携帯だ。

ちょっと、受信できる電波を変えたT.C特製の改造をしただけだ。


早速、その携帯の画面を横に倒し、問題の電波を受信する。

そこに映し出される映像は…






よし、ナイスショットだ。




「へぇ〜。あなたの息子さんって万引きが趣味なんですね」

「………ホホホッ!! なに言ってるザマス! あの子がそんなことするわけ…」

「はいどーぞ」

「………………!!?」




映像を見せた瞬間、酒樽は固まってしまった。

そりゃそうだ。溺愛してる息子が十字架にはりつけられてるんだからな。




『オイ! テメェ本屋でマンガ万引きしただろ!』

『ハ、ハイィ!! 僕がやりました! ホント許してくださいッ!』

『…だ、そうだ。すべて自供したぜ』




…亮佑も無理矢理吐かせやがったな。

まあ、フルボッコにしなかっただけでもよしとするか。



「んじゃ、返してくださいね」


俺は固まっている酒樽の手から携帯を取り上げ、麻依子に返す。




「…こんなことする生徒にこの学校にいる権利はあるか?」

「…………」



酒樽は完全にショックで固まって、動かなくなってしまった。

酒樽ヘッドが崩れたことで、PTAの威勢は見事に下がっていた。

………あとは仕上げだ。




『3rdシークエンス終了。Finalシークエンスに移行。…これから僕の言うことを復唱して』

「と、その前に一つ言う」

『ちょっと! …まったく、一分以内に終わらせてよ』



洋の作戦プランを遮って、俺は言いたいことを言う。

…最終段階が終わったらPTA達が意識を保っているか分からないからな。

それに……




俺は後ろを振り向き、唖然とした顔をした我が担任を見た。


「オイ浅尾!! ここで俺達は勝手にお前を助ける!」


俺が勝手に考えて、みんながついてきてくれた。

それは浅尾の迷惑かもしれない…が、そんなことはカスだ。



「この後は、この地から逃げようがなにをしようがかまわねぇ! …だかな、テメェが朽ちる時、娘がテメェを自慢できる生き方してから死ね!!」




俺が部屋に入った瞬間、浅尾の目は死んでいた。

…それは、昔の俺を彷彿とさせる目。

自らの命を消そうとしてることを示唆していた。

…守らなきゃならないモノがあるのに、それを投げ出しちゃいけない。




「…さてと、次はこっちだな」


浅尾に言うだけのことを言った俺は、PTA達の方に向き直る。

最初はギャーギャー言ってた酒樽の顔はすでに真っ青だ。


「モンスターペアレントの皆様方。…これを聞いてもアンタ等より立派な母親を攻められるかな?」


多分、今の俺は最高に悪い笑顔をしてるだろう。

なんせ、これから言葉一つで人の心を壊せるのだ。

楽しもうじゃないか。

Finalシークエンス『精神破壊と自然強迫』を…















…20分後、PTAは浅尾咲耶教師の辞任を求める議案を急に取り下げた。

審議が行われた生徒会屋でなにが起きたかは、PTA達は誰も語らなかった。




先週は更新できずに申し訳ございませんでした。今月は多忙を極めており、次回の更新もままなりません。更新は遅れますが必ずしますので、これからもこのバカ作者をよろしくお願いします

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