SUICIDE17〜連続奥義は程々に〜
スミマセン。今回はいつもより短いです。
輪廻や転生などはない
その人生は一度きりなのだ
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……………あー。
ついに死んだな、俺。
結局は飛び降り自殺か……自殺屋に頼んだ割りに、代わり映えしない死に方だったな。
そういえば、黒ヘルと会った時も飛び降り自殺しようとしてたっけ。
ある意味運命だったんだなぁ…
「んで、ここはどこだ?」
一通り現実逃避をし終えたところで、俺は目の前の現実に迎え直った。
俺の目の前には見慣れたマイホーム。
周りにある景色も『形』はいつもと変わらない。
しかし、その景色には白と黒しか『色』がない。
風景のすべては白黒のコントラスト。
空は真っ白で、太陽か月かも分からない真っ黒な球体がぽっかり一つ浮いていた。
一つ以外は完全なる無彩色の世界。
自分で着てる服さえも、いつの間にか黒い学ランになっていた。
唯一の例外は俺の体の肌色み。
地獄とも天国ともいえない…そんな異様な空間に俺はいた。
「……試しにどっか行ってみるか」
この空間があの世というのなら、どこかに人(幽霊って言った方がいいか?)はいるだろう。
けど今までの間、俺は人にも猫にも虫一匹にも会っていないのだ。
俺は左腕につけた銀色の時計を見てから、ゆっくりと白いアスファルトの道を歩きだした。
→→→→→→→→→→→→→→→
とりあえず白黒の世界をプラプラしてるうちに、俺は自分が落ちた屋上に来ていた。
そこで俺は初めて俺以外の人間(?)を見つけた。
だけど……
「ウイッスー! ……って、その拳を下げ
「黙れ黒ヘル!!」ブェッ!?」
なんで第一遭遇者がこいつなんだ!?
冗談キツいだろ。
「なんで今頃お前が現われるんだ?」
「いや、俺はなんで真慈が出会い頭にマジで殴ってきたのかが聞きたい」
「お前の顔が殴ってくれと言っていた」
「俺はそんなドMじゃない! ソフトMだ!!」
俺の斜め上に浮いてギャーギャー煩い黒ヘルは置いといて、俺は俺を殺した地面を見下ろす。
その純白の地面には、漆黒の花が咲いていた。
きっと、黒い所が俺の血の跡なんだろう。
「そういや、真慈が助けた子供は無事だったらしいぞ」
「……んなこと、死んだ俺には関係ねぇだろ」
「そんなこと言ってぇ〜。本当は『よかった』とか思ってるくせに」
「黙れカス!!」
ったく、こいつと話してると疲れるな…。
「それにしても、ここがあの世ってやつか……なんだかお前の服装にピッタリだな」
黒ヘルの服装は、ヘルメットから軍手や靴の先まで白と黒…他の色は、ヘルメットで隠れ切ってない目下から首までの肌色だけだ。
まったく奇妙な格好だな…
そんなことを考えてるうちに、黒ヘルの肌色部分の口から衝撃的事実が……
「……悪いが真慈、ここはあの世じゃない」
……………………………………………………………………へぇ。
それはびっくりだな。
うん、スゲー驚いたな、俺。
「ギブギブギブギブ!! めり込んでる!! お前の手がヘルメット変形させてこめかみにめり込んでるッ!!!」
黒ヘルの衝撃告白を聞いた瞬間、ついつい頭を全力で握り潰す…ベアクローをしていた(ヘルメットの上から)。
「黒ヘルさぁん? あの世じゃないならここは一体全体どこなんですかゴルァァァァアアアア!?」
「真慈! 不良みたいなキレかたないでくれ!! あとマジヤバいから腕の力弱めて!!!」
仕方ないので、黒ヘルの潰れない程度の力で掴んでおくことにした。
「ふぅ……死ぬかと思った」
「お前、もう死んでんだろうが。…で、ここはどこなんだ?」
俺は素で、自分の今いるこの奇妙な世界を知りたかった。
「……ここは俺が作り出した、魂の閉鎖空間『TSUTA■Aのワカメを越えたら、そこは大人の世界だった…』の中だ」
俺は空いた右腕をゆっくりと腰の位置に構えて、静かに深呼吸をする。
落ち着け…落ち着いてくれ、俺。
そして、落ち着いたら……
「っざけんなやオラァァァァァァァアアアアア!!」
「ブビャ!?」
拳を握り締め、黒ヘルの顎に向かってアッパーを放つ。
そして空中に舞ったその体を……
「オラオラオラオラオラオラオラァァアアア!!!」
「ギョグガビブボグヅギゼベガシッ!?」
ただ、ひたすらに蹴る。
左足を使い、鋼槍で貫くように蹴る。
黒ヘルを地面につけないように蹴り上げ、格ゲーだったらすでに500コンボ達成しそうになんども蹴る。
足が疲れたら…
「ドラドラドラドラドラドラドラァァアアア!!!」
「ドビャグレダゴブァベバヅガズッ!?」
ただ、ひたすら殴る。
左腕を使い、鉄槌で叩き潰すように殴る。
黒ヘルを地面につけないように殴り飛ばし、蹴りと合わせて900コンボを軽く越えるほど殴り続ける。
そろそろ、黒ヘルのHPもミクロンになってきた。
そこで、俺は最後に…
「ドゥォラァァァァァアアアアアアアアアア!!!」
「っ―――!?」
殴ることを止めて、浮いていた黒ヘルが落下し始める前に、左足で後頭部に向かい踵落としを喰らわせる。
それは罪人を狩るギロチンの如く鋭利な一線。
「あぁ、スッキリした♪」
黒ヘルは合計1026コンボを喰らい、顔面を真っ白なコンクリートにめり込んだ状態で後頭部から、プシュ〜と白煙を上げていた。
あ、ヤベッ。
こいつ殺したらここのこと分かんねぇじゃん。
………なんか眠。
…俺はやることがないので、黒ヘルが目を覚ますまで昼寝をすることにした。