SUICIDE10〜生ける右、堕ちし左、狂いし心〜
この小説の中に出てくる『ロキ』『フェンリル』『ヘル』『ヨルムンガンド』は北欧神話に出てくる名前です。詳しく知りたい方は…自分で調べてください。
……三ツノ魔神ハ此処二降臨ス
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「あちゃー。いきなりビックリしたなぁ」
「……あぁ」
アタシと生徒会長は、いきなり部屋に入ってきたヤンキー数人に捕まって…いわゆる誘拐ってことを体験してします。
アタシは(たぶん会長も)目隠し+手足を縛られてるため、今どこにいるかも分からない。
だけと、二人だけで閉じ込められてるのは分かる。
「それにしても、アタシに目隠しプレイとか放置プレイはむいてないみたいです」
「なっ、なぜそんなにふざけたことを言ってられる!」
「会長、アタシはふざけてないですよ? アタシは受け身より、攻めの方があってるような気がするんですよ」
どんどん攻めてかないと、あの人には追いつけないからね。
「…誘拐されたのにずいぶんと冷静だな」
「会長も十分落ち着いてるじゃないですか」
「私はこれでも恐がっている。話し方のせいだ」
確かに、会長のしゃべり方は男っぽいけど堅苦しい所があるからね。
「アタシは理事長の助けが来るのを待ってますから」
「警報装置のことか…理事長の選んだ助っ人など信じられないな」
会長は理事長…彩華さんが嫌いみたい。
アタシは結構好きだけどな。
「会長が理事長を信じられなくても、助けに来てくれる人たちはきっとアタシの知り合いですから、大丈夫ですよ」
「しかしだな…」
「侵入者だ! 早く来てグベッ!?」
アタシの前の方から、壁を挟んで騒ぎが聞こえる。
「俺がここを押さえるから、お前は早く二人を助けろ」
「…君はただ暴れたいだけだろ? ま、僕はそっちの方が顔が傷つかないからいいけどね」
そんな会話の後、ドアが開かれる音がした。
「麻依子ちゃんに…こっちは生徒会長さんだね? …綺麗だ。今度僕と秋の夜長をご一緒しませんか?」
…助けるより先にナンパなんて、呑気なやつね。
「洋。早くその口閉じてさっさと助けなさいよ」
「まったく、麻依子ちゃんは相変わらず手厳しいなぁ」
そう言いながらアタシの目隠しを外した洋は、苦笑いしながら小さなナイフで手足の縄も切ってくれた。
よく見ると、ここはどこかの学校の体育館らしく、アタシ達がいたのは体育館の準備倉庫だったみたい。
「ここは土湖高校の旧体育館の中で、フェル兄と一緒に来た。ここにいるのは四十人ぐらいだからあと五分ぐらいで鎮圧できるよ」
フェルか…
「じゃあ、洋のこともヨルって呼んだほうがいいかな?」
「いや、フェル兄は分からないけど、僕は女の子には普通に呼んでほしいかな」
「…この女たらし」
アタシは洋に呆れながら立ち上がって、おもいっきり伸びをする。
う゛〜、肩凝ったぁ。
「君は…大西君か?」
洋に目隠しとかを外してもらった会長さんは、洋のことを知ってたみたい。
「そんなに僕は有名だったかな。ファンクラブでも入ってるんですか?」
「ファンクラブには入ってないが、生徒会に一年生の中で『三大王』と言われる三人の一人、先生までナンパする問題生徒として何度か報告が来ているよ」
「…マジっすか」
洋、結構落ち込んじゃってるよ。
まぁ、自業自得だからしょうがないよね。
「ほら洋、助けに来たんなら早くココを出ましょ」
「……あぁ、そうしよう」
テンションが急落した洋と、ちょとキョドってる会長を連れ、アタシは埃っぽい部屋を出ることにした。
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谷津さんに連れられて、狭い準備倉庫を出た私達の目の前で、ありえないことが起こっていた。
「くっ、くゾブッ!?」
「このやろヴっ!!」
「ナメんじゃブェッ!?」
日が暮れ始めたらしく、赤くなった空間に響く断末魔と共に、吹き飛んでいく物体。
「まるで人間大砲の砲台ね」
「フェル兄も、久しぶりだからって人を吹き飛ばさなくてもいいのに」
そう、タネも仕掛けもなさそうな人の体が、一発殴られるだけで空中を飛んでいくのだ。
その拳を振るっているのは、制服のズボンに黒いタンクトップ、そして手に何かはめている…
「オラオラオラオラ!! もっと骨のあるヤツはいねぇのかぁ!!」
『三大王』の中で暴力ざたをよく起こすが、理事長…姉の一言で取り締まれない問題生徒の一人…櫻井亮佑だった。
「なぜ! なぜこんな所に三大王が二人もいるんだ!?」
「二人が助っ人だからに決まってるじゃないですか」
目の前にいる大西。
戸野高と土湖高の問題生徒数十人を相手に暴れる櫻井。
この二人が理事長の助っ人…
「だから言って、ここまでの暴力行為は警察も黙っていない! わかってるのか!?」
私が叫ぶと二人は少し顔を見合わせてから、私にほんの少しの笑みを向けてきた。
そして、大西の方が服の中にしまわれていた銀色のネックレスを取り出した。
そのネックレスはシンプルで、飾りはちょっと大きい逆になった星がついているだけ…
「ぶっちゃけますけど、僕はあのR‐ラグナロクの中で『偽善神』、今暴れてるあの人は『破壊神』って呼ばれてたんですよ。まっ、過去の話だけどね」
…この周辺に住んでいれば大体の人が知っている。
R‐ラグナロクの中でも中心となった正体不明の三名…
前に姉が言っていた。
『あの三人がいなかったから、今頃チームは潰れてた』
「ここら辺の人なら黙示録の意味は知ってるでしょ? このネックレスは僕専用の黙示録…『虚実の黙示録』なんだ」
…だからか。
黙示録は暴力さえ合法にしてしまう権力。
「おーぃヨルー! こいつが俺の偽物だぜー!」
いきなり暴れてた櫻井が大声を上げ、私達はその方を振り向く。
「なんだその毛深いムキムキマッチョ君は」
「まるでゴリラだね」
「なっ…」
私は言葉を失った。
彼が偽物と言った男は谷津さんの言う通り、ゴリラが制服を着たような巨体が気絶している…だけどそんなことは驚くほどじゃない。
問題は、その超重量級のゴリラ男を櫻井が片手で持ち上げていたことだ。
「ビックリしたでしょ? フェル兄はチーム最強の名を持ってた力持ちだからね」
「確か、片手で百八十Kgは持ち上げてたよ」
…ありえない。
あんな男がいること自体ありえない。
「ヨル。お前の偽物もあそこにいるぜ」
櫻井は、ゴリラ男を持ってない片手で指を差す。
ついついつられて私はその指を差された人を見る。
「さっきから言ってる偽物というのはなんだ?」
私は一番話し掛けやすい谷津さんに、ちょっとした質問することにした。
「ん〜。勝手に亮佑とかの名前を使ってる人がいるの」
「なんとなく分かっ…!?」
瞬間的に、近くにいた大西から殺気が発される。
…しかし、幻覚を見る程ではない。
「……麻依子、あいつの顔潰していい?」
「ご自由にどうぞ」
その瞬間、大西の右腕がブレる。
ヒュンッ、と風を斬る音が聞こえたと思ったら、十メートル以上先の男の顔面に何かがぶつかって、後ろに吹き飛ばされていた。
「僕の偽物を語るなら、もう少しイケ面になってからにしな」
「さすが洋、チーム最高といわれたプライドの高さ(自分の格好よさだけ)ね」
大西の右腕のブレがなくなった時、その手には異常に長い鞭が握られていた。
「あっ、ビックリしたと思うけどさっきのは銃機じゃなくて、僕の鞭が伸びたからですよ」
それは分かったが、あんな遠くの人の顔を一発で…人間業じゃない。
そんな二人と平然と話す谷津さん…
「谷津さん、なんであなたはこんな人を見て驚かないんだ?」
まさか…彼女も二人と一緒なのか?
「生徒会長が『こんな人』とか言って偏見はダメでしょ? …アタシはR‐ラグナロクの医療班の一人なの。だから、三人のこともよく知ってるの」
まさか、姉はこんな化け物のような人がいる集団に、こんな小さな女子高校生を入れているのか!?
「なんで、あなたみたいな人が治安のために暴力を振るう危険な集団などに入っているんだ!?」
「危険な集団か…酷い言われようだけど、僕達のやり方は確かにそうだね」
大西はそう言いながら、物悲しそうな顔をしていた。
「確かに、私達のチームは暴力を振るうって意味では、ここで伸びてるヤンキー達と同じかもしれない」
しかし、谷津さんの目は私を完全に見据えていた。
「…でもね会長、どんなに傷ついても逃げない。どんなに苦しくても前に進む。自分を押し殺して、犠牲にして誰かを救う。そしてそのためなら平気なふりして全身を悪に染める…そんな無茶する人がいるから、アタシはその人を少しでも助けたいからチームに入ったの。…会長がその人の生き方を否定するなら、アタシは会長を許さない」
この瞳の強さ…子供のように純粋なのに、芯が通った折れることを知らない決意。
この瞳は彼…須千家のプレッシャーに近いものを感じる。
「…俺達がウダウダやってるうちに、増援が来たらしいぜ」
あまりに強い瞳に見据えられたため、いつの間にかゴリラ男を持ってる櫻井が後ろにいたことに気づけなかった。
「…本当だね。ったく、運が悪いね」
周りを見ると、体育館の全ての出入口を屈強な男たちが塞いでいた。
「お前等、俺の邪魔してんじゃねぇよ」
その一ヶ所から現れたのは…
「多田!? なにをしてるんだ!!」
そこにいたのは間違えなくあの時の多田だ。
右胸にギブス、なぜか左足と左肩に金属のパットをしている。
「何してるって? …黙示録を使って俺に恥をかかせたお前を強姦するためだよ」
「なっ…!」
そう言った多田は、左足のパットをこちらに見せる。
そこには確かに逆さまになった五芒星が膝の部分に彫られていた。
「ずいぶんふざけた権力の横暴ね」
「権力は使うためにあるんだ。女は黙ってろ」
多田は谷津さんを睨むが、谷津さんはまったく動じてない。
「…ヘルの偽物が随分と語るぜ」
「ヘル姉はお前みたいにカスじゃないな」
櫻井と大西の二人が呆れた口調で話す。
「俺が偽物の証拠はない。本当はお前達が偽物かもしれないじゃないか」
多田の言ってることは確かに正論だ。
こんな逆さまの五芒星ぐらい簡単に作れる…
「偽物は…死ぬべきだ」
多田の言葉と同時に、出口を塞ぐ全員がバットやナイフを取り出す。
例え二人が超人的でも、この数で襲われたら…
「なら、確かめてみようよ」
谷津さんの言葉と同時に、私の背中に悪寒が走る。
「『こっち』の増援が来たからな。…黙示録の所持者をナメると痛い目見るぜ」
「『君達も』運が悪いね。麻依子を誘拐しなきゃ、僕とフェル兄だけで済んだのにね」
悪寒が全身に回り、体の芯まで冷えきって固まって…まるで死体になった気分に陥る。
この感じ…まさか!!
「姉は血を吐く、妹は火吐く、可愛いトミノは宝玉を吐く〜♪…」
多田と逆方向の出入口を塞いでいたの人達が、一気に吹き飛ばされる。
「鞭で叩くはトミノの姉か、鞭の朱総が気に掛かる〜♪…」
そこから現れたの白髪の少年は、不気味な歌を歌いながらゆっくりとこちらに歩きだす。
左足を踏み出すたびに、金属音が館内に響き渡る。
「…なっ!?」
多田が驚きの声を上げる。
私は声を上げることさえ出来ない。
いきなり現れた少年…須千家は左腕と左足が白い包帯によって巻かれていて、左半身が大怪我をしたかのようになっていた。
「春が来て候林に谿に暗い地獄谷七曲り〜♪…」
須千家が一歩近づくだけで、私の感覚全てが危険信号を発する。
彼は…危険すぎる。
「啼けば反響が地獄にひびき、狐牡丹の花が咲く〜♪…」
…怖い。
彼の声は耳じゃなく恐怖心に直接歌い掛けてくるようで、足の震えが止めたくても止まらない。
「赤い留針だてにはささぬ、可愛いトミノを目印に…」
歌が終わった時、須千家は私達の目の前にいた。
押し潰されそうな威圧感を放っている彼は、私の隣にいた谷津さんに拳を振りかざす。
「やめっ……?」
彼の手は谷津さんの額を、コツンッと軽く小突いただけだった。
「ったく、面倒事に巻き込まれてんじゃねぇよ」
「えへへ…てか、その歌『トミノの地獄』でしょ? 不気味だからやめときなよ」
「ウッセェ、呪い殺されれば自殺じゃなくても死ねるだろ。それよりも小夜が帰ってきた。とっとと帰って会いに行くぞ」
「マジで!? 明日にでもお帰りパーティーしなきゃね♪」
……?
二人の会話と同時に、須千家から来ていた殺気が消えた。
なぜ…
「おいヘル、お前のために半分以上残してやったぜ。…何人ヤる?」
「おいフェル、そのゴリラは動物園に返しとけよ…悪いがおこぼれはないな」
「ヘル姉、やっぱり怒ってるね。あ、あのパツ金男がヘル姉の偽物ね」
「ヨル、ロキに言われたからって『姉』をつけるなって言ってんだろ。俺は女じゃねぇ」
櫻井、大西の二人と他愛無い会話をする須千家の雰囲気は、普通の高校生といたって変わらない。
屋上の件とさっきの彼とは、同一人物には見えない。
「テンメェ!! よくも俺に恥かかせやがったなぁぁあああ!!」
叫びが聞こえたと思ったら、いつの間にか須千家の後ろに多田がいて、ナイフを手に襲い掛かろうとしていた。
「あ、危なッ!!!」
「なっ!」
私の目の前でありえないことが起きた。
普通人間の腕が、刃物を弾くわけがない。
でも、私の目の前で多田の振り下ろしたナイフは、振り返った須千家の左腕に止められているのだ。
「なんでナイフで俺が斬れないのか知りたいだろ?」
「クブッ!?」
驚きの表情で動きの止まった多田は、須千家の蹴りに吹き飛ばされる。
「麻依子を散歩させてくれたお礼に見せてやるよ。『地獄の黙示録』を…」
そう言って彼は上着を脱ぎ、左手足に巻かれた包帯を解い…
「なっ…!?」
…彼の露出した左腕は、白い髪と相対する漆黒の金属光沢を放ち、その肩には存在自体が禍々(まがまが)しい髑髏、肘には鮮血のような深紅の十字架が施されている。
はだけた胴体は、まるで左側に黒い生命維持装置が埋め込まれてるようで、機械と人体が一体化していた。
左足の膝の髑髏には、多田のように逆五芒星が刻まれていた。そして、その星が刻まれた髑髏は不気味に笑っている。
その姿はまるで…
「半分生きて半分死んでるみたいでしょ?」
須千家の異様な姿に目線を奪われていた私に、谷津さんが話し掛けてきた。
「『三大神』の中で、一番異様で一番狂気に満ちた…『死神』。真慈はそう呼ばれてたわ」
「そこの金髪野郎は、世間で流れてる『ヘルは金属を左手足に纏ってる』って言う噂を知ってみたいだけど、実際のヘルは『右手足が金属の義手と義足』なんだぜ」
「あの手足はハガ〇ンみたいに繋がってるから、自由自在に動かせるけど…フェル兄、僕も金髪だから。あんな不細工を僕と一緒の表現にするはやめてほしいな」
私以外の三人が、須千家を見ながら独り言のように言葉を漏らす。
「R‐ラグナロクで最強の怪力と言われた『破壊神』。
最高のプライドを持つと言われた『偽善神』。
…そして未だ類似する者が現れず、最狂と呼ばれ続ける『死神』。
…もう、決着がつくわね」
谷津さんはそう言うが、三対四十は分が悪すぎ…
「うわぁぁぁぁぁああああああああああ!!!」
いきなり、多田の悲鳴が館内に響き渡る。
その悲鳴が聞こえたほうを見ると、須千家と多田が向き合って…機械じゃない右腹部にナイフで刺されていた。
「ナイフを持つんなら、一回ぐらい人刺したいだろ?」
正確にはナイフを持った多田の手を、須千家は自分の腹部に引き寄せていた。
多田は、赤く染まり始めたナイフから手を放して須千家から必死の形相で逃げ出した。
「お、お前ゼッテー狂ってる!」
…確かに、普通の神経じゃありえない。
「一回刺したぐらいじゃダメだろ? …何度も突き刺して」
発狂した多田は須千家に馬乗りになってその腹部からナイフを強引に抜き取り、狂ったように何度も彼の体に突き立てる。
「ミンチになるほど斬りつけて」
まるで何かに取りつかれたように血塗れになりながら須千家を斬りつけ、その腹部に鮮血と生挽肉のスープを作り出す。
「俺の臓物ぶちまけろ」
そのスープの中に素手を突っ込み、内臓器を引き千切って取出し、それを口に…
「…か…ょう…しっか……会長!」
「…っ!!」
いきなり呼ばれた私は、いつの間にか谷津さんに手を握られていた。
全身が急激に熱くなる。呼吸が乱れ、頭の先から足の爪先までのあらゆる汗腺から脂汗が流れだす。
そうだ…ッ!?
「須千家君が…生きている?」
さっきまで多田に殺されて、弄ばれていた須千家は、ナイフを片手に倒れている多田の目の前に平然と立っていた。
「会長が見ていたのは、真慈の狂気が見せた幻覚です。アタシは見たことないから、どんなものを見るかわからないけど、長時間見ると心が壊れますよ」
…た、確かに、さっき見たものを見続けたら、廃人になりかねない。
よく見ると、私達四人と須千家以外の全員が倒れこみ、悶え苦しんでいる。
「あと、麻依子に触れてるとなぜかヘル姉の幻覚は見ないから、そのままでいたほうがいい。ついでに僕達は馴れてるから大丈夫なんですよ」
大西が丁寧に説明してくれるが、『無事でいたいなら離れるな』ということだろう。
…ここは、従わないと私の精神がもたない。
私は両手で谷津さんの手を握りながら、須千家の方を見る。
………笑ってる?
いや、須千家の横顔は完全に笑ってる。
その笑いはまさに狂気の塊。
幻覚を見ないのが、谷津さんに触っているからなのが感覚で分かる。
私の感覚すべてが、この空間に拒否反応を起こしている。
今感じる感覚は恐怖なんかじゃない。
…『死』そのものだ。
「…さぁ、お前等に俺を殺させてやるよ。殺戮の悦びを存分に味わってもらおうじゃないか」
その声と同時に日が落ちた時、この空間に闇と死の恐怖が満ち、その場に意識がある人間はたった五人になっていた。