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SUICIDE9〜歩む少女と降臨する神の娘〜








人は、自分と違ったものを拒絶する愚かな生きものである。













―――――――――――――――










二年ぶりぐらいだったか?

この車椅子も、この瞳も…


俺は揺らぎもしない小夜の瞳に目線を捕われていた。




――この女性…笠井かさい 小夜サヨは、彩華が保護していた事故難民の一人だ。


彩華はチームだけじゃなく、事故や事件で家族を失った子供数十人を孤児院を作って保護している。


その中でも、小夜は家族でドライブ中に飲酒運転の暴走車に追突されて両親を失い、さらに彼女自身も後遺症で下半身マヒで歩けなくなった。

そして彼女は精神的にも傷ついて、俺が会った(彩華に強制的に孤児院へ連れてかれた)時には完全に他人を拒絶していた。


時々会ってる[毎週一回誰かが孤児院に行くシステム。俺は毎週強制]うちに、彩華と麻依子[なぜかついてきた]、俺の三人には自分から話し掛けてくるるようになった。

彩華と麻依子は鬱陶うっとうしいほど話し掛けてたから分かるけど、俺はなにか特別なことをした記憶はない。


そして二年前、下半身マヒを直せる医者を見つけ、その医者のいるアメリカに旅立った――







「どぉ? ビックリしたでしょぉ。それとも嬉しすぎて動けないのかしら?」


彩華の言う通り久し振りに会ってビックリしたし、確かに嬉しい。


だけど…







「小夜、なんでそんな姿でこんな所にいんだ?」

「………」


俺の質問に、小夜は少し目線をそらす。



「小夜は手術受けて成功したんだけどぉ、リハビリが上手く行かなく…」

「彩華、黙ってろ。これは小夜と俺の問題だ」

「ヘル…」


彩華の言うことより、今は目の前の小夜が問題だ。



「小夜、約束はどうなった」

「…約束……守れなかった…」

「だったらここから消えろ」


小夜は、ついに完全にうつむいてしまった。

厳しいと思うが約束は約束だ。






…小夜と会ったことで思い出した、俺と小夜が交わした約束。



小夜の約束は

『次に会う時はちゃんと歩けるようなる。歩けるまで目の前には現われないこと』



俺の約束は

『帰ってきたら、いうことを三つ聞く』




……あとで麻依子には約束対象偽称の罪で、ハイポーション+ヌーダ=ハイポーションソーダ(強炭酸)のイッキ飲みの後、ゲップをせずに東京二十三区を言い切ってもらうとして、今は小夜の約束が守られてないのが問題だ。




未だうつむいたまま動かない小夜。

その小夜を心配そうに見る彩華。


しょうがない…




「おまえが消えないなら俺が消える」


俺は二人に背を向けて、首領の部屋風理事長室の出口に歩く。













小夜…すまな

「小夜!? 危ない!」


彩華の切迫した声に反応して、後ろを振り返る。



少し離れた所で、俺よりちょっと身長の高く、すらりと細い小夜がいた。


…俺が座ってる人間の身長なんて分かるわけない。
















そう、小夜が立っていた。



「………待って…シン」


そして小夜はこっちに両手を伸ばして、体を震わせながら不安定な足で一歩踏み出そうとする。



「………あっ」



震える片足で重心が支えきれず、小夜の体は横に倒れ…
















「…るわけねぇよな、この状況でよ。てか、俺が倒さねぇよ」

「あら、格好いいこと言うわねぇ。小夜が羨ましいわん」


倒れこみそうになった小夜を正面を俺が、後ろから彩華が支えていた。




「………シン…捕まえた」

そのままの状況で、小夜は覆い被さるように、俺の背中に手を伸ばしてきた。



「ったく呑気だな。俺はハイジでお前はクララか?」

「そうよ小夜。いきなり立ち上がるなんてビックリするじゃないのぉ」



俺は、彩華と二人でため息を吐きながら、友人が戻ってきたことに内心本気で喜んでいた。



「…でも……私……ちゃんと歩けてない…約束守れてない…」


小夜が今頃なことを言う。

顔は真横にあって見えないけど、声が悲しげだ。




…ったく、無駄に完璧主義者が。


「俺は小夜が歩いてるようにしか見えなかったけど?」


俺と彩華が支えた時に、不安定に踏み出した一歩はしっかりと地面についた。

それで十分だ。



「そうよぉ。小夜が歩いたから、ヘルが捕まったのよ♪」


彩華はいつのまにか支えることをやめて、車椅子を小夜の座りやすいように持ってきていた。




「……シン…サイ……ありがとう」


「気にしないわよ〜。ねっヘル?」

「あぁ、礼を言われる筋合いはないな。それより早く座れ」



小夜は俺の言った通りに、そのまま車椅子に座る。















ん? そのまま…







「…小夜? この体勢はちょいとつらいんだけど?」

「あらあら♪ 小夜も大胆ねぇ」


小夜が俺の背中に手を回したまま座ったせいで、倒れこみそうだった俺はギリギリで耐えて、厳しい角度の前屈み状態になっていた。

そして今現在も、小夜が引き寄せる力と全力で戦ってる状況だ。




「ちょっと放してく…」

「ヤだ」

「早ッ!?」


昔から拒否の時だけ速答するのは変わらねぇな。



「何で嫌なんだ?」

「…二年間…ずっと待ってた………もう我慢出来ない…」




…そういえば毎週会ってた時、小夜がよく抱き締めることを求めてましたっけね。


小夜曰く、俺は暖かいらしい。

俺は小夜の方が確実に体温が高い気がする。

拒否すればいいものを、その悲しそうな表情+俺も妙に落ち着くので、俺は毎回負けて抱き締められていた。

これが、所かまわず両手を伸ばして求めてくるため、R‐ラグナロクのメンバー全員にに知れ渡り、通称『ヘルの休息』[命名彩華]と呼ばれるようになった。






「ほらヘル〜。諦めて小夜にハグされちゃいなさぁい」

た、確かに…この姿勢はちょっとキツい。


「……私と…ダメ?」


あぁ、すんごい切なそうに言うなよ…



「…分かったからそんなこと言うな。その代わり、ちょっと姿勢を変えてくれるか?」


俺がそう言うと、小夜は簡単に手を離してくれた。

そして、小夜の膝に車椅子にセットされたクッションを乗せ、その上に俺が座る形をとる。

座高が低めの俺と、身長の高めな小夜だと、この体勢でちょうど顔の位置が同じぐらいになる。


「…ふみゅ……」

そして、小夜が俺の右肩に顎を乗せながら、俺の体を後ろから抱き締める…


これが『ヘルの休息』と言われる状態だ。




ついでに、高校生二人が乗っても壊れないこの車椅子はT.Cの特別製で、見た目はただの車椅子でも衝撃に強く実は自動式だったり、様々な仕掛けがあったりなかったり。







…やっぱり、なんか安心するんだよな、これ。


「私もやるぅ〜♪」

「お前ッ!?」


久しぶりに二人で和んでた所に、正面から俺に抱きつく形で突然介入してくる彩華。




「……サイ…邪魔しないで…」

「いいじゃん。小夜はこれからヘルの家でいくらでも出来るんだからぁ」

「はぁ?」


いくら帰って来たからって、それはムリだろ。

俺の家に住むわけでもあるま…



















「頼みごとの一つは、これから小夜をヘルの家に居候させてあげてねん♪」

「ちょっと待てぇぇぇえええい!!! 何で小夜が我が家に居候する必要があんだよ!!」


普通におかしいだろが!!



「だってぇ、孤児院で保護するのは義務教育期間までだしぃ。だからといって、小夜に一人暮らしは難しいのょ。だから、小夜はこの高校に編入させて、私か麻依子ちゃんかヘルの家に世話してもらうことにしたの」


そういや、小夜は俺や麻依子とタメだった…って、今の問題はそれじゃねぇ!!



「何でその三人の中で俺の家なんだ!? どうせ、小夜の意見も聞かずに勝手に決めたんだろ!」


そうじゃなきゃ、普通俺の家なんて選…




「…私決めた…私……シン…一緒がいい…」


…んでたんですね、ハイ。

ある意味嬉しいですけど、なに言ってるんですか?



「麻依子ちゃんの家は段差が多くて車椅子には適してないし、私の方は会社も本家も人の出入りが激しくて、人見知りな小夜には辛いと思うのぉ。それに対してヘルの家はバリアフリーだし、住んでるのもヘルだけだから一番小夜にあってるのよぉ」



た、確かに俺は二年前に金が余って家をリホーム&全面バリアフリーにしたし、一人暮らしだ。


…だが、これとそれとは話が違う!



「いや、待て。戸野高に通うなら俺の家は少し遠いから、車椅子の通学にはむいていない。それに…」

「約束……一つ使う…シン、私…居候させる…」







それは死刑宣告ですか?



「ヘルは約束破る人間じゃないよねぇ?」


彩華もプレッシャーを与えないでくれ。



くっ、こんな状況で健全な自殺願望者の俺に選択肢は…






「…わかった」



あるわけねぇじゃねぇかよ!!




俺の答えを聞いた彩華は、満足した顔で俺から離れてくれた。


「ありがとねヘル♪ 生活費とか必要なものはこっちでカバーするから。…でも、今回小夜をあなたにお願いした一番の理由は小夜の心が一番分かるのがヘルなのよぉ」


「お前だって分かるだろ?」


「私は喜怒哀楽のくらい。ヘルみたいに細かい感情までは分からないわょ」




確かに小夜は基本的に無表情だ。喜怒哀楽だって、彩華とか心を開いた人にしか見せない。

だけど、小夜は普通の人間より純粋な感情を持っている。

俺はそんな小夜の感情がなんとなく雰囲気で分かるのだ。



初めて会った時も、俺を恐がってたから

「恐がってんじゃねぇ」

って言ったら、小夜も含むそこにいた全員に驚かれた。


…まぁ、それを聞いた彩華に毎週孤児院に連れてかれ、小夜の心のリハビリをしていたわけだ。



「リハビリが成功しなかったのは精神メンタル面が原因らしいのょ。だから、一番小夜の気持ちの変化が分かるヘルにリハビリとかをサポートしてほしいのぉ」




…とか、ですか。


「学校でも理事長の権限で小夜を俺と同じのクラスにして、俺に世話しろってことだろ?」

「やっぱりヘルは物分かりがいいわぁ♪ 頼んだわよぉ」




…この会話には裏がある。

俺の『世話』の言葉には『小夜がイジメられないように守る』って意味が含まれている。

小夜が閉鎖的になったのは、両親を失ったショックともう一つ、車椅子になったことで起こったイジメにあるのだ。

彩華は小夜が二度とそんなふうにならないように、俺に小夜を守らせる気だ。




「…任せろ。麻依子もいるし大丈夫だ」


俺も、歩けないだけでイジメを起こしたり、同調したりする野郎共は地球の糞カスで、消え失せたほうが世のためになると思う。


…守ってやろうじゃんか。

まぁ、死ねるまで…いわゆる聖翠が集まるまでだけどな。




ふと、小夜の腕に少し力がこもる。


「………シン……ありがと…」

「そう思うんなら、ちゃんと歩けるように努力しろよ」

「ヤだ。………けど…シンが言うなら…がんばる…」



頑張ってくれよ。

俺が死ぬ前には、ちゃんと歩けるようにしてもらわないとな…













「これで一つ目のお願いは終了ぉ。そのまま座ってていいから二つ目のお願い聞いてねぇ♪」



さぁて、次は三人揃っての仕事だっけな。


…補足になるけど、俺達三人がR‐ラグナロクに所属していたのは、戸野家の力で隠蔽いんぺいさせてもらっている。

彩華曰く『最初は目立たずに後でバラして、三人に学校を治める王になってもらうため』らしい。

そんな計算も虚しく、いつの間にか目立って『三大王』と呼ばれるようになっちまったけどな。


そんなこんなであんまり大きな行動はとれないんだけどな。



そんな俺達はなにを頼まれるのか…













「偽ラグナロクのグループを作ってる不届き者がこの学校のあなた達の先輩にいるから、完膚無きまでに伸しちゃってねぇ♪」

「はぁ? 何でそんなこと俺達なんかに頼むんだ?」



俺達がチームにいた時も、抵抗勢力や偽物が何度も出来ていた。

でも、そんなの簡単に叩き潰してきたはずだ。

なのになぜだ?



「その勢力の中心人物三人がそれなりの力があって、さらにヘル達の名前を勝手に語ってるのよぉ。生意気でしょぉ?」

「…なるほど」



彩華は笑顔で言ってるけど、殺気が目視できそうなほど出てる。

…相当怒ってんなコリャ。



「でも、彩華はなんでそいつらを伸さないんだ?」

「これでも理事長として、自分の学校の生徒に厳しい教育は出来ないのよぉ」



厳しい教育=暴力は振るえないわけか…

経営者も大変だな。



「だからぁ、一時的にヘル達三人に特殊戸野治安保護権利…『黙示録』を返すことにするわぁ。これでヘル達の存在が学校中に広まるし、敵も徹底的にヤれるわよぉ♪」

「…マジかよ」


高校生活半年にして、もうバラすのかよ。

マジで消す気じゃねぇの?




――黙示録…それはこの地域を治める戸野家の権限を借りて、不良や犯罪者を武力などで取り締まることが出来る絶対的権限のことだ。

そして、黙示録を持っている者の指示があれば、黙示録を持ってなくても同じ権限が与えられる。


黙示録を持っていたのは、R‐ラグナロクのリーダーの彩華と、亮佑、俺、洋の四人だけだった。

あまりに大人数おおにんずうが持つと、権力を悪用する人間が出て来るからだ。


そして、チーム脱退と共に俺達の黙示録は破棄された。

その権力が増えすぎることを防ぐため、黙示録はその四つ以降は作られてないらしい。



ついでに黙示録の形は四つそれぞれだが、必ず逆五芒星が描かれている。

今も権限を持つ彩華の黙示録は、いつも着けている眼帯である。


そして俺達は彩華の指示で動いてて、俺達の黙示録はあまり使われることがなかったため、ごく少数しかそれを見た人はいない――




…しかし、彩華の『ヤれる』が『殺れる』に聞こえるのは俺の気のせいだろうか?


「どうせ、亮佑は『持ってれば場所を気にせず不良と喧嘩できる』。洋には『持ってれば女の子にモテる』…そんなふうに釣ったんだろ?」

「当たり〜♪ …で、ヘルはどうする?」



どうするって?




…愚問だな。




「わざわざ黙示録を返すってことは、『偽物パチモンに本家を見せつけて叩き潰してやれ』ってことだろ?」


ただ叩き潰すだけなら、彩華の指示だけで十分なのだ。



「数と強さは?」

「数はざっと八十、強さはチンピラ以上ヤクザ未満ってところよぉ」


って、ことはドスチャカは使わないってことか。




…なら、返事は一つ。



















「なら、二人で十分だろ。俺は面倒だからパス」

「…やっぱりねぇ。ヘルならそう言うって思ったわ」



さすが、俺の上に立ってた女だ。

予想は出来てたってわけね。



「頼みの一つは了承したんだ。もう一つぐらいは俺にも拒否権はあるはずだ」

「そうねぇ、確かに無理矢理言うこと聞かせるのは気が引けるわぁ」


当たり前だ。

言うことを全部聞けって言われても、ハイハイと聞くやつはいない。



「でもねぇ。その集団が私の妹…この学校の生徒会長が狙われてるのよぉ」


生徒会長……どんなやつだっけ。

てか、生徒会長と理事長が姉妹か…この学校の権力独占現場が見えた気がする。


「麗花は真面目すぎるからぁ、その集団の反感を買っちゃったのぉ。だから、倒すついでにボディガードも頼もうと…」













〔助けてください!!!!〕


なんだ? この世界の中心で愛を叫びたくなる音声は。



「…ちょっと遅かったみたいね」

彩華の目が真剣なものに変わる。

その目は俺達三人以外が直視すると、恐怖のあまり気を失うと言う恐怖の魔眼だ。



「ん? 恐がらなくて大丈夫だ。…彩華、小夜もいるんだから冷静になれ」


彩華の殺気と同時に、小夜の腕に力が入ってた。

その体が震えてる時点で、完全に恐がってるのが分かる。



「あらぁ、ごめんねぇ小夜」

「……大丈夫…………」


彩華の殺気は消えたけど、まだ震えてんぞ。



「小夜、もう大丈夫だ」


右手を後ろにまわして、右肩に乗った小夜の頭をクシャっと撫でる。


「……フニャッ………」


小夜は猫のような返事をして、その震えと腕の力は抜けた。




「で、なにが遅かったんだ」


小夜が落ち着いた時点で、俺は話を戻す(撫でるのは継続)ことにした。



「さっきのは、麗花に渡しておいたGPSつき警報装置で、襲われたりしたら押すように言っておいたのよぉ」

「まだ授業中だし、襲われることはないだろ?」

「相手はヤクザ以下でもチンピラ以上なのよ。あなたほどじゃないけど授業くらいサボるわよぉ?」


そりゃそうだな。













〔ヘルプミィ〜! 助ケテクダサイ!〕


…なんだ、この異様にむかつく音声は。



「…どうやら、麻依子ちゃんも襲われたみたいね」

「なっ!? あいつにもその警報装置を持たせてたのか!」

「何個かあったのを欲しいって言ったから、一つあげたのよぉ」




そういえば、ドアの前で麻依子に会った時、生徒会長に呼ばれたって言ってたな。

まさか…



「二人共一緒に学校の外に移動中よ。…きっと同時に誘拐されたわね」


いつの間にか、彩華の手には携帯のようなものがあって、その画面では赤い点二つが地図上を移動していた。


















…ったく世話がかかるやつだ。












「その携帯みたいなものは、亮佑達も持ってるのか?」

「もちろん、これはヘル用だよぉ」


差し出された無言で機械を受け取る。


「……シン…行くの?…」

「あぁ、麻依子の所に行かなきゃならねぇからな」

「…マイ……助けてあげて……」

「了解した」



小夜も潔く手を離してくれた。


俺は立ち上がって、彩華の目の前に立つ。


「俺の黙示録はどうするんだ」

「あそこにサイズ合わせした新品を作っといたわよぉ。ここでつけてくぅ?」


彩華が指差した方向には、桐の箱が三つ重なっていた。

準備がいいなまったく…



「そうしておく。あと、小夜を俺の家に送っといてくれ」

「わかったわぁ。黙示録の方のデザインは現役の頃と一緒だから、きっと気に入るわよぉ。そ・れ・と…」


彩華はゆっくりと俺の耳に顔を近づける。


「…小夜の体を思って自分が部屋から出ようとした時、スゴく格好よかったわょ」


…ったく、なんでもお見通しだな。



ため息を一つ吐いた後、俺は彩華の前にはひざまずく。






これが俺が…ヘルとして復活するための儀式。
















「我等が父、悪戯最高神ロキよ。貴方の娘に正悪を構うことなく滅し、人の心を喰らう狂気の象徴…地獄の黙示録を与えよ」


「ハァーィ♪ 思う存分討ち滅ぼしてきなさぃ、ヘル」













ここに、R‐ラグナロクの『三大神』と呼ばれた三人の中で最も狂いし神、死を司る神が復活のときを迎えた。



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