プロローグ
俺は目を閉じ、覚悟を決める。
《…ココハ、ドコ?》
ここは、俺が通う学校の屋上。
《…アナタハ、ダレ?》
今、俺はフェンスの外側に立ってる。
《…ナニ、シテルノ?》
俺は…十六年間の人生に終止符を打とうとしてる。
《…ナンデ?》
……もう、疲れたんだ…自分の人生に。
「ウッシャ!! お客様一名GET!!」
そりゃよかったな……?
俺は前方から聞こえる声に疑問を持ち、目を開ける。
「…って!?」
俺は目の前で起こった出来事に驚き、フェンスの内側に飛び退く。
「…いや、そんなに驚かなくてもいいじゃねぇ?」
俺の目の前には、目元まで隠す真っ黒なヘルメット、そこからはみ出る肩までのびた白髪、薄汚れた黒い作業服に真っ白な鶴嘴を持った男が………浮いていた。
青狸ロボットがいた時代じゃあるまいし、この時代に人が浮いてたら誰もが驚くだろ!?
てか、その気味悪い格好で十分驚ける!
「お、お前誰だよ!?」
「ん? 俺か? 俺はこう言うもんだ」
俺が聞くと、その男は作業服の胸ポケットから、所々折れ曲がった白い紙を取り出し、俺に渡してきた。
そこには…
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(株)自殺屋
日本支部・社長代理の代理
安全 第二
(あんぜん ダイジ)
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「自殺屋? …怪しい工事現場作業員じゃなくて?」
目の前に浮いてる男は、満足そうな笑みを浮かべた。
「死にたい! 逝きたい! 殺されたい! 自殺屋は自殺願望のある方に、満足のいく自殺を提供しますッ!」
手に持った鶴嘴を俺に向け、自慢気に話す男に俺は呆れていた。
「…ついでに君は、その紙に触れた時点で契約完了してるから♪」
その男が俺から名刺らしき紙を取り上げると…
「なっ!? なんで印が!?」
その紙には、俺の親指あった所に赤い親指の印がしっかり残っていて、裏側には『契約書』と書いてあった。
「んじゃ、これから一週間よろしくな! …いい夢見ろよ!!」
柳沢〇吾風のセリフを言うと、その男は一瞬で目の前から消えてしまった。
「…な、なんだったんだ?」
目の前で起こったことが信じられない俺は、飛び降りる気が失せ、おとなしく家に帰ることにした。
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一人暮らしをしている俺が、自分の家の扉を開けると…
「ウッス! 俺、これからここに世話になることにしたかブァッ!?」
とりあえず、いきなり現われた黒ヘル男(黒いヘルメットをかぶった男の略)を一発殴ることで、今日のストレスを解消することにした。
玄関から二、三メートル先のリビングまで吹っ飛んだ黒ヘル男は、倒れて……ない!?
「…フフフ、復活!! …そういやお前、『漢の聖書』をどこに隠してる? ベッドの下にも無かっゾギャブ!?」
後ろから聞こえた声に、俺は反射的に後ろ回し蹴りを食らわせる。
予定通りクソヘル男の顔面は、玄関横のコンクリにしっかり埋まっていた。
「……まさか、あの本棚にカモフラージュされデブァ!?」
……訂正する。
この、黒き帝王並みの生命力を持ったクソヘル野郎を、徹底的に伸すことで、今日のストレスを解消することにした。