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32.終幕

3,400件超えありがとうございます

部屋には、テラスの喫茶店で給仕してるおにーさんがいて

円卓に座った私たちに、執事さながらの美しい所作で

給仕をしてくれた


「まずは、お疲れ様を

 そして、アンに最大の感謝を」

そう言ってカップを持ち上げた人に驚きつつ

私は頭を下げた


私が、泣いて、意識朦朧となっていたことを

伝えられ、おじさんは一応全員に話をするため

あとで言うと言われたことを話をしたらしい


子供たちは、今は、まだ理解できないかもしれないが

現実しか残されていないのだから

その内理解するだろうと、切り捨てた口調なのは

まだおじさんが怒っているからなのかもしれない


育て方をまちがった使役獣はまさに獣になる


珠から生まれるため使役獣と呼ぶだけで

ほとんどは、元がある生物

私のラムムンは「スライム」という魔物の一種

同じように自然界でもスライムがいて

ラムムンが共食いしてるのを見て

いいのかなぁと思ってたけど、

満足そうなので、口出しはしなかった


しかし、珠から生まれる

人の手を介して生まれるということは

人を知りすぎて普通ならば、人を忌避するものであっても

近づきたがり、そして傷付けずにはいられなくなること


主がないということは、理性がなくなるということらしい

人恋しいは、スライムなら、人を取り込むということで

満たそうとするだろう


ということ

だから、結局は攻撃してくる「脅威」となる


自然には離せない、誰かの使役獣にもできない


だから、吸収が一番いい選択だった


ラムムンが成長する一環にもなるのだから無駄にはならないと

説明された


他の選択ならば、子供たちの手で、自分の使役獣を殺させるということを

させるつもりだった

そう先生方に言われてぞっとした


徹底的な、スパルタ教育であり

勝ち負けがある世界だから

こういうところもなぁなぁにせず厳しく対処していく


そういう姿勢が見えて、背筋が伸びた


おじさんは、言葉を続けた


ああいう事件が表立ったら、

使役獣使の信頼と信用が失墜すると言われた


先生からは、学校も護ってくれたと言われた


だから、「感謝」なんだろう


「将来、君は、きっと立派な使役獣使となるだろう

 よく学び、良く育て、卒業後、

 王城にあがるなら、推薦できるだろう」

おじさんは、そう言って、握手をしてくれた


みんな、一言ずつ、私に、言って

部屋を去っていった


やさしい言葉、厳しい言葉、慰めの言葉

いろんな言葉があった


だけど、誰もが私のことを考えて、

堕落することなく、行きたい道へと進めるようにと

背中を押してくれているのを感じた


ラムムンは、山先生に褒められて大いに照れてた


そして残されたのは、私とラムムン、そして学長先生


「そなたが苦に思うことはない」

そう学長は言う


「私は、全生徒の様子を常に見ている立場だ

 そして、私は、君が、私の部屋に落ちてきてくれたことを

 今ほど嬉しく思ってることはないんだよ」


そう言って、ぎゅっと抱きしめてくれた


彼は見ていた

アンが、人がいやがることでも、自らがやりたいことならば

それを楽しそうにやっていることを

使役獣とよい関係を築けていることを


だから、よいと言って抱きしめてくれた


「そのままであればいいんだよ、アン」

すべてを包み込んでくれる肯定の言葉に

私は泣いた


大いに泣いた

泣いて、泣いて泣きやんだら、学長は私に言った


「もう少しお友達をつくる努力をしてみればいいね

 ほら」

そういって、扉を示された


友達を作らなかったから、連絡が来なかった

友達がいなかったから、危険を回避できなかった

そう言われてるんだ

映像で、見せられたことにより

私は、みんなが行き先を知ってること

一部の人は雨が降ることを知っていた


そういう世界から私は取り残され、そして、自ら孤立へと進んで行った

もし、話しかけていたら、違っただろう

あの時、馬車で一緒になった子と一緒に行けば違ったかもしれない

そんなもし、がいっぱい浮かんでくる


雨の後、いっぱい話しかけられたのに

私は誰かと行く選択肢をしなかった

自分を、ラムムンを過信してた結果だった


だから、学長は、お友達を作りなさい

自分の過ちを正し

情報を共有できる友を作りなさいって言ってくれたんだ


少し開いた扉から覗いていたのは、あの少年

リタイア宣言を出してくれた

男子グループの少年だった


「あ・・・あの・・・僕・・・」

すいません、と小さな体を、さらに小さくさせていた


「かまわない、入っていらっしゃい」

学長はそう言って彼を招き入れた


「ユグと、いいます」

ぺこりと頭を下げたユグくんの目の下は

まっくろなくまができていた


眠れなかった、そう顔にかいていた


学長は、彼に話しかけていた


ユグくんは、あのグループの中では

ちょっと異質な存在

日本でいうとパシリ的なポジションの子


彼等とは、もともとの友人で

新しい友人関係を築けず、

あのグループにいたことを話してくれた


彼らが嫌いなわけではないけど

レベル違いなのは自分でも解っていて

だけどそういう扱いされるのが辛かったと

話してくれた


しかし、あの時、彼はアンに使役獣をけしかけることはなかった

だめだよ、と言っていたのをアンは映像で見た

だから、アンは、彼に少なからず好意を抱いていた


「勇気を振り絞り、連絡をし、すべてを助けたいと行動したこと

 心はまだ弱い、それでも、目をそらさなかったことを評価しよう」

と学長は言った


彼の使役獣は心配そうに、彼の周りを飛んでいる

使役獣にそんなに心配させちゃ駄目だよ

でも、今日は人のこと言えないぐらい心配させちゃったかも


「見つめなさい」

学長はやさしくそう言った

ぱちりと、精霊の目が一斉に瞬いた


「君の使役獣が目の多い精霊であるように

 すべてを見つめて、状況を見極め

 そして、行動できるようになさい」


「は・・・はいっ」

ぎゅっと、つぶれそうなほど彼は、彼の使役獣を抱きしめる

使役獣は苦しそうだけどどこか嬉しそう


もきゅっきゅっと鳴く使役獣に彼ははっとしたように

私を見た


え・・・何?


「僕じゃだめですか?」


え・・・何が駄目なんですか?


学長を見ると、ちょっとにやにや笑ってる


「な、何が?」

ラムムンも、なんか、面白そうな雰囲気を放ってる

二人してもう、なんなのよ


「僕と、友達になってください」

手を出して、頭をぺこりっと下げた


うぉぉぉぉぉ、なんだろうこれ、

お友達というより、告白チックで照れるー


スライムだからといって、

異世界人だからといって

積極的に友達を作らなかった自分にも

問題があったみたいだった


さばさばしてると思ってたし

別に、グループ学習とかで組みたくないと言われた覚えもないけど

そういう関係だけじゃなくて


私にも一歩踏み出す勇気が必要だったんだ

彼は、今、そうしてる


「こちらこそ、よろしくお願いします」

そっと彼の手を握る

ラムムンがでろんっと、その手に乗っかってきた


ちょっと重いですよーラムムン

精霊ちゃんもふわんとその手にのった


う、軽くてうらやましいかも


異世界にきて、半年の本日、

私、紺屋 杏子ことアンに友達ができました

これにて閉幕です

肩肘張って一生懸命なアンちゃんの本当のスタートはここから

折角の学園生活、勉強ももちろんですが

友情もそして恋も花開かないとなのですヨ

みんなもがんばれー♪ 明日から後日談などなどアップありますので

申しばらくおつきあいをばー

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