31.事の重大さ
「退学、永久追放だ」
彼らをじろりと見る
長々と、名前と使役獣が呼ばれ、泣き、崩れ落ちていった
親に縋る子、その結果を飲み込めない一部の親
一人、静かに挙手をした父親がいた
「発言を許可する
それと、そこ、静粛に」
「それとも、今すぐ退室するかね?」
そう言われ、静かにしていた親たちが抑え込んだ
醜い、とは思わない、退学って言われたら
私も、またいやだって泣いてしまうかもしれない
「アンさん、だったね」
立ち上がった誰か父親はそう話しかけてきた
「はい」
私も立ち上がった
「ありがとう」
にこりと、やわらかな目をされた
始まりのあの険しさはもうない
かっこいいなぁって思っちゃうほど、
毅然としてる男性だった
「愚息に代わってお詫びを申し上げる
使役獣使として、この度の問題点を君に伝えてもいいだろうか」
「はい、お願いします」
退学は、少し行きすぎな気がする・・・と私は思ってた
だから、それは、勘弁してあげてーと言おうと思ってたんだから
だって、ラムムンの中には、まだクラスメイトたちの使役獣がいるんだから
まだやりなおしはきくよね
「まず、君のスライムに、その使役獣を吸収してもらいたい
愚息や、その他の愚かな生徒たちに理解をさせるために」
そういうと、彼は、裁判官や先生の方を見る
全員が、静かに深くうなずいた
「いいん・・・ですか?」
今なら、まだどうにかなるよ
ラムムンにがんばって出してもらうよ
もし暴れても、先生たちがいるからきっと平気だよ
そう思いながら私は言った
「いいのだ、あとで説明するが
まず、この愚か者たちに、未来がないということを
理解させなくてはならないからな」
そして続けて言う
「君には少し、酷なことをさせてるかもしれないが
優しさだけでは、使役獣使にはなれない
今、試練を受けてほしい」
そう言われたら、もう私には断る言葉が見つからなかった
美しく、立派な使役獣が、私を鋭い目で見ている
だけど、それは、凛として美しいたたずまいで
私のようにあるべきだ、と使役獣本人が言っていて
体現してくれてるようだった
「はい」
私は、返事をする
そして、クラスメイトたちを見る
お願い、やめて、そう、ほとんどの子の顔に書いてある
私の試練なら、その顔を覚えておく
「ラムムン、吸収!」
私は、言った
いやぁぁっという悲鳴があがる
どんどんと形が、姿が見えなくなる使役獣
彼らと同じく私の頬も視界も涙でびちょぬれになっていく
ごめんって謝ってしまいたくなる自分を叱咤する
ごめんじゃないんだ
ラムムン、ありがとうなんだよ
禁止されている、使役獣をけしかけ、その勝負の行く末なんだ
私が負けたら、ラムムンをちゃんと育てられなかったら
いつか、ラムムンはそういう運命になり
私も退学になったり
命がなくなってしてしまう
ほんとうに、責任の重い役目なんだ
だから、将来有望で、いただけるお金が多いんだ
いつの間にかに閉廷していたらしい
私の周りには、学長を含む先生方、
数人の裁判官、そしてあのおじさんがいた
「休憩室へ行きましょうね~」
クオン先生の間延びした声や
やわらかく握られた手の暖かさにほっとする
ラムムンはいつの間にかに私の左肩の定位置で座っていた
そっと頬を寄せるとラムムンもそっと寄り添ってくれた
ありがとう、そして、ごめんね
ラムムン
かっこいいですアンちゃん
ううっ(涙)
終わりまであともう少しになってしまいました
おつきあい頂きありがとうございます




