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29.よびだし

「アーン、先生だよー」

おばさんが、厨房をのぞいて、大きな声で呼んでくれた

現在戦争中の厨房

大声出さないと、聞こえません


うーん、正直なところ

この時間は避けてほしかったなぁ


「行け、そして、早く帰ってこい」

いつもは温厚なおじさんも、厨房のこの戦争時間は言葉少なく荒っぽくなる

アイアイサーじゃないけど、はいっと返事して、

入り口に行くといたのはクオン先生だった


「おはようございます~、アンさん

 いいにおいですね~」

いやいや、そんなゆっくりしないでください

おいしいにおい=料理中なんです


「おはようございます、クオン先生

 料理中なので」

というと、いいですねぇ~とかのんきです

うわーーん空気よんでー


「ご用件は?」

「ああ、そうでした、明日お時間は大丈夫でしょうか?」

もうこっちから聞いちゃいます、いつまで経っても進みそうにないんだもん


「はい、特に問題はないです」

有ったとしてもキャンセルして、こっち優先だよね

いつまでも人の使役獣持っておきたくないし、向こうだって心配してるだろう

それに、どうなるか、いろいろ決着つけてほしい


「では、明日、学長室に出頭してください」

「あ、はい・・・」

い・・・行くのは行きますが出頭ってなんか犯罪者気分


「学校の始まる時間でいいですからー

 それと、ここでご飯って食べられますか?」

出頭っていうことばに私はぐらぐらしてるのに

先生はどこ吹く風、出てきてねっていう意味ということにして

食堂をご案内して私はすぐさま戻りました


遅いって言われたけど

文句はクオン先生に言ってください


なんでこの手のかかる、二度焼きパンこと

卵のせパンの時にくるんですか・・・先生・・・


さーてがんばりますかー

小さな窯の中に入れる板の上に所謂五枚切りぐらいの厚さのトーストを一気に並べる

すべてのパンにバターをぬりながら真ん中をすこしへこませて、

生卵の黄身をそこにいくように狙いを定め

テンポよく割り入れる


そして、塩と香草をさっとふりかけおじさんにバトンタッチ

おじさんは、その板を窯の中にさっと放りこみ

火と、すべての焼け具合を確認してる


場所によっては、ちょっとこげめの多いかりっとしたパンと

ほっくほくに焼けた卵

とろっと半熟なもの

そんな感じでなので

お客さんも、焼きあがったものを持って食堂にはいったら

自分の好みのを見極めて、さっさと取っていく

あの連携プレイ、むしろ野獣具合はすごい

ご飯に対する情熱は、どの世界でもかわらないようです


濃いめのミルクティと、スープ

そして卵のせパンが本日のメニューです


週に一回、または二週間に一回しかしない

手のかかるメニューなんです

なんせ、三人ですべてをまわしてますから

なのにお客さんは口コミのせいなのか

どんどん増えてきて

手が足りない、従業員を増やさなきゃいけないかしら

それとも、数量限定にする?なんて

家族会議中だったりします


私が休みだから、今はまわってると言われて

かなり嬉しいんですけどね

うふふふ


さて、明日は手伝えないことが決定して

宿と食堂しめて一緒に行かなくていいかぃ?と

心配された


涙が出た

たしかに、地球でいた時ってこういう問題が起こった時

親と一緒に行くだろうしね


だけど、おばさんは、どんなに大事にしてくれてても

私に対して責任をとらなきゃいけない立場じゃない

保護者じゃないんだ

それに、使役獣を持ってる人じゃないから

本当に部外者になってしまう


だから、気持ちだけで嬉しい

がんばってくるって、当日を迎えた


学校の前に行くと

豪華な馬車が何台も入り口に止まってました

そうそう、これこれ馬車のイメージってのは


だけど、こんなものがあるってことは

外部から、お偉いさんがきてるってことかな

それともクラスメイトの家の持ちものなんだろうか


そんなことを思いながら中に入っていった


1か月以上ぶりの学校は

少し懐かしい


まだ、資材課のお姉さんにも司書のお姉さんにも

テラスの喫茶店の人にも会ってない


ちゃんと会いに行きたいなぁー

もし、退学になっても遊びにきていいのかな

うう、なんかちょっと暗くなってきた

だめだめっこんなことじゃ現実になっちゃう


気持ちを入れ替えて建物の入口に入ると

ずらりと先生方が待ち構えていた


「おはよう、アン」

渋みのある声は、学長先生

久々に会うなー


「おはようございます、先生方」

私は、何度か頭を下げて挨拶をした


「君の保護者は、私となる」

あ、そっか、初めて会ったのは、学長で

かつ、いろいろ便宜はかってくれたもんね


「ただ、私は公の立場でもあるから

 アンの肩を持つことはできない

 しかし、すべてにおいて公平にすることだけは

 約束しよう」

うん、それだけで十分です


「君の使役獣はどこかな?」

初めて見る先生が聞いてきた


「ラムムンですか、出ておいで」

ここに入った時から、いやんっていう風な仕草を何度かして

今は完全に私の服の中


何度か呼ぶとしぶしぶ出てきた


「すいません、なんか、嫌がってるんです」

恐がってるわけではない

ただ本当に、嫌がってる


「大きいな」

目を見張られた


「そう・・・なんですか?」

比較してないからわかりませんが、

いろいろ食べちゃってるからかもしれません

食べた分だけ比例して大きくなるし


吐き出すとちょっと小さくなるけどね


まぁ、他の人の使役獣持ってる状態だから

そうなるのかもしれない


「預かってもいいかな」

うーん、それはちょっといやかな

ラムムンがいやってはっきり言ってる


私は首をよこに振った


「本人が嫌がってるので私から離れませんよ」

こうなったら梃子でも動かない


「まぁ使役獣はそういうものが多いな

 では法廷台の指定の場所にいてもらうことはできるかな?」

法廷台とか言われちゃった

今から始まるのは裁判なのかな


アリスとか某魔法少年みたいな弾圧裁判じゃなきゃいいなぁ


「見てみないと約束はできませんが

 たぶん、できると思います」


「固くならなくて良い

 アンだったね」

はい、と頷く


「君の使役獣が、彼らの使役獣を捕食している件については

 加害者側だ

 しかし、そうなった原因は、被害者にあると私たちは思っている」

まぁ、ぺっしなさい言っても

今でもぺっしないもんね


使役獣は一定距離離れてなきゃ喧嘩するとかあるから

近付けないようにって言ってたのに

まあ近くにいたから大丈夫ってことかな


「今のように、しっかりと状況説明 

 そして自分の意見を述べてくれ

 私たちは聞く耳を持っている」


ああ、よかった弾圧裁判じゃない

だから、先生方は私に会いに来てくれたんだ


そう思うと、ほっとした


「君はあちらの門を」


「私たちは、上の門を通る」


「そして、彼らは、向こうの門から入ってくる」

先生がたは、口ぐちに説明をはじめた


時間がない、そう言ってるみたいで

手にどんどん汗をかいてきた


かぁんっかんと、鐘が鳴った

私の長い長い一日のはじまりを告げる鐘の音だった


どうなるアンちゃん、負けるなアンちゃん

ラムムンかわいいよ、はぁはぁ

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