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クロの戦記 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです  作者: サイトウアユム
第7部:クロの戦記

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第19話『宣言』その4

 翌日――クロノは通路の途中で立ち止まった。

 アルフィルク城の通路だ。

 何度か通ったことがあるが――。


「……ひどい状況だな」


 視線を巡らせ、小さく呟く。

 記憶にある通路はもっと豪奢だった。

 等間隔に台座が並び、その上に美術品が載っていた。

 今は何もない。

 誰かが盗んだか、適当な理由を付けて持ち出したのだろう。

 台座だけが延々と並んでいる。

 一国の城とは思えない殺風景さだ。

 だが、ものは考えようだ。

 これなら盗まれる心配をしなくて済む。

 その分だけ警備兵を治安維持に回せる。

 いいことだ。

 そんなことを考えて笑う。

 目の前に広がる光景は帝国の現状を表している。

 しかも、立て直すのはクロノ達だ。

 考えただけに憂鬱に、いや、憂鬱を通り越して吐きそうになる。

 唯一の希望がアルコル宰相というのも酷い。

 原因を作ったのがアルコル宰相ならば、立て直すのもアルコル宰相だ。

 マッチポンプもいい所だ。

 ブラックすぎてジョークにもならない。

 いけない。

 ネガティブな気分になっている。

 体調が悪いせいだろう。

 ネガティブな気分を振り払うように軽く頭を振ったその時――。


「……クロノ様」


 背後から聞き覚えのある声が響いた。

 肩越しに背後を見ると、レイラが近づいてくる所だった。

 クロノはレイラに向き直り――。


「どうかしたの?」

「いえ、お加減が悪そうでしたので……」


 クロノが問いかけると、レイラは伏し目がちになって答えた。

 チラチラと視線を向けてくるので、それほど体調が悪く見えるのだろう。

 もちろん、クロノも自覚している。

 鏡を見て、顔色が悪いな~と思ったほどだ。

 実際にまだ熱っぽいし、体もあちこちが痛い。


「死にそうな目に遭ったばかりだからね」

「やはり、休まれた方が……」

「僕もできれば休みたいけど――」

「では!」

「これでも、皇軍の指揮官だからね。そうもいかないよ」


 レイラが言葉を遮って言い、クロノは苦笑した。

 できればレイラの言葉に甘えて休みたい。

 本当の気持ちだ。

 だが、どうしても無理をしなければいけない。

 下手に休んだらあらぬ噂が立つだろう。

 帝国がもう少しまともな状況ならば噂など何の意味も持たない。

 それこそ蚊に刺されたほどのダメージだ。

 しかし、今は違う。

 今、クロノ達――皇軍は辛うじて帝都に居座っている状態だ。

 そんな状況で噂が立てばよからぬことを考える輩が出てくるだろう。

 噂一つが致命傷になりかねないのだ。


「仕事はきちんとこなさないと」

「……分かりました」


 クロノが大仰に肩を竦めると、レイラは小さく微笑んだ。

 困っているかのような微笑みだ。

 本当に、心配を掛けてばかりで申し訳ない。


「じゃ、行こうか?」

「あの!」


 クロノが踵を返そうとすると、レイラは声を張り上げた。

 思わず動きを止める。


「どうしたの?」

「あの、本当に私なんかがいいのでしょうか?」

「レイラは皇軍の幹部なんだから大丈夫だよ」


 レイラがおずおずと切り出し、クロノは安心させるように耳を撫でた。

 不安が和らいだのか。

 ホッとしたような表情を浮かべる。

 しばらくして手を放す。

 すると――。


「あ……」


 レイラは小さな声を上げた。

 それが恥ずかしかったのだろう。

 恥ずかしそうに頬を朱に染め、再び伏し目がちになってしまう。

 思わず口元が綻ぶ。


「今度こそ、行こうか?」

「……はい、クロノ様」


 レイラが間を置いて頷き、クロノは踵を返した。

 長い通路を抜け、謁見の間の前に辿り着く。

 扉は閉ざされ、その前には二人の男が立っていた。

 白い軍服を着た男――近衛騎士団の団員だ。

 所属は何処だろうと考えたその時、一人がこちらを見た。

 驚いたように目を見開く。

 もっとも、それはクロノも同じだ。

 サイモン・アーデン――軍学校の同期生だ。

 サイモンはもう一人の男に視線を向け、言葉を交わした。

 短いやり取りだ。

 それが終わると、サイモンはこちらに近づいてきた。

 クロノの前で立ち止まり――。


「よう、クロノ。久しぶりだな」

「うん、久しぶり」


 挨拶を交わし、会話が途切れる。

 当然か。軍学校の同期生と言ってもそれほど仲がよかった訳ではない。

 いや、相対的に見れば仲がよかったと言えるだろうか。

 卒業後にやり取りが全くなかったことを考えるとやはり当然という気はする。


「何か言えよ」

「近衛騎士になれたんだ」


 ああ、とサイモンは短く返事をして軍服を摘まんだ。


「親征の後だから三年前か。あの時、第十二近衛騎士団が大損害を被っただろ? って、お前はその場にいたから知ってるのか」

「まあ、ね」


 クロノは苦笑した。

 親征――たった三年前のことなのにもっと昔の出来事のような気がする。

 レオ、ホルス、リザド――大勢の部下を失った。

 あれが転機だった。

 死んでいった部下のために、自分のために理想を掲げる決意をした。

 彼らが今のクロノを見たら何て言うだろうか。

 いや、まだ考えるべきじゃない。

 先はまだまだ長いのだから。


「どうかしたのか?」

「いや、何でもないよ」

「……お前が何でもないって言うんならそれでいいけどよ」


 サイモンは今一つ納得していないような表情だ。


「あ、何処まで話したっけ?」

「第十二近衛騎士団が大損害を被ったって所まで」

「そうそう、その時に臨時で団員の募集があったんだが、運よく合格できてな」

「よく合格できたね」

「お前な」

「いや、だって、サイモンは成績が――」

「分かってる」


 サイモンはクロノの言葉を遮って言った。


「確かに俺はお前と一緒で補習の常連だった。けど、実技はそれなりだったんだ」

「それは覚えてるよ」

「ならいい」


 言葉とは裏腹にちょっとムッとしたような口調だ。

 確かに座学の成績は悪かったが、実技の成績は上位に食い込んでいた。

 だが、サイモンは名家出身という訳ではない。

 第十二近衛騎士団を早急に立て直すという理由がなければ入団できなかっただろう。

 腹の虫が治まらなかったのだろうか。

 さらに言葉を続ける。


「大体、俺よりお前の方が有り得ないだろ。軍学校の成績は最下位だったのに事件の中心にいるんだからよ」

「別に事件の中心って訳じゃないよ。そもそもの発端はお家騒動なんだし」

「お家騒動な」


 サイモンは顔を顰めた。

 自分で言っておいて何だが、クロノも同じ気持ちだ。


「お家騒動で片付けるにゃ被害がでかすぎだ。ああ、お前を責めてる訳じゃないんだ。なんだかんだ俺もティリア皇女の下に馳せ参じようとしてたしな」

「そういえば第十二騎士団は――」

「土壇場でティリア皇女に付いた。俺がティリア皇女の下に馳せ参じたいって言い出したせいなんだが……」

「そんなことがあったんだ」

「あとはお前に借りを返しておこうと思ってな」

「借り?」

「軍学校の演習で世話になったからな」


 クロノが問い返すと、サイモンはムッとしたような口調で言った。

 多分、照れ隠しだ。

 耳が真っ赤になっている。


「まあ、だから、気にすんな」

「何のこと?」

「ガウル殿のことだ」


 ああ、とクロノは思わず声を上げた。

 突然、何を言い出すのかと思ったら心配してくれたのか。

 反応が薄かったせいだろうか。

 サイモンが訝しげな表情を浮かべる。


「やけに冷静だな」

「予感があったからね」

「お前は実戦経験者だもんな。そういうのは分かるか」

「分かるってほどじゃないよ。ただ、何となく予感がしたってだけ」

「……立派な最期だった」


 え? と思わず問い返す。


「だから、ガウル殿だよ。立派な最期だった。騎士たる者、こうあらねばって最期だった」

「多分、ガウル殿は騎士として最期を迎えた訳じゃないよ」


 クロノは小さく呟いた。

 ふと子どもができたと告白された時のことを思い出す。

 あの時、ガウルは子どものために命を懸けようと決めていたのだろう。

 そのために皇軍に付いた。

 もちろん、葛藤はあっただろう。

 彼は名家出身だ。

 家名に泥を塗り、父親とも敵対することになる。

 それでも、子どものために決断したのだ。

 それを騎士という言葉で片付けてしまうのは冒涜に思える。


「お前がそういうんならそうなんだろうな。けど、俺は違う受け取り方をしたんだ。だから、気にするなって言ったんだ」

「ああ、そういうこと」

「そういうことだ。ったく、鈍いな」

「サイモンが回りくどすぎるんだよ。話も上手く繋がってないしさ。初めからガウル殿は僕のために命を懸けた訳じゃないって言ってくれればよかったのに……」

「俺なりに気を遣ったんだ」


 サイモンは拗ねたような口調で言った。

 再び会話が途切れ――。


「もっと話しておけばよかったよ」

「そうだな」


 クロノがぽつりと呟くと、サイモンはしんみりとした口調で言った。

 彼にも話をしておけばよかったと思う相手がいるのだろうか。

 今更ながら彼が軍学校を卒業した後、帝都の警備兵になったことを思い出す。

 帝都攻略戦で警備兵にも死傷者が出たと聞く。

 きっと、サイモンの知り合いもその中にいたことだろう。

 もしかしたら、クロノの知り合いも――。

 帝都の警備兵に恨みはない。

 ただ、立場が違った。

 それだけの理由で殺し合った。

 やはり、覚悟はいくらあっても足りないのだ。

 ところで、とサイモンが口を開く。

 雰囲気が暗くなったのを察してくれたのだろうか。

 レイラに視線を向ける。


「彼女はお前の……」

「……」


 サイモンが途中で口を閉ざす。

 何かが動いたような気がして視線を落とす。

 すると、サイモンは小指を立てていた。

 お前の彼女か? と言いたいのだろう。


「そうだよ」

「そうか。よかったな」

「どうして、安心したような表情を?」


 サイモンがホッとしたような表情を浮かべ、クロノは思わず理由を尋ねた。


「軍学校卒業時点で十年は清い体が続きそうだと思ってたから、それでだ」

「あんまりな評価」


 思わず顔を顰める。

 実際は十年どころか一ヶ月余りだった訳だが、これは黙っておく。

 ふと疑問が湧き上がる。


「色々と変な噂が立ってるはずだけど……」

「小耳にゃ挟んだが、信じちゃいないさ。お前はそういうヤツじゃないからな」

「……ありがとう」


 ごめん、とクロノは心の中で呟いた。

 もし、ティリアと関係を持っていることを知られたら評価が地に落ちそうだ。

 黙っておくべきだろう。

 帝国は混乱しているのだ。

 その時――。


「「やっほ~、クロノ様!」」


 背後から声が響いた。

 アリデッドとデネブの声だ。

 最初に衝撃、次に柔らかな感触が二の腕に当たる。

 左右を見ると、二人が腕に抱きついていた。

 サイモンが顔を顰める。


「その二人は何だ?」

「何だとは失礼な! あたしらは姫様が本懐を遂げるまで帝国軍と戦った――即ち、英雄みたいな! 頭が高いみたいなッ!」

「あわわ! 無礼打ちされてもおかしくない発言だし!」

「無礼打ちなんてできる訳ないみたいな」

「その心はみたいな?」

「さっきも言った通り、あたしらは英雄みたいな! さらに第十三近衛騎士団に所属している士爵みたいな! 末席とはいえ貴族だし! さらにさらにあたしらはクロノ様の愛人みたいな! だから、えへへ、今の発言は大目に見てくれると助かりますみたいな」


 デネブが尋ねると、アリデッドは捲し立てるように言った。

 だが、流石に調子に乗りすぎたと思ったのか。

 最後に愛想笑いを浮かべた。

 何と言うか、相変わらずだ。


「クロノ、お前……」

「話せば分かる」


 サイモンが呻くように言い、クロノは手の平を向けた。


「誤解だよ」

「そう――」

「いや、誤解じゃないし。あたしらはクロノ様の愛人だし。というか、クロノ様はあたしらの他にも愛人を多数囲ってるみたいな」

「別にクロノ様を追い込もうとしてるんじゃなくて、しっかり自己主張するべきと思っているだけみたいな」


 サイモンの言葉をアリデッドとデネブは遮って言った。


「お前――」

「色々あったんだよ」

「それは分かるが……。もっと軍学校時代の延長線上みたいな変わり方をしろよ」


 今度はクロノが言葉を遮る。

 すると、サイモンは溜息交じりに言った。


「遠くに来たなってつくづく思うよ」

「俺もだよ。遠くに行っちまったってつくづく思うよ」


 サイモンは呻くように言い、再び溜息を吐いた。

 つられてクロノも溜息を吐く。


「……ベティル団長、大丈夫だよな?」

「大丈夫じゃなかったらサイモン達に警備を任せないと思うよ」

「分かってる。けど、万が一があるだろ、万が一が」


 クロノの言葉にサイモンはムッとしたような表情を浮かべた。


「どんな処罰でも受け入れそうで心配なんだ」

「その時は止めるよ」

「頼んだぜ」


 そう言って、サイモンは踵を返した。

 そして、元の位置に戻る。

 もしかして、それが言いたかったのだろうか。

 サイモンが上司の心配をするとは――。

 いや、彼は短慮で気分屋だったが、冷淡という訳ではなかった。

 二人はきちんと信頼関係を醸成したのだろう。


「ところで、いつまでここに突っ立ってるのみたいな?」

「早く用件を済ませちゃいたいみたいな」

「もう少し集まっ――」

『大将!』(ぶも~!)


 背後から響いた声がクロノの言葉を遮る。

 肩越しに背後を見ると、副官が歩み寄ってくる所だった。

 副官だけではない。

 ケイン、フェイ、シオン、ロバート、スー、ベア、ブラッドの姿もある。

 皆に向き直ろうとするが、できない。

 アリデッドとデネブに腕を掴まれているせいだ。


「二人とも離れて」

「いや、ここはせーので向き直るみたいな」

「それがいいし」

「まあ、いいけど」


 嫌な予感がしたが――。


「「せーの!」」


 ゴキという音がした。

 二人が逆方向に回転したせいだ。

 予感が的中した。

 かなり痛い。

 アリデッドは慌てふためいた様子でクロノから離れるとデネブを指差した。


「デネブのせいですみたいな!」

「お姉ちゃんの裏切り者!」

「は? 裏切ってないし!」

「むしろ、お姉ちゃんのせいみたいな!」


 デネブもクロノから離れ、二人はギャーギャーと言い争いを始めた。

 クロノは腰を叩きながら副官達に向き直った。


『大将、大丈夫ですかい?』(ぶも?)

「多分、軽傷」

『あっしが気にしてるのは体調のことですぜ』(ぶも~)

「昨日よりは――」


 ゴホゴホッ、とクロノは咳き込んだ。

 なかなか咳が止まらない。


「……クロノ様」


 レイラが歩み寄り、背中を撫でてくれた。

 ようやく咳が治まる。


『休んでた方がいいんじゃありやせんか?』(ぶも?)

「ミノさん達に比べれば軽傷だよ。ミノさん達こそ――」

「嫌であります!」


 フェイが声を張り上げた。

 ガチャという音が背後から響く。

 肩越しに背後を見る。

 サイモンともう一人がこちらを見ていた。

 ごめん、と口を動かす。

 すると、サイモンは溜息を吐くような素振りを見せ、顔を背けた。

 改めてミノ達に向き直る。


「謁見の間の前だから静かにね」

「クロノ様は私達が何のために命を懸けたのか分かってないであります」

「何のためって、皇軍のためだよね?」

「名誉のためであります」


 むふー、とフェイは鼻息も荒く言い放った。


「そうでありますよね、シオン殿?」

「いえ、私はクロノ様の――」

「そうでありますよね?」

「あ、あの、揺らさないで下さい。まだ膝が痛くて」


 フェイが腕を掴んで揺さぶると、シオンは杖を持つ手に力を込めながら言った。


「フェイ、止めてあげて」

「了解であります」


 クロノの言葉にフェイは従った。


「名誉のためか」

「もちろん、クロノ様への愛と忠誠もあるであります」

「それを先に言って欲しかった」

「次からはそうするであります。何にせよ、これでムリファイン家は再興したも同然であります。やはり、あの時の選択は正しかったであります」


 ほぅ、とフェイは溜息を吐いた。


「セシリー殿に見せてやりたかったであります」

「悪いけれど、妹はしばらく安静にしていなくてはいけなくてね」


 フェイがぼそっと呟き、ブラッドが肩を竦めた。


「残念であります」

「妹に伝えておくよ」

「お願いするであります」

「ああ、承知した」


 そう言って、二人はがっしりと握手を交わした。

 気持ちは擦れ違っているが、黙っておくべきだろう。

 ケインに視線を向ける。


「ケインはどう?」

「見ての通り、ぴんぴんしてるぜ」


 ケインは溜息交じりに言った。

 いいことだと思うが、シルバニアを出てくる時に何かあったのだろうか。

 まあ、これも深く突っ込まない方がいいだろう。


「ロバートさんは?」

「見ての通りです」


 ロバートは困っているかのような表情を浮かべた。


「スーは?」

『オレ、元気。クロノ、心配』

「大じょ――」


 大丈夫と言おうとして咳き込む。


『クロノ、無理シスギ。仕事、終ワル、ユックリ休ム。オレ、看病スル』

「その時は頼んだよ」

『オレ、嫁、当然』


 スーは誇らしげに胸を張った。

 その時、ベアがおずおずと口を開いた。


「クロノ様、本当にお、じゃなかった、私が参加していいんですかい?」

「シフはシルバニアにいるからね。その名代ということで」

「それは分かるんですが……」


 ベアは気まずそうに頭を掻いた。


「何か問題が?」

「いやね、シフの副官みたいなポジションに就いてますが、自然とそうなっただけでこういう――国事行為ってんですかい? には慣れてないんですよ」

「僕も初めてです」


 クロノは改めてミノ達を見つめた。

 ブラッドに視線を向ける。


「ブラッド殿、貴方だけが頼りです」

「……微力を尽くします」


 ブラッドは呻くように言った。

 う~ん、とクロノは唸った。

 反応から見るにブラッドも不慣れなようだ。

 仕方がない。

 流されるまま進もう。

 恥を掻いても死ぬ訳ではない。


「じゃ、行きましょうか」


 副官達が頷き、クロノは踵を返した。

 謁見の間――その扉の前に立つ。


「クロノ、楽しんでこいよ」

「他人事だと思って」

「他人事だからな」


 サイモンがニヤリと笑う。

 すると、扉が重々しい音を立てて開き始めた。

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