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クロの戦記 異世界転移した僕が最強なのはベッドの上だけのようです  作者: サイトウアユム
第7部:クロの戦記

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122/202

第10話『叛旗』【前編】



 帝国暦四三三年十月上旬――ベティルは会議室に続く廊下を歩きながら、会議をサボる口実を探していた。

 もう宰相の職を辞しても良いのではないかと感じているが、体調不良を理由にするにしても段取りは必要だ。

 ベティルは調度品の前で足を止めた。

 台座の上に置かれているのは百年程前に作られたというサダル焼の壺だ。

 どのような経緯を経て、アルフィルク城の廊下に飾られるようになったのかは分からないが、地味ながらも味わい深い壺だ。

 騎士団長の仕事に専念していた頃に自分の屋敷にも飾ってみてはどうかと考えたことがあるのだが、あまりにも高価だったために断念した。

 その高価な壺に埃が薄らと積もっている。

 一週間前、アルフォートはファーナに蟄居を命じた。

 その結果がこれだ。

 ここだけではない。

 突然、ファーナという上位者がいなくなったせいで女官達は混乱しているのだ。

 もしかしたら、派閥抗争をしているのかも知れない。

 女官は貴族の娘だ。

 実家の思惑と無縁ではいられない。

 上位者がいれば渋々――あるいは実家から解放されたと喜んで――従ったかも知れないが、そうでなければ実家の思惑に従って動く。

 恐らく、軍人が孤立を恐れるように彼女達もまた孤立を恐れているのだろう。

「……家に帰りたい」

 ベティルは小さく呟き、会議室に向かって歩き始める。

「ベティル宰相閣下、お疲れ様です」

「……ご苦労」

 近衛騎士が扉を開け、ベティルは会議室に入室した。

 ボウティーズ財務局長、ブルクマイヤー尚書局長、ラルフ・リブラ軍務局長の三人は自分の席に着いている。

 ベティルは無言で自分の席に着いた。

 イスの背もたれに寄り掛かり、視線を巡らせる。

 ボウティーズ財務局長はやや顔色が悪い。

 収穫高が前年比の七割を切ったのか。

 引き継いだ闘技場の運営が上手くいっていないのか。

 どちらにせよ、ベティルには関係のないことだ。

 しばらくすると、アルフォートが入室してきた。

 アルフォートは自分の席に着き、背もたれに寄り掛かった。

「……会議を始める。ボウティーズ財務局長、報告を」

「はっ」

 ボウティーズ財務局長は静かに立ち上がった。

「まず、陛下に今年の収穫高について申し上げます。予想収穫高は前年比の七割となっておりましたが、収穫高は六割となりました」

「なッ?」

 驚愕にか、アルフォートは大きく目を見開いた。

 これにはベティルも驚いた。

 ニコルから聞いていた予想収穫高は前年比の八割、もしくは九割だ。

 義父母を通じて得た情報では九割だった。

 恐らく、実際の収穫高は前年比の九割。

 皇帝直轄領の徴税官達は前年比の三割を横領したことになる。

「しかしながら、手元の資料をご覧下さい」

 ベティルは机に置かれた資料を手に取った。

「小麦の価格は前年同月比三割増となっております。このレートで現金化すればその他の税収と併せて前年比の八割五分の税収を保てます」

 前年の税収が金貨六百万枚――作物を換金して得られる金額が金貨四百万枚、専売品や通行税などで得られる金額が金貨二百万枚だ。

 ボウティーズ財務局長のやり方ならば今年の税収は金貨五百十二万枚となる。

 だが――。

「恐れながら、陛下」

「何だ、ベティル宰相」

「ボウティーズ財務局長のやり方ならば金貨五百十二万枚を得ることができますが、我が軍は糧食を現物で支給されておりません」

 当たり前と言えば当たり前だが、軍費は金で支払われている。

 前年の軍費は糧食費を含めて二百七十万枚。

「くどい、手短に話せ」

「前年と同じ予算では兵士が飢えます。つまり、常備軍十万を維持することができないのです」

「ラルフ・リブラ軍務局長!」

「そうですな。現在のレートでは必要量の八割も買えますまい」

 アルフォートが鋭く叫び、ラルフ・リブラ軍務局長は髭をしごきながら言った。

「さらに申し上げれば……」

「ベティル宰相、まだ何かあるのか?」

「商人が買い取った金額で小麦を売ることはないでしょう」

 当たり前のことだが、商人は自分の取り分を上乗せして売るのだ。

 果たして市場に出る頃には小麦はいくらになっているだろうか。

「……ラルフ・リブラ軍務局長」

「何ですかな?」

 ラルフ・リブラ軍務局長はベティルに視線を向けた。

 嫌な目をしていると思うが、それだけだ。

「兵士はどうなっていますか?」

「そうですな。五千人ほどが退役しましたな」

「理由は?」

「そこまでは把握しておりませんな」

 ラルフ・リブラ軍務局長は髭をしごいた。

「兵士が飢えている証拠では?」

「調査しましょう」

 もし、ベティルがラルフ・リブラ軍務局長の立場であれば理由くらいは調べておく。

 だというのに他人事のようではないか。

 いや、もしかしたら、退役した兵士に興味がないのかも知れない。

 有り得そうな話だ。

 彼は帝国暦四〇〇年の内乱で軍師として功績を残すことができなかった。

 当時は領主が自分の軍を率いていた。

 領主達の思惑が絡み合う状況では軍を維持することさえ難しかっただろう。

 だからこそ、新貴族達――当時は傭兵団だが――が活躍できたと言える。

「……ああ、なるほど」

 ベティルは小さな声で呟く。

 ラルフ・リブラ軍務局長は自分の思い通りにならない兵士に興味がないのだ。

「……なるほど」

 もう一度、呟く。

 今になってようやく彼のことが分かったような気がする。

 彼はやり直したいのだ。

 自分の思い通りになる軍を率いて力を証明したいのだ。

「兵士の数が減れば飢えることはなくなるのではないか?」

 ベティルはアルフォートの言葉で現実に引き戻された。

「治安が悪化する可能性は捨て置くと?」

「そ、そのようなことは言っていない」

 ベティルが問い返すと、アルフォートは鼻白んだ。

「まともな領主であれば治安悪化を恐れ、自腹を切ってでも兵を繋ぎ止めようとするでしょう。そうなれば兵士は領主の私兵と化します」

「そのようなことはありえない!」

「我々を愚弄するつもりかッ?」

 ボウティーズ財務局長とブルクマイヤー尚書局長が身を乗り出して叫ぶ。

「お二人の気持ちなど関係ないのですよ。兵士にとっては自身の腹を満たしてくれる者こそ主人であるというだけの話です」

 二人は負の感情に彩られた視線を向けてくるが、どうということはない。

 殴り掛かってきても素手で叩き伏せる自信がある。

「ボウティーズ財務局長、南辺境はどうなっている?」

「まだ返事はありません」

「街道は封鎖したのか?」

「い、いえ、まだ返事がないものですから」

 ボウティーズ財務局長は汗を拭いながらアルフォートに答える。

「何故、封鎖しない?」

「……陛下」

「今度は何だ?」

 ベティルが声を掛けると、アルフォートは苛立たしげに言った。

「新貴族達にも都合と言うものがございます」

「国の大事だぞ?」

「彼らにも守るべき民がいるのです」

 ベティルからみれば不法を為しているのは帝国だ。

 自分達の都合で新貴族達が必死に築き上げた財を奪おうとしているのだから。

 だが、それを言ってもアルフォートは理解できないだろう。

「ラルフ・リブラ軍務局長! エラキス侯爵の身柄はッ?」

「レオンハルト殿とリオ殿、百騎の騎兵を派遣しております」

「……エラキス侯爵を押さえれば」

 アルフォートは暗い笑みを浮かべる。

 大方、捕らえたクロノを交渉の材料にするつもりだろう。

 そこには品位など存在しない。

 ベティルは溜息を吐くしかなかった。



 レオンハルトは西へと馬を進ませる。

 率いるのは第一、第九近衛騎士団の百騎だ。

 個々人の技量と騎兵隊としての練度は騎兵に特化した第五近衛騎士団に一歩譲る。

 もちろん、それを責めるつもりはない。

 レオンハルト自身が馬術の腕でブラッド・ハマル子爵に叶わないのだ。

 人馬一体――騎手が馬と一つになったかのように巧みな連携が行われることをこのように評する。

 ブラッド・ハマル子爵はこの言葉を体現したような男なのだ。

 とは言え、帝国軍という枠組みで見ればレオンハルトは騎兵としてトップクラスの実力を有するし、部下もまた上位の実力を持つ。

 そんな自慢の部下達だが、強行軍の影響で動きに精彩を欠いている。

 無理もない、と思う。

 本来であれば二週間掛かる道のりを一週間で踏破しようというのだ。

 それも護送車を壊さないように注意を払って、だ。

 無理を通せば何処かに歪みが生じるものだ。

 レオンハルトも肩にのし掛かるような疲労を自覚している。

 神威術を使えば一時的に疲労を誤魔化せるが、これは本当に最後の手段だ。

 たとえて言えば――前借りというものが一番近いだろうか。

 確かにその場は凌げるが、その負荷は後になって重くのし掛かる。

 神聖アルゴ王国で多段ロケット走法を実施した時のことを思い出して顔を顰める。

 あの時は馬が死に、レオンハルト達も死にそうな目に遭った。

「……それにしても」

 隣で馬を走らせていたリオがポツリと呟く。

「それにしてもレオンハルト殿がクロノの護送を引き受けるとは思わなかったよ。どうして、引き受けたんだい?」

「命令なのでね」

 レオンハルトは小さく溜息を吐いた。

 下馬していれば肩を竦める所だ。

 元よりクロノの護送――拘束命令に正当性があるとは考えていない。

 本来、アルフィルク城では自由都市国家群産の紙が使われていなければならなかった。

 にもかかわらず、実際に使われていたのはエラキス侯爵領で作られた紙だった。

 これはクロノが横領に関わった証拠である。

 それがアルフォートの主張だが、論理が破綻していると言わざるを得ない。

 刃傷沙汰が起きたのは凶器を作った鍛冶師のせいだと言っているようなものだ。

 しかし、命令は命令だ。

「その理屈で言うのならば、どうしてリオ殿は引き受けたのかね?」

「久しぶりにクロノに会いたかったからさ」

 リオは艶然と笑う。

 だが、その笑みの中に危うさや狂気を感じてしまう。

 これならばクロノと出会う前の方がましだったと思えるほどだ。

「でも、どうして僕らだったんだろうね?」

「自分でも気付いていることを他人に聞くものではないよ」

 自分達が選ばれたのはクロノと仲が良いからだ。

 言わば踏み絵だ。

 アルフォートはレオンハルト達にどちらの味方なのかを問うているのだ。

 少なくとも本人はそのつもりだ。

 まったく、ラルフ・リブラ軍務局長は余計なことをする、と眉根を寄せる。

 レオンハルトはただの近衛騎士団長ではない。

 皇帝に次ぐ領地を持つパラティウム家の嫡男だ。

 そんな自分が公然と皇帝の命令を拒否すれば国が割れる。

 最悪、内乱だ。

 どちらが勝つにせよ、国土は荒廃し、国力は疲弊する。

 自由都市国家群や神聖アルゴ王国が関与してくればもっと厄介なことになる。

「今回の任務をどう思うんだい?」

「正直、気の進む任務ではないよ」

 おや? とリオは意外そうな表情を浮かべる。

「私にだって情はある」

「そうなのかい?」

「そうだとも」

 嘘ではないが、事実でもない。

 パラティウム家の人間としての計算が何よりも優先される。

 もちろん、ラルフ・リブラ軍務局長はそれを理解して利用した。

 アルフォートに従ったという事実を以て帝国は一枚岩であるとアピールしたのだ。

 もう少し計算して欲しい所だがね、と心の中で付け加える。

 今回の件で安堵するのはアルフォート派の旧貴族だけだ。

 非アルフォート派の旧貴族は恐怖を覚え、新貴族との関係は破綻する。

 さらに言えば多くの軍人は今回の件で反感を抱くだろう。

 いや、自分の部下にさえ反感を抱いている者が少なからずいる。

 悪い噂もあるが、クロノは英雄だ。

 神聖アルゴ王国が侵攻してきた際には奇策を以てこれを退け、親征では多大な犠牲を払いながらも殿としての任を全うした。

 長年、敵対関係にあったアレオス山地の蛮族――ルー族と友好関係を築いた。

 そして、神聖アルゴ王国に対する工作だ。

 クロノが部下の遺体を回収するために汚れ仕事を請け負った話は美談として広まっているのだ。

 もっとも、レオンハルトはそこまで単純に考えられない。

 何しろ、極秘任務の内容が漏れているのだ。

 これで危機感を覚えないようでは指揮官失格だ。

 アルコル元宰相が意図的に情報を流出させたのか。

 それとも、別の誰かか。

 どちらにせよ、クロノの評価を高めようとする者がいることは間違いない。

「……落とし所は何処にすべきだろうね」

 レオンハルトは独りごちる。

 拳を振り上げてしまった以上、無実という訳にはいかない。

 アルフォート、引いてはその取り巻きを満足させてやらねばならない。

 酷い話だとは思うが、クロノは敵を作りすぎたのだ。

「一生帝都から出さないって所じゃないかな」

 ふむ、とレオンハルトは小さく頷いた。

 自分の屋敷から出さないの間違いではないかと思ったが、口にはしない。

 それくらいならば何とかなるかも知れない。

 仮にクロノが処刑されてもレオンハルトは力を尽くしたのだとアピールできる。

「まったく、酷い話だ」

「うん?」

 レオンハルトが呟くと、リオは不思議そうに首を傾げた。

「いや、こちらのことだよ」

 情があると言いながら、どうすれば自分の利益になるか、どうすれば被害を最小限に抑えられるかを考えている。

 これでは情などあってないようなものだ。



 クロノは侯爵邸の執務室でエレナと向かい合っていた。

 と言っても机を挟んで、だ。

「……今年の税収は『シナー貿易組合』の配当金を合わせて金貨二万九千四百枚と銀貨十枚よ。ちなみに支出は金貨四万九千とんで二枚」

 エレナは苦虫を噛み潰したような顔で言った。

「繰越金があるから赤字じゃないよ」

「そうね。繰越金と合わせれば金庫には金貨十五万九千六百二枚と銀貨十枚残るわ」

「なら問題ないよ」

 あのね、とエレナは小さく溜息を吐いた。

「金貨が二万枚近く減るのよ? 少しは慌てなさいよ」

「まあ、想定通りだからね」

 クロノはイスの背もたれに寄り掛かった。

「ったく、今なら過去最高の税収を得られるのに」

「だから、売ってないんだよ」

 周辺の小麦価格は前年同月比の三割増になっている。

 商業連合が暗躍しているせいかと思ったのだが、シオンによれば違うらしい。

 シオン――『黄土神殿』には帝国の農業に関する全情報が集まる。

 平均収穫高は前年比の九割だ。

 これを多いと見るか少ないと見るか意見は分かれるが、シオンに言わせれば小麦の価格にそこまで影響を与えないらしい。

「売らないのは分かるけど、通行税を復活させたのはやり過ぎじゃない?」

「別のアイディアが思い付けば良かったんだけどね」

 クロノは苦笑した。

 自分の領地が前年と同じ収穫高を保っていても周辺の小麦価格が高ければそれに巻き込まれる。

 商人達はクロノの領地で売られている小麦が安いと知れば買い占め、他所に持っていってしまうに違いないのだ。

 そうなれば領民は小麦の価格高騰に苦しむことになる。

 それだけは避けなければならない。

 そこでクロノは農作物に関する通行税を復活させた。

 と言ってもクロノの領地から別の領地に農作物を移動させる時だけだが。

「それにしても相場の十倍はないでしょ、十倍は」

「これなら絶対に転売できないでしょ」

「それはそうだけど……」

 エレナは口籠もった。

 要するに課税することで物流を遮断したのだ。

 これによって商業連合はカド伯爵領に小麦を運び込むのを止めた。

 いくら運び込んでも現金化できないのならば意味がない。

 まあ、クロノが把握しているだけでも相当量が運び込まれているので、しばらくしたらナム・コルヌ女男爵が交渉にくるだろう。

 関税障壁だっけ、とクロノは頭を掻いた。

 この程度の知識は残っているが、日本史の年号などはすっぽりと抜け落ちている。

「折角、丸暗記したのに……」

「何のこと?」

「何でもないよ」

「恨まれてるわよ」

「経済同盟の皆は了承してくれたし、歩調を合わせてくれたよ」

「皆じゃないでしょ?」

「……トレイス男爵以外は」

「それだけ?」

「ベイリー商会も抗議文を送ってきた」

 クロノは小さく呻いた。

 前ハマル子爵、ティナ、メルサティム男爵、ボサイン男爵は理解を示し、自分の領地でもクロノと同様の施策を採ってくれると約束してくれた。

 もっとも、ティリアが手紙を書いてくれなかったらこうも上手くことは進んでいなかったかも知れない。

 つくづく皇族の権威とは凄まじい。

「でも、結局、赤字なのよね。いっそのこと、支出を減らせば?」

「それはできない」

「何でよ?」

「開拓がようやく軌道に乗ってきたと思ったら今回の不作だよ」

「不作って言っても大したことないじゃない」

「開拓村にとっては大したことなんだよ」

 既存の村々は開墾した分と不作分が相殺するような形だった。

 だが、開拓村の畑は開墾したばかりなのだ。

「畑仕事をしていれば不作の年もあるわよ」

「皆、素人なんだよ」

 ああ、とエレナはようやく合点がいったとばかりに頷いた。

「そりゃね、何十年も農家をやっていればこういう年もあるって諦められるんだろうけどさ。素人にとって不作は大ダメージだよ」

「つまり、ダメージを受けている所に追い打ちを掛けたくないって訳ね」

「その通り」

 ここで公共事業の規模を縮小してしまったら開拓村の面々は希望を失ってしまう。

 見捨てられたとさえ思うかも知れない。

 懐具合に余裕がない時ならばいざ知らず、金庫には沢山の金があるのだ。

 金を惜しんで信頼を失いたくない。

「元々、金庫にある金は領民の財産だからね」

「アンタの金でしょ?」

「領民の財産だよ」

「……ふぅ」

 エレナは怪訝そうな目でクロノを見つめ、小さく溜息を吐いた。

「そこまで徹底すれば立派だわ。誉めてあげる」

「ちっとも誉められている気がしない」

 上から目線だ。

 それも普通の上から目線ではなく、超上から目線である。

「あれね、呆れも度を超すと尊敬に変わるわね」

「誉めてない」

「誉めてるわよ」

 エレナはうんざりしたように言った。

 その時、扉が勢いよく開き、アリッサが飛び込んできた。

 彼女がこのような不調法をするなどただ事ではない。

「旦那様! レオンハルト様とリオ様が!」

「新しい任務かな?」

「違います! 旦那様を帝都に連行するためにいらしたのです!」

「何だってッ?」

 クロノは思わず叫んだ。

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