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紅の術者  作者: 結城光
第2章 生徒会編
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第56話 一振りの相棒

ちょっと前々から思っていた事があったので、ガンドロフ編(全2話)? を入れてみます。

これで取り合えず戦力的なパワーアップは解決されるはず

王都フレイス。フレイス城内、兵士訓練場。

ナルフィアの護衛の任についてから3日目の早朝の事。かろうじて何人かの兵士は訓練場に来てはいるものの、彼らの目的は別の事にあった。


「貴様のその武器の利点はなんだッ!!」


ゴルゴッサの剣が俺の剣を弾き飛ばす。魔力や魔法の技術では劣っている彼も、剣の腕のみなら俺を軽く凌駕する実力を持っているのは言うまでも無い。たかが数ヶ月振るってきただけの少年と、何年、いや何十年と剣のみを振るってきた者とでは実力は雲泥の差である。


「戦い方を変えるのだ。お前は剣だけにこだわりすぎだ。それに何故多くの武器を出せるのに、1つしか出さないのだ?」


斬り込みながらゴルゴッサは語る。確かに剣だけにこだわりすぎているというのは当たっている。しかしそれは後衛よりも前衛の方が手薄なんだよ。それで1番扱いやすかったのが剣。ただそれだけの事だ。

武器を2つ以上出せないのは……それは多分俺の実力不足かな? ガンドロフに相談しても出せないとしか言われないし。


「お前は今まで魔法に甘えすぎていた。頼りすぎなんだよ、力に。だが今は切り札がなくなってしまったのだろ?」


「関係無いねッ!!」


吹っ飛んでいった剣がヒカリの束となって弾ける。その代わりに俺の手には2丁の拳銃がヒカリとなって集まり現れる。近距離を得意とするゴルゴッサ相手ならせめて中距離戦闘にとどめておくべきだろうか?


「逃げるのか、少年!!」


そう叫んだ声を俺は聞き逃さなかった。思わずニヤリと口を吊り上げる。

そして銃をゴルゴッサへではなく、自分の背後へと持っていく。――発射!! 瞬時、人間の力だけでは絶対発揮できない『加速』と言う現象が起こる。浮遊感を残したまま、俺は空気抵抗を感じる事無くその力に身を任せる。

ゴルゴッサもその姿を見て更に眼光を鋭くする。そして自らの大剣を一振りする。それは丁度俺がゴルゴッサに接近する、いわば間合いに入った瞬間を狙った絶妙なタイミングで。だがそれも読んでるっつーの!!


「せーのっ!!」


一瞬だけ加速がなくなり、そのまま落ちそうになる。しかし次の瞬間、上への上昇で体が無理やり上へと上がる。その動作によって、水平に薙がれた一閃を避ける。

同時にゴルゴッサの上で回転して、そのまま背後に攻撃しようとして――

何故か目の前にたらいが現れたのだった。





◇◆◇◆◇



「おかしいだろ!? 魔法は使用禁止って言っておきながら、自分は最後の最後で魔法を使うとか!!」


朝食の時間、俺はナルフィアとまなかと数人の使用人と共にパンをかじっていた。結局朝の試合はたらいに当たってのけぞった瞬間を攻撃されて俺の負け。しかし魔法の使用を禁止しているから、あっちの負けのはずなのにな?

あぁ、そう言えば俺達は一応客人扱いになってるようでナルフィアと一緒に朝だけで無く食事は全部一緒に食っている。


「まぁお主の為にやったのであろう? それに誰もゴルゴッサ自身の魔法使用を禁止してなどおらぬと言っておったぞ?」


聞きました。聞きましたとも、そのセリフは

ドヤ顔で、お前の魔法使用を封じただけだだって。


「そんなのイツキの力でねじ伏せなさいよっ!!」


「おいおい……。流石にそんな事出来るわけ無いだろ? なんなら明日はお前がやってみるか、まなか?」


「それこそ出来ないでしょうがっ、バカァ!!」


だったらお前も無茶な事を言うなよと思いながらも、俺は静かにスクランブルエッグをかけこむ。意味分かんないとか理不尽だなんて今に始った事ではない。そんな事訴えようものなら、逆に俺が蹴散らかされてそのままお得意の飛び膝蹴りで昏倒するだろう。

触らぬ神になんとやら。黙っているのが1番自分の為なのだ


「まぁゴルゴッサの件は後でじっくりと考えればいいであろう? 今日は王都を少し見学してから、ある場所へ行くからな?」


「了解、了解。んじゃ、俺はゴルゴッサに言ってくるよ」


席を外している親衛隊長に報告して、彼+数人の護衛の元でナルフィアの外出は許される。仮にも一国の王女。当たり前だ。

しかし彼女は首を横に振る。


「今日は大丈夫と伝えてあるのじゃ。いいから支度をさっさとして行くぞ?」


嫌な予感しかしないのだが嫌だ何て言えるわけも無く、諦めつつ俺は承諾した。その顔を見て、ナルフィアが笑ったのを俺は見逃さなかったが、完全に意気消沈するだけだった。





◇◆◇◆◇



「おう、王女様がこんな所へ親衛隊も付けずにどうしたよ!!」


「アホか、汝は。護衛はちゃんとおるだろうが。それよりも不正などせず、立派な商いをしておるだろうな?」


「当たり前だ!! こちとら王国のおかげで何のトラブルも無く商品を売れてるんだ。不正なんてしようものなら、ソイツを俺が叩きのめしてる」


王都フレイス。その中でも1、2を争う位賑わっているのがこのザッキア商店街だ。ちゃんとした申請と税の徴収はあるものの、それを上回る利益をほとんどの店が得ている。

ある者は武器を、ある者は書物を、ある者は食い物を。しかししっかりと場所を分けられているので、競争しつつも近すぎて客がかぶる心配は無い。その代わり他の店の方が良いなんて噂が流されて客を取られないように日々切磋琢磨しているのだ。


「んで、お前は何でこんなに商店街? の人達と仲が良いんだよ」


「それは当たり前じゃろうに。いずれは政治に参加するのじゃ。まずは近くの状況を把握しておらんと、国の事なんか考えられるわけ無いじゃろうに」


「へぇ、ちっさいのに偉いのね。ナルフィアって」


「ちっさいは余計じゃ!!」


あれから3日で、人見知りだったまなかも何だかんだでナルフィアと普通に話せるようになった。しかし残念な事は、やっぱり俺達はナルフィアを王女として扱う事が出来ない事。彼女自身がそれでも良いって言ってくれるのだが、やっぱり彼女は王女と言うよりもまだ少女だ。

食事の時とかは育ちの良さが出るが、喋り方とか行動がいちいち俺達に近い。ある意味庶民派とか言われるのか、将来は


「あっ、アレおいしそう。お姉さん、それ幾ら?」


「あら、嬉しい事言ってくれるねぇ。銅貨7枚だよ」


露天で売っているパンに肉と野菜を詰め込んだものを見つけて、すかさず駆け寄っていくまなか。コイツの腹が底なしなのと、睡眠時間の異常さにはもううんざりするほど付き合っているので今更何も言うまい。


「だってイツキ。お金出して」


「分かった分かった。生徒会とティアからお金は貰ってるけどあんまり使ってくれるなよ? おばさん、それ3つ」


「はい。いいねぇ、両手に花持って。っておや、王女様じゃないか。どうしたのさ、こんな所へ」


「いつもの見回りじゃ」


そこから他愛の無い会話を少しだけして、俺は銀貨2枚と銅貨1枚を渡すと商品を受け取る。やはり世界が違えど考える事は一緒なのか、ホットドッグに似たものが手渡される。

肉はおそらくこの近くで飼育されてるウェルハルイという牛の様な生き物の肉で、野菜は……キャベツに近い食感なんだけどわかんない。だけどうまい。

甘酸っぱいくせに、時々ピリッとするこのソースが挟んである具と妙に合う。これで銅貨7枚とか商売破綻してないか少し心配になるレベルだぞ? いや、ホント冗談抜きでおいしいから


「んでナルフィア。王都めぐりはコレが目的なのか? だったら次の目的地に行こうぜ?」


「いやいや、もう1箇所だけあるんじゃよ」


そのニヤリとした顔はホント良い予感がしないんだって。マジで。

その後もあっちこっちと見回りながらも商店街を後にして、俺達は少し離れた路地裏の武器屋らしき所の前に立っていた。看板も何も無いので正直本当に武器屋か迷ったのだが、覗いたら武器が置いてあったから多分あってるだろう。


「ほらっ、入るぞ?」


ズタズタと入ってくナルフィアについていくため、俺はまなかの手を取ってそのまま一緒に入っていく。

古びた店の外装は裏腹に、置いてある武器は業物ばかりだった。触れればこちらが切れるだけで、武器は何にも傷つかない。

そして奥に座っているのは中年の男。さらに奥には工房があるのか、服の所々がすすなどで黒ずんでいる。


「ひさしぶりじゃのぅ、タラディール」


「ふんっ。何しに来た、じゃじゃ馬が」


無愛想にイスに座りながら、ナルフィアの相手をする。が、俺達がいるのに気づいて目を細める。見透かされているような感覚。だけどそんな視線にはもう慣れた。だから余裕の表情でタラディールと呼ばれた男を見返す。


「お前が新しい生徒会のイツキ・ジングウジか。ヤスラから話は聞いている」


「おいおい、ヤスラ先生とも知り合いなのかよ……」


世界が狭いのか、俺の知り合いが顔が広いのか……。とにかく俺は(まともな)友達がいない。髪の毛ティアみたいに金髪にすればいいのか? それかアイリみたいにオッドアイとかにして中二病全開にすれば人気でますかねぇ?


「お前がレアスキルを使えなくなった件に関しては悪いが専門外だ。他を当たってくれ」


「んじゃアンタは何をやってくれんだよ? ヤスラ先生と何話したんだよ?」


「なによぉ、ナルフィアが紹介するって言う位だから凄い人かと思ったけど、イツキの問題を解決出来無いなんて用無しよっ!!」


そういった途端、ナルフィアがニヤリと口元を吊り上げた。そして静かに俺の目を見る。その瞳は言葉を必要としない。ただ黙っていろと言う事を俺に訴えてくる。その気迫は先程までのじゃじゃ馬とはまるで別人。まさしく王の覇気に似たモノを感じられた。


「何をするかなんて決まっているだろう。お前のその武器に関してだ」


しかしタラディールはそんな雰囲気など気にも留めず、ただ自分がなすべき事を告げる。


「ガンドロフを?」


「ゴルゴッサにも指摘されていただろう? 古来に作られたと言われる武器を集めたガンドロフ。この指輪もそうだが、武器の能力を1%も引き出せてないのはおかしい。同時に出せないのもな」


その言葉に違和感を覚える。少なくともガンドロフは今まで俺の武器として役に立ってきた。いや、一緒に戦ってきた。それなのに能力を1%も引き出せてないなんておかしい。時には属性付与までして振るった剣、膨大な魔力を放った銃。あれが0%の能力だとでも言うのか?


「お前は確かにコイツを使いこなしていた。しかしそれはある側面でだ。コイツはお前の望んだ武器を出してくれただろ?」


言われてみれば俺が望んだ武器を全て出してくれていた。先日の2年生徒会との戦いではレプリカとは言え、ヨミの短剣を実装した。


「それはこいつの中に入っている武器の情報を全て出して、必要な所を抜き出して合成して作っているからだ。だからこそお前は武器を1つしか出せない。いいとこ取りが出来るコイツは優れものだが、それ以上に負担が大きいからな」


「そうだったのかよ?」


(ふんっ。我は主の力になると言ったであろう。そもそも何故我があの店で他の武器に言う事を聞かせる事が出来たと思っている?)


どんな世界でもそうだ。上に立つものは何かしらの力がある。ガンドロフは単なる武器収容用の指輪では無く、とてつもない代物だったのか。だからこそ使用者を選んでいた。その力は強大故に。

だってどんな人間にも最適な武器を作り上げるんだぞ? それも無数に。操るものが達人なら、武器が尽きないのは恐怖だ。絶対戦う手段がなくならないのだから


「でもそんな能力があるのにどうして1%も出せてないなんて言うんだよ? 十分じゃねぇか」


「お前は勘違いをしている。俺が言ったのはこの指輪の能力じゃ無い。この中に眠っている武器達の事だ」

後から設定だけど伏線っぽい感じで文章かいてたから許して。


次回、ガンドロフとイツキがパワーアップ

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