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紅の術者  作者: 結城光
第1章・2節 学年別トーナメント編
58/66

第52話 就任

第一部完結ですっ!!


「失礼しま~す」


俺が目を覚ましてから少しして、俺達は皆である部屋へと集まっていた。呼んだのは紅のメンバーはもちろん、2年生徒会メンバー、そしてシルビアとキヨルと言うメンバーだ。そして後1人、上野まなかがオドオドしながらも俺の裾を引きちぎりそう位に強く握り締めている。

まなか自身、学校でもそうだったが面識の無い人物と深く関わろうとはしない。理由を聞けば、関わる必要が無いと言うだけだった。しかしコイツは人と交わるのが怖いんだ。多分。


「イツキィ~。大丈夫やったんへぶっ!?」


「イツキさん、もう動いても大丈夫なのでふきゃ? ひょっほ、セシリア先輩!! 先輩だからといって、押しのけるのはどうかと思いますわよ!?」


「シルビアちゃん面白い事言うねェ? それより、イツ君早く座って!! あんまり長く立ってると、体に悪いよ?」


キヨルが最初に来てくれて、少し男の友達って良いなって思ったらコレだよ!! アレか、あんたらは全力で俺の友達を潰しに来ている訳ね? こっちの世界で男の友達って、キヨルだけなんだよォ!? 死んだらまた俺は1人になるだろうが!! 子供じゃないとか言って、麻雀打ってればいいのか!?


「………うがァアアアアアアアアア!!」


俺の後ろに居たまなかが、まるで頭にミミが生えたかのようにし、目を猫みたいに吊り上げて叫ぶ。その声を間近で聞いたアイリはビビッて腰を抜かし、セイウェンは剣を出そうと身構える。ヨミはティアの目の前で盾となり、ティアは驚いた様な顔をしている。

シルビアとセシリア先輩は同じ様ににらみ付け返し、他の方々は……察してくれ。

取り合えず俺とまなかを中心に作られる異様な雰囲気を、どうにかして消し去りたい。じゃないと俺は……ここにいる奴らの視線で死ねる。

だけど彼女はそんな事考えてくれるはずも無かった。


「あああアンタ達はいったいなんなの!? イツキから離れなさいよォ!!」


「それならば私達が逆に問おう。君は誰だ? そしてイツキ君の何なんだ?」


暴走しているまなかの元へ、セイウェンが近づいていく。アイリとかが行くと余計にめんどくさい事になりそうだったから、その判断は間違いじゃなかったな。

ってか俺が目を覚ますまでに、まなかは自己紹介も済ませてなかったのか……。社会出てから大丈夫なわけないだろう……。


「わ、私は上野まなか。コイツの幼馴染よッ!!」


ビシッと突き指して宣言するその姿が痛すぎる。どうだ、決まった!! 見たいな顔でこっちを見るなよ、恥ずかしい。


「なるほど、所詮は幼馴染。恋人では無いのだな?」


「ばっばっばばばばバカじゃないの!? 誰がコイツの恋人なんかにィ!!」


「ふむっ。だったら問題なかろう? ここに居るモノは、私も含めて彼を好いている者ばかりだ。しかし君はただの幼馴染なのだろう? 人の恋路を邪魔する権利は無いと思うのだが」


「なッ!?」


セイウェンはおそらく紅の中で1番理論的に思考する人間だろう。ティアやヨミもそっち側だが、普段の言動からセイウェンは少し違うのが見て取れる。いや、別にアイリはダメとか言ってるわけじゃねぇぞ?

で、まなかはほとんど理論的に思考するのでは無く感情的に行動している方が大きい。

いわば両極に居る2人。それは両者共に敵対した時に、相手側が苦手になると言う事。感情的に動くまなかは、理論を言われると頭がパンクする。一方理論的に話すセイウェンは、感情的な行動を嫌う。

今回の場合は前者だ。


「間違いがあるのならば言ってくれ。こちらに非があるのなら、私が改善せねばならないのだから」


「ちょっ、ちょっとセイウェン」


同類と言うか、まなかのワンランク上の存在であるアイリが止めに入る。しかしその静止も遅く、まなかは完全に涙目になっていた。


「理屈でもねぇ、解決できない事ってあるのよォ!!」


精一杯足に力を込めて、まなかが得意の回し蹴りをセイウェンへとぶちかます。セイウェンは一瞬だけ俺の方を見る。俺はその意図を察して、頷く。

手を前に伸ばす。無詠唱。そして展開。セイウェンの前には対物理用の障壁が張られる。反撃するつもりは無いのだろうが、そのまま無力化した方が早いと言う事なのだろう

しかしそんな単純な予想は外れてしまう。

パンッと言う甲高い音と共にセイウェンの目の前で障壁は崩れ去り、威力がそのままセイウェンへと叩き込まれる。流石にセイウェンも一撃で沈む訳が無いが、ダメージを受け流し切れなかったのか少しだけ顔をしかめている


「さてっ、君達。じゃれあいも程ほどにね?」


ビクッとその場に居た全員が体を硬直させる。1人を除いて。

1番奥で座っていたイオリ先輩が、イスから立ち上がると静かにそうつぶやく。初対面のまなかですらその力を直感的に感じ取ったらしい。

騒いでいた奴ら全員が席へと座り、その光景を見てから着席する。


「えっと、じゃあ取りあえずコイツ。上野まなかと俺との関係を説明します」


そう言うと、まなかに時々話を振りながら、俺はみんなに彼女を説明していく。

両親が居なくて、施設で一緒だった事。向こうでは幼馴染だった事。それは今からしてみれば、ホントに些細な事だったのかも知れない。でも皆はちゃんと聞いてくれていた。

俺とまなか。向こうの世界でも、こっちの世界でも立場は変わらない。


「まぁぶっちゃけ友達以上恋人未満ってとこよね、イツ君?」


「そうっすね。コイツの他に大輔って言う男の親友も居るんですけど……。一緒じゃ無いのか?」


「こっちの世界に来るまではアイツと一緒だったのよ? でも本屋で」


「本屋?」


その言葉聞いて、ティアが眉をひそめる。

そして何かを考え、俺の方へと視線を飛ばす。


(多分彼女、何かの魔導書の類を使われているはずよ。その場所が本屋ってのが怪しいわ)


(まなかに魔力が無いからか?)


(そう。アンタがこっち来た時に言ったわよね? 魔力は潜在的に持っているか持っていないかの二択だって。彼女は残念だけの魔力を持ってはいないわ。彼女の話を信じるとして、アンタの友人と2人を飛ばすのに……いいえ、大規模の魔法を使う時には失敗しない為に魔導書を使うのが一般的なの)


つまりまなかにこの世界の話をしなくちゃいけないんだよな? 正直ちゃんと話すのはもう少し後にしたかった。こう言ったら何だけど、まなかにここの常識は通用しない。向こうで成り立っていた法則を破壊出来るからな。魔法ってのは


「なぁ、まなか。今から俺が、俺達が言う事を信用出来るか?」


「はぁ? 何言ってんのよ、イツキ?」


「いいから。えっと、アゼル先輩。魔導書出してくれます? 後イオリ先輩、ここで魔法を使う事は?」


「魔導書か? ふむ、この程度の内容で良いなら」


「常識の範囲内であれば良いよ。彼女に説明しないと、話が進まないんでしょ?」


2人の協力を得て、俺は皆から少し離れる。立とうとした時、隣に居たティアとシルビアが心配してくれたが戦闘する訳でも無いので心配ない。


「とりあえずここの世界は、俺達が居た世界と全く違う。ほらっ、前に貸した漫画であったろ? 『魔法』ってヤツ。それが実際にあるんだよ」


「ばっかじゃ無いの? アレはラノベとかマンガの内容で実際には無いってアンタ自身で……」


「言ったろ? ここは俺達の世界じゃ無いって」


そう言いながら俺は右手を前へと突き出す。そして念じる。

5大元素『火・水・風・土・雷』その全てを球体として展開させる。そう、俺がティアから教わった時のように


「言っとくけど手品じゃないからな? ここはこういう所なんだ」


めんどくさいので、詠唱の違いやら上級魔法の話は省略する。取りあえずまなかには理解してもらわなければ困る。この世界の魔法と言う概念を


「で、おそらくコイツは誰かの思惑・・・・・でこっちの世界に飛ばされました。向こうの世界に魔法と言う概念は存在しません」


「つまり何かが動き出しとるっちゅう訳やな?」


キヨルがここぞとばかりに発言する。しかしその程度の事を言うなと言う視線をシルビアから浴びて、しょんぼりしてるし


「俺もこっちの世界に飛ばされました。でもその理由は聞かされてません。ただ元の世界に戻るには、まだ無理だからって言うだけで」


「察するにイツキ君は飛ばされた理由が明確なのだが、まなか君? 君は何故飛ばされたか分からないようだな?」


セイウェンが簡単な考察をする。確かに俺はイレギュラーな行動を起こした結果、殺すのは惜しいと言う理由でこっちに来た。だけどまなかは? そんな理由など無いだろう。

しかし彼女は確かな瞳で反論する


「私だって理由あるもんっ!!」


「ほうっ、ではそれを聞かせて貰いたい。今後の論議の参考になるかも知れないのでな」


「ぐっ、それは……」


決してセイウェンはまなかをいじめているわけではない。彼女は彼女なりに色々考えて、まなかに質問しているのだろう。

しかしどうしてだろう? 何かセイウェンがいじめているみたいだ……。


「ん~、セイウェンちゃんちょっち論議がずれてるかな?」


そんな所に口を出したのは、意外にもセシリア先輩だった。


「とりあえずまなかちゃん、魔法って存在はOK」


「は、はい」


「だったら今はどんな理由で来たかなんて良いでしょ? まぁそれも容易に想像出来るんだけど。それよりも君達。正確にはイツ君とまなかちゃんが特殊な力を持っている事が問題だわ」


その瞬間、俺とヨミを除く全員が頷く。ヨミは俺の顔を見て、それからまなかの方を見るが納得出来ないようだ。もちろん俺も。何故まなかが能力を持っているなんて言うのか? さっきティアが言ったように、まなかは魔力を持っていない。だからコイツは能力以前に、この世界に必要な魔力と言う鍵を持っていないのだ。


「イツ君の魔法喰らいエンペルゲレト。そしてまなかちゃん。アナタが先の大会で見せた能力」


「えっ?」


そう言えばまなかがいつ現れたなんて事を、まだ聞いてなかった。

するとティアがおもむろに


「アンタが魔法に取り込まれた時、一体どうやってアンタを止めたと思う?」


「俺が、取り込まれた時……?」


魔法喰らいエンペルゲレトの暴走。それの対処方法は2つ。1つは俺が自分で解除する事。しかしそれは自我を失った俺には無理だった。

だったら2つ目。吸収した魔力分を発散させる事。でもそんな攻撃を俺はしたのか?


消したのよ・・・・・。アンタの中に吸収されていた魔法を全部。空から降ってきたまなかがね」


「つまり、その……。まなかの能力って」


「えぇ、おそらく私達魔法使いには最強とも言える能力。魔力が無い故に自分には何の害も無い。魔法殺しマジックデストロイヤーでしょうね」


俺は言葉を失いながら、まなかの方を見る。そうすると、自分で何か思い当たる節があるのか少し顔を赤らめながら、そっぽを向く。


「そう言う事だ。取りあえず上野まなか君は、一時的に生徒会で預かろうと思う。何せ、彼女が降りて来た事を色々手を回して消しているんだ。身の安全が確保されるまでは、こちらの言う事を聞いて貰わなければ困る」


イオリ先輩の言う事はもっともだ。その場面を見ていないので何とも言えないが、まなかの出て来かたは異常だったはず。それを今こんな風に無事で居られるのは、絶対に先輩達が何かをしてくれているからであって。

だからこそ、俺はこの言葉を言わなければならなかった。


「イオリ先輩……いいえ。ここに居る皆にお願いしたい」


視線が一気に俺に集まる。うるさいっ。呼吸を止める。自分の心臓の音が、よりはっきり聞こえる。何の音も無い空間に、聞こえるのは自分の鼓動。ゆっくり深呼吸し、息を吐き出す。


「俺に魔法喰らいエンペルゲレトを使わせてくれ」


絶対に言われるであろう言葉を予期して、あらかじめ俺は皆にそう頼む。そうでないと彼らに言われてしまうからだ。もうレアスキルを使うなと


「イツキ君。今回は不発で終わったが、もし万が一同じ事が起きた時、君は今度こそ仲間を傷つける事になるかも知れないんだぞ?」


真剣なイオリ先輩の瞳。だからこそ俺はその瞳から目を離さなかった。


「ですが俺はこの力を使わずに、仲間が傷つく方がよっぽど怖いです」


マノヒやシュウと言った、明らかに何かを企んでいるヤツが居る以上は普通以上の力で無いと戦えない。だからどんな危険性があったとしても、俺はこの能力を使わないわけにはいかないんだ。


「合格だよ、君は」


「へっ?」


突然の事で変な声を出してしまう


「暴走するなら、制御すれば良い。その件に関しては、その内ヤスラ先生から説明が行くだろう。だけどそれはあくまで俺達が出来る事であって、君の心が無ければそんなのは無意味だ」


「つまりね、イオリンは心配していたのよ。イツ君が能力の暴走で、これ以上魔法と関わる事をやめてしまうんじゃないかって。もちろんお姉さんは心配なんかしてなかったけど」


にぱーっと嬉しそうな顔をしながら抱きついてくるセシリア先輩。そして集まる女性陣のトゲトゲしい視線。

ちゃんとした事を言ったはずなのに、ホントぶち壊しだよ。いつも通りにね


「『生徒会長』イツキ・ジングウジ。『副会長』ティスティア・ナフィー。『書記』ヨミ。『会計』セイウェン・コウラリス。アイリ・クラン。『補佐』シルビア・フォンレット。キヨル・サルビン。そして上野まなか」


『はいっ』


「以上の者を、今期の1年生徒会メンバーとする。みんな、頑張ってくれよ?」


そう聞いた瞬間、俺の周りで声が弾けた


「私も生徒会に入って宜しいのですか!?」


「もちろん。その為に呼んでるしね、シルビア君」


「ワイもや、ワイもやァ!!」


「やっとね生徒会」


「そうですね、お嬢様」


「ふふっ、あんな戦場に居た私が学園の代表になるとは」


「ボクもだよ。セイウェン」


皆が思い思いの言葉を発する。唯一まなかだけが戸惑っているような顔をするが、俺が視線を送りながら大丈夫と言うと確かに頷いて笑みを浮かべる。

取りあえず、俺達はまだやらなくてはいけない事がある。いや、やっと始まったって所か?


「ここからが始まりだよ? イツキ君」


「当たり前です。イオリ先輩ッ!!」


俺は差し出された手を思い切り握り返す。その満足そうな表情を見て、俺は同じように笑い返す。


「今度はちゃんとした試合をしよう。あぁ、その前に俺の話が先か?」


「俺も今度こそはちゃんと戦いたいです。後、ゆっくりお話も」


「なぁに、一生の別れみたいな事言ってんのよ!!」


ドンッと開け放たれた扉からは、酒を持ったヤスラ先生が立っていた。

それで俺達は少しだけ何かあるような気がした。いや、彼女のやりそうな事なんてここ数ヶ月でわかっていた


「ほらっ、今から1年生徒会誕生と、2年生徒会との親睦会をするわよっ!! もう用意してあるんだから、早く準備しなさいっ!!」


了解ヤー


こうして俺達紅の、1つ目の目標は達せられた。同時に新たなメンバーと、少し漂う不穏な空気を感じながら、それでも俺達は今この瞬間を楽しんでいる。

そう、生徒会として活動が始まる日を考えながら

と言う事で、紅の術者の1章学園編が完結です。

この章では取りあえずイツキ達の能力を少しでも見せられたらと思って書いてきました。最初では登場するはずも無かった、シルビアやキヨルまで生徒会に入ってしまいましたが、次章では活躍してくれる事でしょう。


さて、次章生徒会編のテーマは恋愛やら色々な謎やら急展開やら……。とにかく色んな事が起きると思いますので、少しでも楽しみにしていただければと思います。


それでは次回は2章~生徒会編~でお会いしましょう

でわでわ~



PS.


本当に今更ですが、色々二次創作が規制されているので一次創作を始めました。

テーマはドラゴンと多くの勢力との戦いです。神々を殺すと言うちょっとアレな設定ですが、宜しければ暇つぶしにどうぞー


http://ncode.syosetu.com/n6140be/

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