第2話 降り立った異世界
とりあえず最初の主要キャラ2人登場です
これからドンドン増えてきますけど……
扉がゆっくりと閉められる。まばゆい光の中をただ淡々と歩き出していく。扉に入る前は気づかなかったが、この光の中にはかなりの扉があった。何十、何百もの扉があるのに俺はそれを開けない。正確に言えば、開ける必要がないのだ。
俺はある扉の前に立った。この空間に入った時から感じていたのだ。この扉が俺を呼んでいると
きっとその他の扉は違う世界に繋がっているのだろう。しかし、俺の行く世界はユーリスってとこらしいし他の世界へは行く気もない
「さてっと、そんじゃあ行きますかね」
俺はその扉に手を伸ばした。重くしっかりとした扉からは、大きな力が感じられる。その力に対して俺は興奮していた。これから始まる新しい日常。見た事も無いものとかもあるんだろうな
そんな期待を胸に、俺はドアを勢い良く開けた
●紅の術者
第2話 降り立った異世界
バッシャーン
おい、なんだ? この水か何かに入った音は?
それになんだか温かいお湯だ。温泉か何かか? そう思って一応回りを見渡してみる。出た瞬間お湯の中に入ったから、目に多少のお湯が入ってしまっていて視界が思うように回復しない。
とりあえず何かを掴まないと……
俺は手探りに物を掴もうとする
モニュン
「ひゃっ!?//」
俺が掴んだのはおそらくスポンジか何かだろう。異様にやわらかいし、手に吸い付いてくる。なんともいえない心地だし。でもなにか聞こえたような気が……
おおっと、そんな事を言ってる場合じゃなかった。とりあえず周りを見えるようにしないと。
ーー視界回復
さっそく能力使ってみました。視界が戻るように念じてみたら一瞬で視界がクリアになった。そして俺がさっきまで掴んでいたスポンジの方に目を向けると……
裸の女性がおられました。それも、さっきまで神様と呼んでいた人が。やっぱりあの神様はヘンタイだったんだよ…… だってそうだろ? この人と俺が最初に会うのを知っていたって事は、この事も知っていたはずだろ。あのムッツリスケベのヘンタイ野郎め…… 今度会ったらマジでひねり潰してやる
「アンタねぇ……」
そんな事を考えていたら、目の前の女が話しかけてきた。翻訳をしなくても言葉が分かるのは、あのヘンタイのおかげなのか? でも、やっぱりひねり潰す。
っと? 何か嫌な予感がするのは俺だけでしょうか?
「何処の誰とか、どうやってここに来たのとかは今はいい」
「へ? ああえっと……」
「でもね、いつまで私の胸に手を当ててんのよーーーー!!」
「げぱっ……」
色々ありすぎて、状況整理をしていたら肝心な事を忘れてたよ……
妙にやわらかかったそれは、スポンジではなくおっぱいだったんですね……
そんな立派なのをお持ちなのに、なにこのパンチ? もはやボクサー並じゃね? 俺もう……
彼女の右ストレートを喰らった俺は、意識を手放した……
「白い天上……知らない部屋……俺は、俺は誰だ!?」
起きたら知らない部屋のベッドに寝かされていたから言ってみた。マンガとかでは、記憶喪失で病院にいてこのセリフを言うんだろうな。
とりあえず俺はベッドから降りてみる。改めてこの部屋を見てみるとすっげぇ豪華だ。家具から、部屋に置いてある置物もかなりセ・レ・ブ☆ なにおいがするぞ
そして俺が1番気になったのは、この置物。俺と同じくらいの年齢の少女をモデルにしたのかは知らないけど、物凄く精密な作りだな。もと居た世界でもこんな精密な置物なんて作れなかったぞ? これも魔法の力なのか?
「なにジロジロ見てる?」
「うわぁ!? お、置物が喋った!?」
「初対面なのに失礼。私は置物じゃない。」
突然置物が話し始めたかと思ってビビッただろ!? 俺が近づいてきたらなんか声とか出せよ。なんで、ギリギリまで溜めとくんだよ
「さっきの人じゃないな。俺に右ストレート入れた奴は何処へ行った」
「風呂場にいきなり出没したヘンタイに答える必要はない」
ニッっと笑いながら返答してきた。この笑い顔見せたやりたいよ。色々黒いものが詰まっている顔だ
「教えろよ」
「イヤだ、ヘンタイ」
「教えろ」
「寄るな、ヘンタイ」
「教えろーー!!」
「ダメ、ヘンタイ」
コイツ……強い!?
俺がどれだけ丁重にお願いしてるのに言う事を聞かないだと!? これはお話(肉体言語)が必要なのですか?
そんな時に扉が開いた
ガチャ
「ちょっとヨミ、なに言って……」
俺の顔を見るなり、拳に力を入れやがるさっきの女。力いっぱいの右ストレートが俺に…… 当たらなかった!! 当然だ! まなかと一緒に居るだけで攻撃されてきた俺の身体能力をなめるな!!
「なっ、ヨミ。アイツを取り押さえて」
「お嬢様、それは流石に無理かと……」
「とりあえず、平和的に話し合いという選択肢は無いのか?」
「風呂場で胸を揉むような奴と話し合う余地は、ないっ!!」
確かにこっちの世界は魔法とかが発達しているから、戦闘のやり方も教えられてるのか。空手とかとは違うが、しっかりとした武道の攻撃だと思うような手さばき。以前の俺だったら絶対当たってるね。身体強化で洞察力とかも格段に上がってて助かるわ
「はぁ……はぁ……なかなかやるわね? アンタ。話を聞いてやろうじゃない」
「最初から聞いてくれよ……」
とりあえず俺は事情を話した。別に異世界から来ましたとか、死んで転生しましたとかは言っていけないわけではないから、全ての真実を話した。俺って偉い子
「つまりアンタは、チキュウとか言うところに居た異世界人だと」
「そうそう」
「男の子を助けて死んでしまった所を、神様に助けてもらったと」
「その通りでござんす」
「バッカじゃないの!?」
せっかく親切に話したのになんだよこの態度!? マジで礼儀知らずだろ。お嬢様とか言われとったけど、ただのじゃじゃ馬じゃね?
「今言ったのは全部本当なの」
「ありえないわ。このフレイスが消滅するくらいありえないわ」
フレイスって何処だよ!? てか人の話を信じろよ!!
「お嬢様そう興奮なさらずに。私にお任せ下さい。このヘンタイの言っている事が本当かどうか見極めます」
そういって俺に近づいてくるもう1人の少女。メイド服姿で確か名前は……ヨミって言ってたっけ
「アナタが今言った事は全て本当ですか?」
「はっ?」
「本当ですか」
俺の目を真剣に見ながら聞いてくるヨミ。これで俺が言ってる事が本当かどうか分かるのか? まぁ分かるなら分かるでありがたいが
「本当だっつーの」
「瞳孔の開き具合、呼吸の乱れ、顔の表情。全て変化無しです。このヘンタイの言ってる事全部本当です」
「うそっ!? 本当なの、ヨミ?」
「お嬢様落ち着いて。私のウソ発見能力に引っかかりませんでしたから、本当です」
「なっ? 言ったとおりだろ?」
ヨミの言うウソ発見能力ってのは訳が分からないけど、とにかく理解してくれたみたいでよかった。
「はぁ……あんなバカみたいな話が本当だなんて……」
「とりあえず、信じてみましょう。なにかあれば、私が始末します」
「物騒だな、オイ」
ニヤリと笑いながら俺を見てくる。なにか物凄く背筋にゾクッと来た……
「私の名前はティスティア・ナフィー。この子はメイドのヨミ」
「ああっと……俺の名前は神宮司 斎」
「ジングウ・ジイツキ? なんかちょっとエロい名前ね」
「このヘンタイにはぴったりです」
「ちげぇよ!! イツキ・ジングウジだ」
なんだよ人の名前をエロいとか言いやがって。このメイドは相変わらず俺をけなしてくるし……
初対面っていったのはコイツだよな? 全然そんな気がしないのは、俺だけですか?
「この家は、私の父のエドワルド・ナフィーの家よ。そして私はその1人娘」
「自慢ではありませんが、かなりのお金持ちです」
「イヤ、見れば金持ちなのは分かるし」
「自慢じゃないわ。別に私がすごい訳ではないし」
「とりあえず、お嬢様とアナタは天と地ほどの差があるんです」
「さいですか……」
もうなんかこいつらのペースに付いてけない……
とりあえず神様が言ったように、こいつらから色々情報だけ聞き出さないと
「で、とりあえず色々この世界の事を聞きたいんですけど……」
「ああ、異世界の人だったわね……いいわ、説明してあげる。でも、その前に1つだけ約束してもらうわ」
「ん? なんだよ?」
「私の護衛を引き受けてくれない?」
はぁ? なに言ってんだこいつ?
こんな警備も万全で、金持ちの家なのに俺がお前のボディーガードをしなくちゃならんのだ
「私は今年からルビニア魔術学校に通うの。でもね、自慢じゃないけどお金持ちの1人娘。なにかと狙われる事が多いのよ。お父様は変なボディーガードを連れて行くって言うけどそんなのイヤだし。丁度良いからアナタがボディーガードをやってくれない?」
「俺はついさっきこの世界に来たんだぞ? 魔法が使えないのにボディーガードなんて出来るかよ!?」
「魔法が使えない? 何冗談言ってんのよ? だったらその漏れ出してる魔力はなに?」
そう言われて思い出した。俺は魔力が物凄くあるんだった……
神様もこんな展開になるんだったら最初から言えよ
「いい? 魔法って言うのは使える人と、使えない人がいるの。魔法が使える人は、最初から魔力がある程度あるのに対して魔法が使えない人は、最初から魔力がゼロなのよ。だからアンタは魔法が使えない訳じゃなくって、使い方を知らないだけなのよ」
「ちなみに私も使えますよ? ほら」
ヨミが手を出すと、小さな光が現れた。
確かに何も無いところから、明かりを作り出している。
「そゆ事。だからアンタは魔法が使える。分かった?」
「ああ、魔法の事は少し分かった。でも、なんで俺なんだよ? ボディーガードなんてちゃんとできねぇかも知れないぞ?」
「そうね、でもアンタと居るとなんか落ち着くのよね。お風呂場での事があって最初は殺してやろうかと思ったけど、話していくうちに段々そういう気がなくなって。アンタを気に入っちゃったみたい」
完全に死亡フラグですよね? アイツ自身半分は風呂場を覗いた罰みたいに思ってるだろうし、最後の言葉なんてウソだと分かるようなしぐさだったし
でも、確かにコイツのボディーガードをやる事はかなりメリットはあるけど、危険も伴う。けど断ったら殺されそうだしな……
コレも運命なのか?
「アナタに拒否権はありませんよ? YESかはいで答えてください」
「もし拒否したら、殺すわよ?」
2人とも言ってる事が怖すぎです……
やっぱよくよく考えてみると、ボディーガードになるって事は魔術学校に行けるし生活にも困らない。………やるか
「いいぜ、やってやる」
「やっぱそういうと思ったわよ。よろしくね、イツキ」
「よろしくです。ヘンタ……イツキ」
「オイ、今ヘンタイって言おうとしたな?」
「イエソンナコトオモッテマセンヨ?」
片言になってるし……
コイツわざとやりやがってるな?
「まぁ、よろしくな? ティア、ヨミ」
「アナタがお嬢様をティアと言うな。ティスティア様と言いなさい」
「別にいいわ。これから大変だろうし、それくらいは」
「そうでしたね」
不気味な笑みを浮かべる2人。俺にはなんの事だかさっぱりわからないんですけど……
それよりとりあえず色々の説明を……
「さ、行きましょう」
「行くって何処に?」
「お父様の所に決まってるでしょ?」
「なんで?」
「アンタの事を言わなきゃいけないでしょが!! そんぐらい考えなさいよ、バカ」
また1つ死亡フラグが立ちました……
こういった家の父親って絶対頑固で怖くって「何処の馬の骨かも分からん奴に、娘はやらん」とか言いそうなイメージしかないし
「そんな怖いところには行きたくないわ!! 先に説明を求める」
「先に行っとかないと、アンタ死ぬわよ? お父様がアンタの事を不審者って言ったら、いくら私でもアンタを助ける事はできないし」
「旦那様は怖いですよー、イツキの死に様が見えます」
怖すぎる……行かないとさらに死亡フラグが立つとかありえねぇ……
とりあえず俺は、ここの大魔王と一戦交えなければならないようです。
「さ、行きますよ?」
「行くわよ? イツキ」
「さらば、俺の人生」
そう嘆きながら、俺は大魔王の居る部屋に連れて行かれた