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紅の術者  作者: 結城光
第1章・2節 学年別トーナメント編
46/66

第40話 決勝戦

結局グダグダになると思ったので、決勝まで飛ばしました。まぁ気付いている人は居るかも知れませんが、このトーナメント……






●紅の術者

第40話 決勝戦







「それではチーム『ブラッドムーン』の選手の紹介です」


俺達が控え室に着いた途端、そんな放送が聞こえてくる。そう、俺達は結局決勝まで行く事が出来たのだ。まぁ1回戦のおかげで楽勝に勝てたのだが

結局あの後、俺達の戦い方というかレベルの違いを感じてほとんどが逃げ腰。本気を出さないと、悪いが俺達には対抗できないだろう。それは自分達のレベルの高さだけではない。おそらくヤスラ先生の教え方は、他の先生達のそれを明らかに超えている。教え方もうまいし、やっている内容も量も桁違いの事ばかりだ。試合を見ていて分かる。誰1人として上級魔法を出していないのだ

正確に言えば1チームを除いて、現時点で上級魔法を出せる可能性は皆無だろう。だからアイツらが、決勝に残ってきたのは必然と言えよう


「まずはこの人。入学式に対戦相手であるイツキ・ジングウジに決闘を申し込みそのまま惨敗。積年の恨みを今晴らさん!! 『クロッド・テスタラン』」


「ふんっ、この僕を1番に紹介するのはあっているな司会者よ」


あーあ。何かメンドクサイ事を言いながら入場してきたぞ。会場から聞こえてくるのもブーイングが多い。ごく一部の男子だけが、クロッドの事を応援しているようだ。まぁ、あんなかっこ悪い姿を目の前で見ていて応援する気にはならないよな


「ティア、何か出てきたぞ?」


「見なくても分かってるわよっ!! ねぇ、アイリ。悪いけどアイツの相手は頼んだわ。私にはその……生理的に無理」


「にゃはは、了解だよん」


やっぱりクロッド。お前がティアのボディーガードになる事は、多分一生かかっても無理なんじゃないかなぁ? 俺が言うのもアレだけど、主従関係って言うのは相互信頼の上に成り立つモノだと思うんだ。主人が従者の事を嫌っているのにうまくいくのはほとんど無いだろうから


「そして次にィ!! ここでは一風変わった喋り方。武器は己の心と拳。いつか掴みたいのは勝利と胸? 『キヨル・サルビン』」


「おーきにな、紹介文うまいやんけ」


キヨルは1年生の中で、変態のレッテルを張られにここに来たのか? そうじゃなかったらただのアホだな。明らかに女子と男子の反応の差が見て取れる

お前この学園で彼女を作ろうなんて絶対無理になりそうだぞ、おい


「さてさてお次は2人紹介。高貴な喋り方とか弱き瞳。2人が組めば向かう所敵など居ない!? 『シュウ・エンドルド』と『マノヒ・イーデ』」


「俺がさっさと蹴散らしてやろうぞ!!」


「う~ん、こういうのはあんまり得意じゃないんだけど……」


そういいながら、シュウとマノヒが控え室から出てくる。シュウはやっぱりメンドクサイ喋り方に加え、メンドクサイ剣を片手に出てくる。何で戦闘に使うはずの剣が金ピカに光ってんだよ!? ここは一応真剣勝負の場所なのによぉ

対するマノヒはおそらく自分の武器ではないだろう。魔法石は一応付いているものの、無色でしかも一般的な銃だ。何故そんなモノなのかは分からないけど、とりあえずこれで勝って来たのだから何も文句は言えない


「時にイツキ君、あのシュウとやらを私に任せてみてはくれないだろうか?」


「なんで?」


笑いながらセイウェンに問いかける。すると温和な表情のセイウェンが、真剣な目をしながらこちらを向く。こんな表情は初めて会った時以来じゃないかな?


「私はこの学園生の前に1人の剣士として、今まで生きてきた。だから悪いけどああいったのが許せないんだ。私達をバカにしたようなもので。彼は戦場と言うのを知らない。魔獣達と戦わなければ生きていけない私達の事を……」


そうだったな。セイウェンは魔力の大きさから捨てられ、自分で生きていかなければならなかったんだ。そんな彼女から見れば、シュウのソレは完全に自分達を侮辱している以外に受け取れるわけが無い。


「あぁ、頼んだ。やるなら徹底的にな?」


「ありがとう、イツキ君」


そう言いながら微笑むセイウェンは、いつも通りの笑顔だった


「そして最後は、このチームのリーダーの座を取った一応転校生。ティスティアを泣いて謝らせるまでは絶対に負けない!! 『シルビア・フォンレット』」


「ティスティア!! 早く出てきなさい!! それともなんですの? 私と戦うのが怖くて逃げ出しまして? それはそれでいい事ですわ。自分の実力を見極めて逃げるのも正しい選択。しかしその場合は私とチームを交代してもらいますからね」


横でプルプルと震えるティアを必死で抑える。魔力も怒りでかなり流れ出しているから、これはマジでヤバイ状況だって。開始前から一触即発の状況なんて、後々の不安材料になるに決まっている。どうにかしてティアを落ち着かせないと、冷静な判断の出来ないのは致命的すぎる


「殺す殺す殺す殺す殺す。絶対殺す、何処まで……。殺す殺す殺す殺す殺す」


「オイ、ティア。お前はあの程度で流されるほど低脳なお嬢様なのか?」


「ッ!! そ、そんな事は……」


さっきまでのヤンデルモードから、少しだけ普通の表情に戻る。しかしその表情はかなりの戸惑いがあり、まだ怒りの表情も少し見える

しかしここでその怒りを解放されたら、間違いなくチームとして終わる。個人戦なら良い方向に転ぶ時があるが、団体戦はほとんど無い。かみ合わない歯車は、全てを狂わせる元凶にしか成り得ない


「ふふん。いい判断よ、イツキ君。ティアちゃん、感情を押さえ込めないでそのまま戦えば絶対に良い方向には向かない。良い? これはアナタだけの問題じゃないのよ」


「……はいっ」


少しうつむきながらも、確かな声で返事をするティア。その瞳にはやはり腑に落ちない所があるみたいだが、チームの為と言われれば話は別だ。自分だけが抱える問題ではない。もし仮に自分がヘマなどをして、チームのミスを引き起こせばと考えると……。

だから自分の感情を押し殺してでも戦わなければならない


「はぁ……。ティアちゃんはシルビアちゃんとのマッチアップをやめてもらいましょう。そうね……、ヨミちゃんお願いできる?」


「お嬢様への侮辱は何があっても許す事は出来ません。たとえソレが、シルビアお嬢様だったとしても」


こちらのヨミさんもご立腹なさっている様子で。しかしティアの事を思うと、態度があからさまに違う。もっとなんて言うか、静かに燃えているというか、感情をコントロールしているというか、とりあえずティアみたいにはならないようだ。


「そうですね。俺がキヨル、セイウェンはシュウ。アイリはクロッド、ティアはマノヒ、そしてヨミがシルビアって感じで」


「うん、私も賛成だよ。1対1で戦いつつ、危なくなったら協力プレイでガンガン行こう」


了解ヤー


別に狩りに行くわけでは無いのに、何でガンガン行かなきゃいけないの? とりあえず命を大切にだろ。いや、それはどうでもいいのだけどいよいよ決勝戦が始まるのか。ここまで、いやこの先に行くのが俺とイオリ先輩との約束だ。

それにしても、シルビアがリーダーのチームが強敵になり得るとは思わない。前の時に一緒に肩を並べて戦ったが、正直ティアの何倍も弱かった。それがこんな少しの期間で強敵になりえるのはほとんどありえない。


「一応、油断は禁物な?」


しかし何事にも油断は禁物だ。前に大輔とまなかの3人でゲームの勝負した時には、楽勝で勝てると思って気を緩めていたら完全に負けた。ボコボコにしていたと思ったのに、全くの互角から歴然の差へと……

あの惨劇は、ゲームが好きな俺を1週間ゲーム恐怖症にするくらい酷いものだった


「了解だよ、イツキ君。ヘルプには出来るだけ答えるつもりだ」


「あっ、ボクもイツキの後ろを守るくらい出来るから!!」


「わ、私も……」


そこでティアの言葉が途切れる。仕方ないかもしれない。自分の気持ちを抑えて戦えるかが不安な以上、ここでセイウェンやアイリと張り合っても仕方ない

そう思ってるのか?


「なぁ、ティア?」


「なっ、なによ!!」


少し涙目になりながらも、こっちを睨んでくるティア。いつもの強気な態度を崩すまいとしているのが目に見えて分かる。

そもそもシルビアのあんな挑発に乗ってしまったのは、プレッシャーが大きいと思う。だって最初に会った時はそこまで挑発には乗っていなかったから。この大舞台と、色々なプレッシャーがティアの心を押しつぶしかけているのは間違いない

だったら、俺には何が出来る? そう思った瞬間には、俺の体は動いていた


「キャッ!?」


『イツキ(君)!?』


何故か俺はティアを胸の中に抱いていた。似ているんだ、コイツは。あのツンツンしていた俺の幼馴染に。何処までも人に弱い所を見せないで、いつも自分だけは強がって。どんな事があっても、いつも自分は平気な顔をしているアイツに

地球に居た頃の俺は、アイツに何もする事が出来なかった。そしてそのまま……

だからこの世界では、今は、ティアの力になりたいと思う。まぁティアだけじゃないけどな


「ティア、お前はいつも通りやってくれればいい。何でそんな気負う必要があるんだよ? シルビアなんかお前の相手じゃないだろ? だったらお前はお前の敵に集中しろよ。それとも俺のご主人様は、こんな程度の事で音を上げる程のへタレ貴族なのか?」


「……こんな時だけ。バカぁ」


泣いた後で顔が赤くなりながらも、目を擦りこちらを見るティア。これが本当に正しい判断だったのかは分からないけど、一応ティアが普通になったからひとまず大丈夫だろう。

もし何かあったらフォローしなくちゃいけないけど


「ん? なぁ、ティア?」


「グスッ……なによぉ」


何処かの主人公みたいなセリフを吐いた後に、俺は不意に1つの違和感を感じた。それはほんの些細なことなのかも知れない。俺以外だったら、まず気付く人は居なかっただろう。しかし俺は気付いてしまった


「お前、胸を何かで大きく見せてるだろ? 何か詰め込んだりしてさ」


「なっ、なに言ってんのよ!?」


そう、俺が感じた違和感。それはティアの胸がいつもよりも少し大きい事だ。

オート乳センサーの付いている俺なら分かる。いや、それじゃ無くても色々な事でティアの生乳を知っている俺が断言する。絶対にこの成長はありえない

まず胸の成長は第2次成長期から始まるものであって、確かに年齢的には発育するものだがティアの発育状況は完全に巨では無く虚のはずで(ry


「なぁ、偽るなよ。お前はお前のま「バカァ!!」へぎゃっ!?」


俺はティアの素晴らしい右フックで一瞬意識を失う。壁に一直線に吹っ飛ばされて、そのまま頭を強打したんだ。1分間の記憶が一気に消去されたのは当然の事だろう

えっと、俺は何をしていたのやら


「いつつぅ。なんか俺やったかなぁ? なんか頭が激痛で何も思い出せないんだけど?」


「知らないわよ、バカぁ!!」


何故か怒りながらそのまま控え室を後にするティア。何故か後ろからの視線もトゲトゲしいのはなんでだろう? 確かティアを元気付けようと思ったところまでは覚えているんだけど……?




「さて、続いては『紅』の選手の紹介だァ!!」


その宣言に続いて、黄色い声援が辺りからこだまする。しかしウチのチームで、その声援に震えるものは誰1人としていない。皆正直観客なんてどうでもいいんだ。


「さて最初は本人からの希望で1番最初に。いつも影でお嬢様を支えるスーパー完璧メイドヨミちゃん☆ さぁ、お嬢様への罪を数えなさいッ!! 『ヨミ』」


「竜巻は出しますけど、ババ抜きですよ?」


意味は分からないでもないけど、ネタがッ。とりあえずツッコミますけどねぇ!!


「はいお次は、ボクっ娘として学園でファンクラブが出来ているとの噂。持ち前の器用さでどんな相手でも撃ち抜いてみせる『アイリ・クラン』」


「にゃははは。ボクは全部撃ち抜いてみせるよ」


「そしてそして。以前は孤高の戦士。現在は紅のまとめ役でもあり、暴走すると手の付けられないクールな剣士。その刃に映すものとは? 『セイウェン・コウラリス』」


「ふむ、過度な期待はしないで欲しいが。出来る所までやってみよう」


紹介をされても動揺する事無く、2人が舞台へと上がっていく。もちろん2人とも武器は既に展開準備を済ませてある。魔力もかなり解放されている


「お嬢様、いいやそんなそぶりは一切見せない。従者が俺だったらなんて思った事は数知れず。強力な魔法は、前衛を補助する大きな力『ティスティア・ナフィー』」


「ふんっ、どうでもいい説明は終わらせて。早くこの試合も終わらせたいのよ」


何故か先程から怒っているティアも、みんなの横へと歩いていく。何故怒っているのかはわかんないけど

とりあえずいつもの彼女みたいで安心はした。別の不安要素はあるのだが


「そしてお待ちかねのリーダー。入学から色々な伝説を作り出し、我らが男なら嫉妬の対象間違いなしっ! 最強、これ以外になんと例える事が出来ようか!? 『イツキ・ジングウジ』」


「いや、別に最強じゃないですけど……。ただちょっと強いだけで」


なんて事をイオリ先輩は言ってくれるんだ?

ほらっ、何か色々な方面からの視線がきつくなったじゃないかぁ!!


「それじゃあ両チームとも、指定の位置について?」


そんな事は構わないといった目でこちらを見て、それから何事も無かったかのように進行を続ける。そこがイオリ先輩のいい所であり、悪い所でもあるような気が……


気にしてもしょうがないので、俺達はフォーメーションで並ぶ。

俺とセイウェンが前衛、ヨミは中間、そしてアイリとティアが後衛。何故ヨミを中間に置いたかと言うと、彼女のスピードはこのチームの中でも1、2を争うほど早い。だから前衛を3人にするよりも、初撃を見てから移動した方が絶対に効率がいいと思ったからだ。前衛でアレば、何かがあったとしても自分の力で防ぎきらなければならない。しかしヨミは隠密行動や、スピード勝負を得意とする。だからあまりダメージの多い事はさせたくない


そして俺達がポジションに着くと、相手も準備が終わっていた


「ふんっ、ティスティア様が相手では無いのか」


「にゃはは、ゴメンね。ボクが相手で」


「なるほど、俺様の相手は女剣士であるのか」


「貴様の様に、剣士を侮辱しているような格好をされるとむかつくのだよ」


「えっと、まぁ、よろしくお願いします」


「私は私の相手に集中すればいい。私はやるんだ」


「あ~ら、私の相手はティスティアじゃありませんの?」


「失礼を承知で申し上げます。アナタはお嬢様の相手にはなりません。それにお嬢様を侮辱した罪、体で支払ってもらいますよ?」


「なんや、ワイの相手はイツキか? まぁせいぜい、いい戦いにしよや。よろしゅうな?」


「望む所だ、キヨル!! こんなに早く、お前と戦えるとはな!!」


みな、対戦相手に思い思いの言葉を発する。そして沈黙

ここは決勝戦なのだ。この1年生の中で最強のチームを決める戦い。それを観客を含め、皆が固唾を呑んで見守る

そしてーー


「学年別トーナメント決勝戦、開始ッ!!」


イオリ先輩の一言で、その戦いは始まった

キャラクターの更新はもう少しお待ち下さい。


はい、というわけで最新話です。色々大変な時期を乗り越えて、やっと更新できました!! 何があったかは活動報告を見てもらえれば分かると思います。


さて、少し補足。イツキがあのままカッコ良く終われば良かったと思った人が居るでしょう? しかし、イツキはあくまで羨ましいけど少し残念な主人公設定ですのであのまま終わるのは……。なんか許せなかったんですね、私的に

まぁ久しぶりのティアデレを見れたので、みんな許してくれますよね?


次回からは決勝戦です。主人公達が強くなったのはもちろんですが、注目は敵のチームの強さ。あれから何処まで強くなっているのか? そこを中心に書いていきます。

それでは、また次回!!

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