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紅の術者  作者: 結城光
第1章・2節 学年別トーナメント編
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第36話 あぁ、パシリってこれの事なのね

「よしっ、今日はこの位かしら。はい、みんな集まって~!!」


ヤスラ先生の大きな声で、俺達はやっとの思いで訓練を終わらせる事が出来る。最近は何故か知らないが、試合前の大事な時期のはずなのに以前よりも練習量が増えた気がする。確かに2回目のチーム内での試合は弱点とかを見つける事も目的の1つだったけど、ここで怪我したら終わりなんじゃねぇの?


まぁヤスラ先生曰く、こんな事で怪我しているようだったらこの先は無いらしいけど


「いつもよりも1時間以上早く切り上げてるんだから、もっと嬉しそうな顔をしなさいよ!!」


「だって、ねぇ?」


みんな思い思いの顔をする。唯一いつもと同じように憎たらしい笑顔をしているのはヨミだけだ。それも俺に向かってな


「前日くらい休ませて貰えると思ったのに、なんか最終日が一番内容濃くないですか?」


「ボクもそう思った!! なんでいきなり上級魔法の練習されられてるわけ?」


「私なんか常時鳳雨を開放状態でやらされたのだ。少しアッチの世界が見えたよ」


確かに酷い。無理に魔力を使わせているようにしか思えないような訓練だった。

でもな、お前達よりも俺の方が絶対魔力使ってるからな。


「まぁ、待てお前達。俺なんか「私なんて風速瞬動を常時発動させられたまま、魔力を発動させにくい10kgの装置を付けられました」ふ、ふ~んでもな」


そういいかけた時には俺の目の前に短剣2本が、頚動脈と心臓めがけて飛んできていた。俺はとっさにその2本のうち頚動脈に来た方を避けつつ、心臓を狙っていた方を障壁で防御した。

場所的には完全にこの世からサヨナラコースだったが、いつもよりも殺意がこもっていなかった。ヨミもやっぱり疲れてるのか?


「お嬢様はどうでしたか?」


結局俺の話よりもティアの話が聞きたいから短剣なんか投げやがったな?

後で後ろからこの短剣投げ返してやろうか


「えっ、私はひたすら上級魔法を撃ってたわ。遅延魔法を10個位発動させながらね」


「けっ!!」










●紅の術者

第36話 あぁ、パシリってこれの事なのね















「やっぱりお前達まだまだだな」


そういいながら俺は胸を張る。悪いがそんなぬるい事だけで、疲れたとか抜かしてるんじゃねぇよと

俺は何気に別の教室に移動させられて、そこでやってたんだぞ!? まぁ、ヤスラ先生以外には誰も来なかったから集中できたけど、やっぱり1人になると悲しいって事が分かった


「そこまで言うのならクソ虫ことイツキは何をやっていた?」


「俺はなぁ!! 換装した状態で魔力を常時吸い続けられる魔法石がある部屋で、魔力の付与された攻撃は絶対に効かないモンスターと魔法のみで戦ってた」


「はぁ!? そんなの絶対に倒せるわけ無いじゃない!!」


「まぁそこは頑張ったんだよ」


確かに単純に魔力のみでは倒せないだろう。しかし魔法というのは魔力を使って普通なら出来ない事をする方法だろ? その気になれば色んな事が出来る

しかし、ぶっちゃけ面倒になってきた俺は最後の方になるとそのモンスターが向こうに出来る範囲以上に魔力を付与して攻撃して殺した。そしてヤスラ先生に見つかった


「途中せこい事してるのヤスラ先生にバレて、なんか良く分からないモンスターとか闇魔法でうじゃうじゃ沸いてくる影とずっと戦ってた」


「だってイツキ君、魔力の無効化の限度を超えた魔力を使って攻撃してるんだよ!? そんなの訓練の意味を成さないから、怒って倒してもずっと沸いてくる闇の影の魔法を何十個も置いておいたわ」


「えっ……」


「トラウマになるぞ? 自分の立っている場所以外がほとんど闇で覆われてたら」


あの絶望感は半端ない。どれだけ倒しても周りは闇。自分が立っている場所には本当に地面があるのかどうかも分からなくなって来て、わけの分からない所から攻撃が来たら発狂するって

俺は光属性の上位魔法で一瞬で闇を払ったけどね。それをやってなかったら結構マジでやばかった


「魔力を多く使わせたのは、それ位疲れてた方がすぐに寝るでしょ? 変に緊張して寝られずに、明日不調でしたなんて言われたらたまったもんじゃないからね」


「一応、優しい所もあるんですね」


「あらっ、私はいつでも優しいつもりよ?」


口元に指を当てながらそういうヤスラ先生は、正直少しエロかった。なんていうか2●歳とは思えないし、ふざけている時よりかは大人な感じだった


「というわけで、いつもよりも早く終わったんだから早く寝て明日に備えなさい。以上、解散!!」


その言葉だけ言うと、そのままヤスラ先生は教室から出て行ってしまった。何故か上機嫌で歩いている所を見ると、この後絶対飲む気だ。明日の大会は一応顧問も出席する事になってるんだけど、本当に大丈夫かな?

酔いつぶれて、そのまま来れませんでしたとか洒落にならないからね!?


「さてっ、私達はどうしましょうか?」


「ん~、ボクはご飯が食べたいかな。セイウェンは?」


「私はシャワーを浴びたいな。動き回って少し汗をかいてしまったからな」


「みんな、大事なことを忘れているわ」


そう言い出したのは、さっきまでげっそりした顔をしていたティアだった。何故か目をキラキラさせていて、若干だが俺の近くに寄って来ている。

うん、ティアはテンション上がると後先考えずに行動するのは悪い癖だ。俺の前方の紫色した髪の毛のヤツが「イツキ殺す……イツキ殺す……イツキ肉片残らず殺す」なんて事をずっと呟いて居る事に気付いてな? お前のメイドだろ?


「ん? なんだね、ティア君」


「明日は大会なんでしょ? だったらやるべき事があるわ」


「あぁ、そうか!! 明日の大会に向けてお祈りするんだね。それならボクがいいお祈りの方法教えてあげるよ」


「ちっがーーーーう!!」


何1人で興奮してるんだか? 明日試合って言うだけで、別になんにもする事なんて無いだろ。さっさと飯食って寝ろよ。


「大会の前日って言えば、明日に向けてみんなで団結力を高めておく必要があるとは思わない?」


「お言葉ですがお嬢様。このチームは約1名を除いて団結していると思いますよ?」


あーあ、ヨミ。どうせその約1名って俺の事なんだろうな。そうやって俺ばっかりハブにしやがってぇ

それそろ俺だって泣いちゃうぞ? そんな言葉にいつまでも耐えれると思うなよ


「でも、でもねっ。やっぱりそういう事は必要だと思うんだ」


「ふむ、結局ティア君は何が言いたいのかね? 先が見えて来ないんだが」


「だから、これからみんなで前夜祭みたいな事をやろうって言う事よ!!」






「アレッ? イツキさんじゃないですか?」


「どうしてこんな所にいらっしゃるのですか?」


「うん、俺も聞きたい。なんでこんな所に居るのか」


俺が居るのは学園内のスーパー的な所。どうしてこんな所があるのかは今はどうでもいい。どうせ寮で生活している人が居るから、自炊も出来るようにしているんだろうな。

だがしかし、だがしかしだ。何故俺がここにいるかという理由は解決されてない


「そんな溜め息つくな。私もイツキと一緒で滅入っているんだ」


「さようか。俺はその10倍は萎えてるから心配するな」


隣に居るのはヨミ。ティアが前夜祭的な事をやろうと言ったのは覚えている。その後要るものを買いに行く話になって、でもセイウェン達が風呂に入りたいって言い出したんだ。

そして気がつけば俺とヨミは部屋の外に出ていた。


おやっ、何かがおかしいぞ? 何で誰が買いに行くとか決めねぇんだよ!? 確かに女子の風呂は長くて、男の俺はすぐに入れるからか。でもってヨミはティアのメイドという事だし、自分がみんなと同じ風呂に入るのを躊躇ってこっちに来たのか。

でもって俺の意見は? 何処に俺の意見があったのかなぁ?


「とりあえず何買うんだ? あんまり騒ぐ事も無いだろう」


「そやね」


「なんで関西弁なんっ!!」


そう突っ込むとヨミはニヤリと笑いながら関西弁って何と聞いてきた。そういえばここは地球じゃなかったな。それでも事情を知ってるヨミは、わざとらしく笑いながら隣をちょこちょこと付いて歩いてくる。


「ケーキと適当なモノ買っておけばいいのか?」


「飲料水もいるでしょうが。全くこれだからイツキは……」


「悪かったな。ほらっ、お前だって菓子入れ忘れてる」


「むむっ……」


俺らは嫌味などをいいながら、それぞれのかごに必要なモノを入れていく。傍から見てると俺達はコントでもしているように見えるんじゃないのか?

ヨミと話している時だけ、こうやってボケとツッコミが成り立っているような感じになるんだよ。ヨミは俺の事大嫌いのはずなんだけどな、こうやってやってる時だけ素のヨミを見れるような気がする


「ねぇねぇ、イツキさんの隣に居る子誰?」


「さぁ? なんかメイドの格好しているから、イツキさんのメイドじゃない?」


「もしかしてアッチな関係持ってるのかなぁ?」


「うっそ!? でも、彼女結構可愛いからありえる……」


そんな事が何処からとも無く聞こえてくる。確かにヨミはパっと見たら可愛いと思う。でもなぁコイツの本性を知った時には絶対にそんな事は言えないと思う

あっ、でも分からない。コイツ他人には何故か知らないが、猫被って真面目な態度で接するからな

なんで俺は初対面でもタメ口だったのかわ…… 分からないでもないけど


「だってさ、ヨミ」


「なんなら今からやりますか? 私ならいつでもおっけーですよ」


顔を赤らめるわけでも無く、むしろ堂々とした態度で胸を張っているヨミ。まぁこれは1つ、コイツの良い所なのかもしれないな。あんまり感情を出さない性格だから、外から分からないって可能性も否定できないんだけどな


「時にイツキ」


「ん? なんだ?」


「いや、なんか思いつめている事あるなら聞いてやろうと思って」


何言ってるんだ、コイツ? 平気で俺を殺そうとしていたクセに、可笑しな事を言いやがる。そうか分かったぞ。コイツこうやって俺と仲を深めた後に、後ろからぶすりと刺すんだろう。そうかそうか、絶対にそんな手なんかに乗ってやるもんか。

俺はなぁ、一応一回死に掛けてるんだ。この世界でも死んだらもう俺、生まれ変わらないからな

絶対に神様達の居る所で暴れまわってやるんだ


「いきなりどうしたんだよ?」


「いつもの冗談の雰囲気はおいといてぇ~な?」


そういいながらヨミはいつも以上に真剣な顔で俺を見つめるヨミ。本当はコイツヨミじゃないんじゃないか? そうだな、おそらく機関のエージェント的な何かじゃないか?


「最近イツキの様子がおかしい。いつも1人になると何かを考えてるような。こうやって喋っていても、やっぱり少しおかしい所がある」


「ふ~ん」


何でそんな事が分かるんだよ。最近は別にそこまで気にしているつもりは無かったんだけどな

もういっその事忘却呪文でも使って忘れるか?


「それは気のせいだろ。それともなんだ、最近のヨミちゃんはみんなに優しいまじかるヨミちゃんになるのか?」


「……そうですか。そうですよねぇ~。この天使のヨミちゃんが慈悲の心でそういう言葉を投げかけても、こういうんですからねぇ。もう一生ヨミちゃん優しくしてあげないぞっ☆」


「おーい、ドッキリカメラさ~ん。そろそろ出てきて下さい~」


そうやって普通に喋って、そのまま買い物は程なくして終わった。なんか色んなモノを買い込んだ気がするが、浮遊魔法を使って全部空中に浮かせていたからなんら問題は無い

ってか何気にヨミとこうやって喋るのは初めてかもしれない。喋るとああやってネタに走るか、罵倒されるか、殺されかけるか…… まぁさっきもネタに走っていたけど


「さてっ、もう寄る所は無いよな?」


「これだけあればいいでしょう。それともパーティグッズが要りますか?」


そういってまたまた可愛いポシェットから、わけの分からないメガネを取り出してカッコよく決めたポーズをとる


「お前はおほかっ!!」


「あいてっ」


俺はそう言いながら頭にチョップし、そのままメガネを取る。あのポシェットは時々四次元のタヌキさんポケットと同じではないかと思うくらい、なんでも出てくるのだが……?

アイツ実は闇魔法を使って、色々やってるのか。いや、闇魔法が使えるなんて聞いてないし


「そういう小ネタはいいから、さっさと部屋に戻るぞ?」


「今の発言だけを聞いたら、付き合って同棲しているカップルみたいだ」


「だからソレが要らないんだって!!」



今回は初めてのヨミちゃんのターン回でしたね。

いや、ヨミは結構好きなキャラなので毎回ちょこちょこ小ネタ要員として入れてたんですけど、こういう2人の回を書く機会が無くって……

ホントはもっと絡ませたいんですけど、それはまた次回というわけで


次は前夜祭だぞ!!

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