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紅の術者  作者: 結城光
第1章・1節 学園編
41/66

第35話 もうすぐ、だよね?

「どうしたの、イオリ君。それに生徒会のみんなまで。もうすぐ学年別トーナメントだから色々仕事があるんじゃないの?」


ため息をつきながら、教室に入ってきた2年生徒会メンバーに声をかけるヤスラ先生。そういえば俺達の顧問を引き受けているけど、この先生一応学年主任兼1年Sクラスの担任だったんだよな。まぁSクラスの担任なんてほとんど肩書きだけで、実際やる事なんてほとんど無いだろうけどね


「まぁそれはアゼルとシェイルが色々やってくれているから大丈夫ですよ。なんせ今年は沢山収穫物が多そうですからね」


「にゃはははっ!! セシリア先輩登場なのだーー☆ イツ君むぎゅー」


「ぎゃふっ!?」


イオリ先輩の後ろに隠れていたセシリア先輩が突然アゼル先輩を飛び越え、俺の真正面にダイブする。えぇ、分かってますとも。あんな2つのメロンをぶら下げたような方がダイビングで俺の所に飛んでくるわけですよ。もちろんメロンさん達はポヨンとか言う擬音語が似合う勢いで揺れている

そして俺はおっぱいが大好きです


もう受け止めるしかないじゃなかよぉおおお!? 身長は俺の方が高いはずなのに、こんな時だけ高めにジャンプしてわざと俺の顔に胸が来るようにしてね

当然押し倒され、胸に圧迫されながら俺はもがく。そして他の人たち(主に紅メンバー)激怒

この方程式はいつになったら証明されるんでしょうかね


「離れてくださいよセシリア先輩。アナタのその無駄な肉・・・・でイツキが死にます!!」


「そうですよ。私だってアイリみたいに言いたくありませんが、その余分な脂肪がイツキを殺しかけてます。さっさとどいて下さい……」


出たよウチの貧乳2人組み。いや、正直セイウェン以外は残念ながらC以下と言う貧乳の皆さんなのだが、ヨミ自体その事を気にしていないので実質2人としてある。

ちなみに紅バストランキング(貧乳度)は


アイリ>ヨミ>ティア>ヤスラ先生>セイウェン となってる。どうやって測ったかって? 俺の特技を見てみろ。つまりそういう事だ


「あっ、悪い悪い。なんか久しぶりにイツ君に会った気がしてつい、ね?」


「危ない……死ぬかと思いましたよ。まぁでも……柔らかかったです」


「チッ」


「チッ」


あからさまな舌打ちをする2人。その後ろでセイウェンが何がブツブツ呟いていたが、俺は何もキイテナイヨ? アイツを殺せば私の…… なんて物騒な事言ってる訳無いじゃん。





●紅の術者

第35話 もうすぐ、だよね?















「で、話ってなんですか? 重要じゃないなら電話でも良かったんですけど?」


「まぁそれほど重要ってわけじゃないかな。ただイツキ君達の顔を見に来ただけだよ。トーナメントの最後でぶつかる相手が、どれほどの状況かをね」


その言葉を聞いた瞬間、俺を含めた全員の顔がこわばった。それはこの話を聞いたからではない。この話は以前にも冗談混じりで聞いていたので別段驚くようなことではないから。

違うんだ、明らかに雰囲気が。いつも冗談を交えながら話してくるイオリ先輩が、いつもクールでストッパー役のアゼル先輩が、今時風な感じだが仕事はしっかりとやっているシェイル先輩が、そして何よりさっきまでふざけていたセシリア先輩が……


みんな完全にいつもの表情ではない。普段は押さえ込んでいる魔力をかなりの割合出しているし、明らかに俺達を倒すという目で見ている。


「……なるほど。冗談は抜きという事ですね」


「そう取って貰って構わない。それだけ俺達はこの大会を楽しみにしているんだよ。君達が入学してきてからこの日までずっとね」


「だったら……」


俺はふっと息を吐く。その仕草に全員が我を取り戻し、そして自分達の目の前に居る先輩達を見据える。

いつも表情が無いような顔をしているヨミですら、さっきまではあっけに取られたような顔をしていたんだ。まぁ今はみんな笑っている


そしてそのまま全員が同じように、抑えてた魔力をいくらか開放する


『ッ!?』


ミシミシと軋み始めるガラスに、一瞬だが驚いた表情を見せる先輩達。正直魔力の面では先輩達よりも絶対こっちの方が上だ。俺は規格外だし、セイウェンもかなり多い。アイリはまだ抑制用の呪文をかけているがそれも簡易版になったらしくかなりの魔力を放出している。ティアとヨミはセイウェン達よりかは魔力は少ないが、それでもおそらく先輩達に引けを取らないだろう。


「全力でお相手しますよ。絶対それまでは負けません!!」


「……ふっ。そうだね、ホント楽しみだよ。君達紅のメンバーは」


結局イオリ先輩が来た理由ってこれだったのか? 自分達は本気だから、お前達も本気を出せよと。前回の時も結構本気で言ったのに、俺達が冗談だと思ったから今回は色んな意味で変わってもらいに来たと。

でも正直たった一回の為にここまでするか? イオリ先輩達の目的には、何か裏があるように思えるんだけど?


「まぁ、半分は正解かな」


「ッ!? イオリ先輩もしかして……」


「ん? どうしたのかな、イツキ君?」


この人も人の心の中を読むのか……? もう俺も同じように、人の心を読むぞ。読心術なら創造能力で作れるだろうしな


「……君達には戦ってもらわないとね。色々と」


「へっ? 何か言いましたか?」


「いーや、なんでもない」


結局先程までの殺気と呼べるのかどうか分からない気は、何処かへ消えてしまっていた。正直イオリ先輩の空気を変える雰囲気は凄いと思う。これが皆を束ねているモノの雰囲気かと思うと……

まぁ良い意味で雰囲気は変わったのだが……


「それよりも私はイツ君と遊ぶのぉ~!!」


「だから、イツキからぁ」


「離れて下さいってばぁ!!」


「ふんっ、下らん事を」


「まぁまぁアゼル先輩。私もあそこには混ざろうとは思いませんがね。まったくティア君達は」


「ふふ~ん♪ 私もあそこに混ざってみようかなぁ。ねぇ会長?」


結局こうなるのか……

そんな風景を傍から見ていたヤスラ先生は、今日の授業は無理そうだとすぐにあきらめていたのだった。


そういえば教室を去るとき、イオリ先輩が俺に近づいてきて


魔法喰らいエンペルゲレトはあまり使わない方がいいよ。使うときはあくまで身体強化・・・・のように見せるんだ」


「えっ、でもヤスラ先生は……」


「あぁ、彼女は分かっていないんだろうね。珍しい魔法を開発したモノがそのまま王宮で他の魔法の開発をさせられているのを。かなりきついらしいぞ? イツキ君の場合は、人体解剖の後に何をされるやら」


「場合を考えて使います……」


「ははっ。出来れば俺達と当たる時まで残しておいて欲しいものだね」


そういって出て行ったのだった。なんだよヤスラ先生、みんなの前で使っても大丈夫って言ったじゃんかよぉ!! そんなに俺を王宮送りにしたかったのか、アンタは。いいや、どうせ俺がうまくやる事を前提として言ってくれてるんだろうけど、その信頼は大きすぎますよ






そんなこんなで結局大会まで残り2日。俺達は再び教室に集められた。

あの後結局イオリ先輩達は大会の準備が忙しいという理由で、ずっと生徒会室に閉じこもりっぱなしだ。そしてあのうるさかったシルビアも、なんだかんだでチームのヤツとうまくやっているようだ。いや、本当かどうかは知らんが


「はいは~い。それじゃあ今まで出来なかった、大会の説明をしましょうかぁ~!!」


「なんかいつに無くテンションが高いですね、ヤスラ先生」


「あったり前でしょ!! やっと私が教員らしくアナタ達に説明できるのよ」


「そういえば実戦が大事とか言って、ろくに教えてくれませんでしたよね。今回の大会の概要」


「お嬢様、こちらに資料と過去3年分のデータが」


いつも通り俺達4人が座っていて、ティアの後ろにヨミが立っている。そのヨミが何処から取り出したか分からないポシェット的なモノから、1つの紙を取り出した。どうやら投影型の魔方陣が組み込まれているらしく、ティアは少し目の前に映した後すぐにそれをしまう。


「うぅ……ティアちゃんはそうやってすぐ先生の仕事を取ろうとする。ちゃんと資料くらい用意してあるわよ」


そういって少し涙目になりながら、ちゃんと用意してあった資料を俺達5人に配っていく。そこにはとりあえず大雑把な説明が書かれているようだが、おそらくこれはあくまで資料でちゃんとヤスラ先生が説明してくれんだろうね


「とりあえず2日後、つまりは明後日開催される『学年別トーナメント』よね。初日はアナタ達1年生が主役でやる事になるわ」


学年別と言う様に、1年生~6年生までの各学年が1日毎にトーナメントをするらしい。しかしこれはSクラスだけの話。他のクラスは別の日にやるらしい

何故分けているのかというと、もちろんSクラスが特別なクラスでありその学年の頂点であるからだその年の学年の能力を見る絶好の機会なんだと


それに何かあれば、即戦力として扱うことが出来る人材を見極めておくのもあるらしい。主に魔獣退治とかだろうけどな


「で、何か質問がある人は挙手!!」


……


「何か質問がある人ッ!!」


……


「ある人ぉ……」


(イツキが言いなさいよ!!)


(イツキ、やれ。お嬢様も言ってる事だし)


(ここはイツキを使うべきだ!!)


(悪いね、イツキ君。私はあんまりこういった事に慣れてないんだ。済まないが頼む)


はいはい、また多数決が絶対なんですね。男が優勢だった時代もどうかと思うけど、女がここまで優遇されるのもどうかと思う。別に特殊兵器を装備出来るのが女だけじゃないんだからさぁ


「ヤスラ先生。イオリ先輩達はいつ出てくるんですか?」


「あぁ、彼らは決勝で勝ったチームとエキシビションマッチとして戦うのよ。つまり学年1のチームとの戦いって事ね」


「優勝チームにはもれなく2年生徒会への挑戦権と、生徒会に入れる確立が高くなるお墨付きってわけね」


そういえばそうだったな。この戦いは、外の人間にはこの学年がどういう力を持っているかを示すモノで、中の人間には生徒会の人間としてふさわしい者を選ぶ材料になる。それで去年イオリ先輩達4人は生徒会メンバーとして選ばれたんだ。

正直俺達は見せ物みたいになってるけどな


「ねだるな、勝ち取れ。さすれば与えられん……か」


「ん? 何その言葉?」


「まぁ俺の独り言だ」


次の説明はまだなんだろうか? ヤスラ先生質問されて嬉しそうな顔しないで下さいよ

いつもはクールな感じで居るのに、先生らしい事をする時だけこうなるのか?


「で、気になる対戦表を一足先に貰ってきました!!」


『おぉ!!』


説明らしい説明もあまりせず、1番の目玉である対戦表を取り出すヤスラ先生。それはもう少し大会の事を説明してから、テンションがクライマックス状態になった所でやるべきでしょ。

まぁ俺としてはクロッドとシルビアのチームにいつ戦えるか分かるから、いいのだが


「え~っと私達が最初戦う相手は……『SSダブルエス』? なんなの、この痛い名前は?」


「一応ボク達も傍から聞けば痛い名前なんだろうけど……」


確かにそうかも知れないが、そういう事はいいっこ無しだろアイリ

えっと、それよりもクロッド達のチームはっと


「『ブラッドムーン』は決勝戦まで当たりませんね。なんというか、ですてにーですね」


「ヨミ……わざと片言で言ってるだろ」


「ククッ、イツキも少しは勘付く様になった」


いや、お前……もういいや。ツッコミもめんどくさくなってきたわ


「え~っと、とりあえず目標は決勝戦まで絶対に負けない。それでいいな?」


了解ヤー


「で、ヤスラ先生。大会のルール的なものは無いんですか? そこが分からないと私達としても、色々考えたい所が」


セイウェンがヤスラ先生に、結構肝心な事を聞いている。何か制限でもあったら、俺たちもそれ相応の作戦で望まなければならない。


「特に制限は無いわ。これは持っている力を全て出し切って戦うべき所なんだから。あぁ、無いとは思うけど殺す事はダメよ。そうなりそうだったら私達教員が全力で止めにいくから」


「何か過去にあったんですか?」


「まぁ、ね。アレは本人達に聞いた方がよさそうだし、私の口からは何も言わないわ」


ヤスラ先生が言葉を濁す。おそらく何かしらで、殺しかけるような事があったんだろうな。

本人っていうのが、誰を指すのかは知らないが


「はい、というわけでとりあえずこんな所かしら。他に質問は?」


「私からいいかしら?」


意外にも手を上げたのはティアだった。さっきまでは人に散々手を挙げろとか言ってたくせに、今回は自分で挙げるのかよ。

だったらさっきだって挙げてくれればいいじゃんかよぉ


「戦い方はどうなるの? 私達全員が倒れるまでか、一定の人間が戦闘不能になるまでなのか」


「それは全員が倒れた時だわ。1人で5人倒す事だってありえるでしょ?」


そう不適な笑みを浮かべながら笑っている姿を見て、俺達は苦笑した。普通ならばそんな事はほぼ出来ない。しかしそれ位ヤスラ先生は、俺達に期待しているって事だ


「それじゃあ、大会までの残り2日。飛ばしていくわよぉ!!」


了解ヤー




学年別トーナメントまで残り  ーー2日ーー

もう少しだけ、準備にお付き合いください。

多分あと3話くらいで、トーナメント戦が始まると思います。もう少し早くなるかもしれないけど……


とりあえず次回は前日編と言う事を考えながら

それでは、また次回!!

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