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紅の術者  作者: 結城光
第1章・1節 学園編
38/66

第33話 何故かいきなりシリアスに!?



「さてっ、張り切ったのはいいけどやっぱり他のヤツラに見られるのはよくないな」



魔法喰らいエンペルゲレトを使ってしまった後に言ってもしょうがないけど。

いや、今なら気を失いさせればいいのか



『パチンッ』



俺はある事を念じながら指を弾く。すると目の前で捕まっていた貴族達が一斉に地面に倒れだす

もちろん殺したりしたわけではない

俺の得意ってか、俺にしかない能力である創造能力を使ったまでだ



「あれっ? イツキ、何かした?」



異変に気付いたティアが不思議そうに俺に問いかけてくる。ヨミはティアが聞いているから何も言わないが、やはり俺が何かしたと思っているみたいだ。

なんで分かるかって? だって、物凄いジトーっとした目で俺を睨んでるもん



「一応能力・・を使って俺達に敵意の無い者を眠らせた。ってかぶっちゃけ俺達と誘拐犯以外に眠ってもらった」


「だったらコイツらも眠らせなさいな。そちらの方が手間が省けましてよ?」



シルビアがロングボウをいじりながら呟く。しかしその発言に反応したのは俺だけでは無かった



「シルビア様は分かってませんね」


「なんですって!? たかが使用人風情が私に文句でもありまして!?」



お2人さん、ケンカするのはいいけど戦って欲しいんですけど? 一応目の前の3人を、俺とティアで撃退している最中なんだから……

戦いながらでも話は出来るでしょ!?



「おこがましいかもしれませんが、私から言わせて貰います。誘拐犯達は仮にもティアお嬢様とシルビア様を拉致、誘拐しようとしていたのですよ? そんな輩をただ眠らせて王国の警備兵達に引き渡すだけでは、皆様は腑に落ちないでしょう? だからイツキ的な物体が気を利かせているのです」



なんだよイツキ的な物体って? 確かに俺としても、ティアを誘拐しようとした事が許せないからヤツラの意識を残したんだけど、他の貴族の意識を消したのはただレアスキルの事を隠しておきたかっただけだし。

まぁそれも学年別トーナメントまでの話だけどな



「そこまで考えているとは、ただの貧相護衛ではないんですのね」


「だから、そう言ってんだろっ!!」



周りに居た3人の男達に、一撃を与えながら俺が答える。

本気を出す必要は無いけど、やっぱりそれなりに力を出さないとダメかな?













●紅の術者

第33話 何故かいきなりシリアスに!?











「とりあえずヨミ、俺と一緒に先陣を切って敵を殲滅するか」


「命令されなくてもやります。アナタと一緒に並ぶつもりはありませんから」


「分かってるよ……。ティアは、援護よろしくな」


「分かってるわ」



さてっと、それじゃあ俺は雷速瞬動でもして敵を駆逐しまくるか?

それとも圧倒的な質量で一気に殲滅?



「ちょっと私には何かありませんの?」



いや、それ以外にもガンドロフから何か武器を出してもらうとかあるしなぁ~。う~ん、迷う

戦う方法で迷うって、俺はどんだけ贅沢なんだよ。でも、ティアを傷つけようとしたのはヨミと同じで許すわけにはいかないって



「ちょっとアナタ、私の事を意図的に無視していますのね!?」



それじゃあとりあえずガンドロフに剣を出してもらって、換装している雷撃を纏わせる。

後は……



「えぇい!! イツキさんですのよね!? 私は何をすればいいのですかっ!!」


「えっ? あぁ、ゴメン。考え事してた」


「意図的に無視しているのかと思いましたわ。で、私には何が出来ますの?」



少し涙目になりながらも、俺が気付いてくれたことで少し嬉しそうな顔をするシルビア。

とりあえず見てみるけど、明らかにロングボウなんかを前に出すわけにはいかないし



「とりあえず敵にその矢を撃ってくれ」


「分かりましたわ」



さっきまでとは違い、目をキラキラさせているシルビア。大丈夫かよコイツ? 一応これは戦闘なんだぞ?




少しの不安を残しつつも、俺達は各々の敵を倒しにいった

もちろんシルビアも含め、Sクラスにいるという事は強いわけで……



「ガハッ……」


「やっぱり弱いよ、お前等」



最後の1人を倒し、換装を解く。

完全に俺達の敵ではなかった。1番心配と思われていたシルビアですら、楽勝で勝てたんだ。俺達が負ける以前に怪我する事すらない



「簡単に終わったな」


「そうね、ホント簡単に」



ここまで手の込んだ作戦をしてきた割に、俺達には何の策も打ってこなかった。そんなはずが無い。

しかしこの現状を見ていると、やっぱり普通の誘拐にしか見えない



「何かあるのか?」


「それは無いでしょ? だって、彼等はSクラスをただの賄賂組と勘違いしてかかってきたのよ?」


「そんなヤツらに策を講じても、豚に真珠でしょう」



確かにそうなのだが……



「シルビア、お前の意見は……」



そういいながら動こうとした時だった。

俺を含めた4人の足元に、見慣れぬ魔法陣が展開され大量の魔力が送られてきた



『グアッアアアアアアァアアアア!!』



魔法陣から放たれるのは、高電圧の雷撃。しかも降り注ぐのではなく、俺達の体を覆うように下から突き上げてくるから避けようも無い。

そこへ、見るからに怪しげな男とその護衛が出てくる。




「確かに俺達は君達を見くびっていたよ。でもそれもあんな風景を見るまでの話。あんな化け物みたいな力を見せ付けられて、何も策を講じない程俺は愚かじゃないんでね」



嫌な程の静けさはこれだったのか!? この作戦を考えた張本人が居ない。だからコイツらのまとまりが無かったのもまとめるヤツがいないから。

それなのにココへ来て、まとめてたトップが登場とか笑えないぞ。しかもこんな攻撃魔法まで発動させて



「おっと言い忘れてたが、この魔法は最初こそ俺の魔力を使っているが今はお前らの魔力を使っている。だからこの魔法が切れるという事はお前らの魔力が切れるという事だ」


「テメェ、いいの……かよ? 仮にも……誘拐、しようとしているお嬢様……達だぞ?」


「フンッ、契約者からは生きて連れて来いとしか言われてはおらん。多少の事は大目に見てくるだろうよ」



つまりは俺達さえ生きていればいいわけだ。何を考えているかは分からないが、とりあえずこの状況を打開するにはやっぱり使う・・しかない


雷撃によるダメージはぶっちゃけほとんど無い。今はダメージを受けている振りをして、この攻撃を停滞させているからな。

んじゃ、後の事はコイツを縄に縛ってから聞くとして反撃と行きますか



『パチンッ』



俺が指を鳴らした瞬間、4人の魔法陣からの攻撃が無くなる。しかし攻撃がなくなっただけで、ダメージはそのまま蓄積している3人はそのまま地面に倒れ込む



「言った矢先に全員の魔力が尽きたか。唯一お前だけはしぶとく立っているようだが?」



その言葉に反応はしない。いや、正確には言葉での反応はしない

つまり、行動でヤツの言葉に反応する



「吸収」


『換装 雷神雷化』



「たかが身体強化に名前までつけるとは。厨二病真っ盛りの少年だなぁ」


「へぇ~、こっちにも厨二病なんて言葉があるんだな」



そう言って区切りをつけ、男の方を真っ直ぐと見つめる

自信ありげな顔をしながら、4人の護衛を前につけている。護られながら偉そうにされても、そこまで怖くないんですけど……?



「しかし意外だな。あの魔法陣が、魔力を残したまま発動を終わらせるなんて」


「あぁ、あれなら俺がさっさと解除したけど?」


「へっ?」



創造能力で一発でした、はい。まずこの魔法陣を解析、そしてこれを解除する術式を検索、そして解除。この工程を一瞬で終わらせてくれるんだから、つくづくこの能力は便利だわ



「後ろでくたばってるヤツらも魔力切れじゃなくて、電撃を受けた事による軽い痺れとかだろうから後数分でもしたら起き上がってくるぞ?」


「そんな冗談なんか信じるわけ……」



ここだ。

俺はすかさず縮地をして、4人の護衛だけを瞬殺した。もちろんリーダーだけはちゃんと無傷で立たせてある。



「後もう1つ。お前が言ってたこの術、身体強化じゃないから」


「なにぃ……?」



恐怖が顔に滲み出てるぞ、コイツ。お前がした事よりも優しいのに、なんで顔が青ざめてるんだよ

自分でやってきた事はそっちのけで、俺が反撃した途端この顔

まぁ、大方俺が何をしたのか分かって怖くなったんだろうけど



「どうせ予想はついてるんだろ? そうだ、魔法を取り込んだんだ」


「ば、化け物が……ッ!!」



そういって何かの魔法陣を発動させる男。そしてその前に立つ、怒りのボルテージがMAXに行きそうな俺。

必然的に魔法陣に飛び掛って、そのまま破壊しようとした次の瞬間


耳元でビュンと言う音が、掠めていった。ってか何か頬から血が出てるし……

後ろに伏兵でも居たのか?



「私も居ます、のよ……」



そういって座ったまま射撃している。頬擦れ擦れを通ったのはわざとなのか分からないが、男が握った棒にシルビアの放った矢が命中している。

しかし俺の予想だと、シルビアはアイリと同じで矢に魔法を付与させて放つモノだと思ってたのに、矢は至って普通だ



「へっ、皆化け物と思ったらお前だけは凡人か。だからターゲットにされたんだろうなぁ!!」



そう言いながら魔法陣を発動させていく。魔法陣の前には大きな炎の球体がいくつか発動していて、今にもこちらに放とうとしている

しかし俺は動かない。なぜならシルビアが笑っているからだ



『火よ……』



かすかに聞こえてきたのはシルビアの呪文詠唱の声。しかし今から発動させたとしても、俺に攻撃が当たるのは必須……

はっ!? 俺に攻撃が当たるなんてお構い無し!?



「待てよ、シルビア!? いくら俺が嫌いだからって、俺を燃やして「うわぁあぁあああ!?」へっ?」



俺が必死にシルビアを止めようとした時に、突然後ろから男の悲鳴が聞こえてきた。

後ろを見てみると、男の杖から炎が出てきて燃えている。つまりは魔法発動体が消えているのだ



「な、何が起こったんだ?」



そういいながらシルビアを見ると、案の定ニヤリと笑みを浮かべている。

さっきまでの、ヘタレシルビアさんは何処へ……?



「私の魔法は少々特殊ですの。あの放った矢に魔法を付与させるだけではなく、放った矢に魔法を送る事も出来ますのよ。つまりはあの矢自体が魔法発動体と言った所ですわ」


「へぇ~、すげぇなシルビア」


「当たり前ですわ。わたくしはシルビア・フォンレットですのよ?」



なんていうか、シルビアの魔法の発動の仕方は遅延魔法に似ている。

遅延魔法ってのは魔法を詠唱しといて、ある言葉を言うと術式が開放されるのだ。それに対してシルビアの魔法は、ある場所に矢を置いておけば自分の好きなタイミングでその矢に魔法を付与する事が出来る。


まぁなんていうか……当たらなければ、どうという事は無いって感じ?




「でもまぁ……」



握り拳を作りながら振り返る。

そこには完全に計画の破綻した男が、ただ恐怖に怯えるかのような顔をしている



「お前から聞き出さなきゃいけないよなぁ? 依頼主の事」



一瞬で男の近くに近寄り、胸ぐらを掴む



「ヒッ……」


「ほら、どうしたァ? 命は惜しいだろォ?」


「そ、それは……」



確かにいくつかの修羅場は越えてきたのか? ちゃんと依頼主の事は喋らないように心がけているな

でも、大体こういうのは痛みに弱い。しかも精神的ではなく肉体的な痛みに。


……って漫画で読んだ気がする


とりあえず俺は換装している電流を流して、気絶させないように痛めつける



「ガァッ!?」


「ほぉら、お前が俺達にやった事と同じだ。まぁ、もっと俺達の時は激痛だったがなァ」


「い、命だけは……」


「だったら喋れよ。お前に誘拐を命じたヤツの名前をッ!!」



より高圧の電流を流して痛めつける。

うん? いつもよりもダークな感じになってるって? そりゃそうだろう。だってティアとヨミ、それにシルビアや関係の無い人達を巻き込んでおいて自分は高みの見物なんてしてるヤツが居るんだから。

俺は絶対ソイツを許さねぇ。自分の目的の為なら、他の人の事なんか考えないようなヤツなんてよぉ



「分かった、喋る。だからこの手を離せ、いやいや離して下さい」


「……あぁ」



雷の槍を展開しながら男を離す。それを見た男は一瞬たじろいだが、再び口を開ける



「実はなぁ、お前達を誘拐させようとしたヤツ。お前達と同じく……」


「オイ? どうしたんだよ?」



肝心な所を話す寸前で男が固まった。比喩表現じゃない、本当に固まったんだ

表情や眼球の動き、何から何まで固まった。唯一動いているのは心臓くらいだ



「オイ、なぁオイッ!!」


「ぁぁぁああああああああああああ!!!!!」



悲鳴を上げながら後ろに下がっていく男。時より周りを見渡したりするものの、何かと目が合ったかのようにすぐに視線を逸らす

普通じゃない。コイツに何が起こってる?



「ヤメロ、ヤメロよぉ……なぁ、まだ何も喋っちゃいねぇ……あぁ、分かってる。分かってるって。だから俺を……俺を殺すなぁぁああああああああ!!!」



その叫び声と同時に男の口から血が滲み出た。そして次の瞬間には、嘔吐と同じようなしぐさをしながら男が大量の血を吐いた。

ただ幻術を見せられていたようじゃない。そもそもこの世界に幻術があるかどうかが疑問だが、そこはでうでもいい



「オイ、しっかりしろよっ!! 何があった!?」



大量の血を吐きながら横たわる男に俺は急いで近寄って事情を聞こうとする。

しかし男はほとんど虫の息で、喋ろうとする代わりに吐血するほどだ




「なぁ、オイどうしたんだよ!?」


「みえ……ざる……手」


「見えざる手? 何だ、それは?」


「……へっ」








それっきり男は喋らなくなった。

結局貴族の人達は全員無事に解放されて、誘拐犯共は全員捕まったが誰一人として依頼主の事を知る物は居なかった。

なんでも、リーダー以外はその依頼主の事は秘密にしていたらしい



「イツキ?」


「ティアか……」



悪魔の復活、俺達を狙う敵。

そこには見えざる手が絡んでいるのか……?




「……チッ、忘れよう」


「大丈夫? ツライなら、学園にすぐに帰るけど……」


「あぁ、そうだな。すぐに帰った方がいいかもな。頼めるか?」


「えっ? あぁ、うん」



ホントにコレは悪魔の言葉とかを考えた方がいいのか……?

いや、これだけで終わるはずが無い。とりあえずはこの事は忘れよう。おそらく相手も何か手を打ってくるはずだから




「あら、ティスティア。もう帰りまして? だったら私も一緒に学園に参りますわ」


「エゲッ……シルビアは専用の馬車とかあるんじゃないの……?」


「私もちゃんと電車で参りますわ。それに馬車は近い距離だけで、今はほとんど車ですのよ」


「……ヨミ、帰りの支度をして」


「はい、お嬢様」




幸い3人は気絶していた事もあって、リーダーの死に様を見ては居ない。シルビアは見ているかと思ったら、あの一撃を放った直後に気絶していたらしい。

だからあれだけ元気で居られるし、俺が沈んでいるのもティアを護れなかったからと言う事になっている



「イツキさん、少しよろしくて?」


「ん? あぁ、別に構わないぞ」



あまり気に止めないようにしよう。初めてとはいえ、これから幾度と無く見てしまう可能性の高い光景だ。

そこに何かが絡んでいるような気がするから、これだけ引っかかるのかも知れないが……



「今回の事は誠に申し訳ございませんでした」


「へっ?」


「ですから、アナタ方の事を出来損ない扱いした事を謝っているのですっ!」


「あぁ、うん。でもお前負けてないだろ? どうして謝ってんだ?」


「いえ、あの賊達の頭と最後まで戦い続けたのはイツキさんだけですのよね? 私の方が先に倒れてしまっている以上、私の負けを認めざるわけにはいきませんわ」




この事件とシルビア・フォンレットの編入は、まだまだ物語の序章に過ぎないという事を俺達はまだ思っては居なかったのだった



うん、最後は何でこんな風になったのか分からない……


ただシルビアに謝らせようと思ってたのに、やりたい事があるからって思って書いたらこうなってしまった

反省はしているが、後悔はしていない。だってこの後活きてくるって信じてるもん(えー


とりあえず次回は『紅らじお』を放送して、その次からは学年別トーナメントを開催します(ワー パフパフ)

てなワケで、お便り待ってまーす。

何でもいいので『紅らじお』宛てにお便りを……くだ、さい……

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