第30話 三者三様の戦い 4
なんか前半で模擬戦終わったけど微妙……
ホント文才無くてスイマセン
「これで……終わりっ!!」
遠距離ではなく、中距離でヤスラ先生の砲撃が放たれる。俺は避ける術も無く、相殺しようにも完全に詠唱時間が少なくこの状態で発動出来る魔法が少なすぎる。
魔法喰らいを発動しようにも、換装を解かない限り発動する事は出来ない。これは最初に言われた事だ。創造能力を使うしかない……のか?
「負けるわけにはっ!!」
魔力の限り障壁を展開し、ガンドロフは銃から剣に変えありったけの魔力をつぎ込み砲撃を叩ききろうとする。それしかこの状況下でやれる事が無いのだ
「どんな事をしても無駄なのよっ!!」
(イツ……これ……よけ……)
「ッ!!」
ードンッー
まばゆい光が現れーーーそして、攻撃が着弾した
●紅の術者
第30話 三者三様の戦い 4
ヤスラ先生の高威力砲撃は完全にイツキに当たった。人間には魔力攻撃に対する耐性がある。それは人それぞれであり、またその種類も2種類ある。
1つは、累計ダメージによるノックダウン。1回の攻撃で体の中にダメージが溜まっていき、人間が耐える事の出来る限界を超えると魔力ダメージによるノックダウンに繋がってしまう。
もう1つは高威力魔法による一撃でのノックダウン。累計ダメージだけではなく、一撃でもある一定ダメージ以上を喰らうと人間が一撃を耐える事の出来る限界を超えてこっちもアウト
「どちらにしても、あの威力のダメージを受けているからもう立っていないはず。後はアイリちゃんを……」
そういってイツキが立っていた場所に目を移し、驚愕する。ありえない、今自分の目の前に広がる光景を理解できない。
「残念、ですけど……俺はまだ、やれます……」
そこには、倒したと思っていたイツキが立っていた。所々に傷が見られ、かなりダメージを負ってはいるもののそこにちゃんと立っている。ダメージの割合や今までの経験上、あの攻撃を喰らったのであればいくら軽減させてもあんな風に立っては居られないはず。
ならば避けたのか? いや、攻撃はちゃんと当たっているし影には影縫いが……無いっ!?
「俺は仲間を、信じてましたから」
「ッ!! アイリちゃん!?」
彼女はもう1人の私、分身の方の相手をしているはずだ。急いで視線をアイリの方向に向けると、未だヤスラの分身と戦っていた。だったらどうやって? 彼の言った仲間とは後はティアだけ。しかし彼女は完全に魔力によるダメージで気絶している。
「簡単じゃないかなっ!! アナタが使った影縫いはイツキの影を固定させる魔法。だったら影さえ移動させる事が出来たら少しくらいは動けるんだよ!!」
その言葉を聞いて、ヤスラは1つだけ可能性を考えた。今この場所には天上からの照明しかない
しかしもし仮にイツキの近くにもっと強力な光を当てる事が出来るのなら、影はその光源から反対側に出来るはずだ
しかしそんな光源が何処に?
「気付かなかったのも無理ないかも。直撃する直前に放ったからね」
「直前……?」
それは数秒前にさかのぼる。
イツキが攻撃に対して出来る限りの事をやろうとした時だった
「どんな事をしても無駄なのよっ!!」
ヤスラ先生の砲撃が俺目掛けて放たれる。もう避けられない事は分かっているから、上体で生み出す事の出来る最大限の力で攻撃を軽減させるしかない。
換装の力を剣に込めても、下半身から生み出す事の出来る力を使わないで出せる力など分かりきっている。
そんな時だった
(イツキ、これからアナタの後ろに光を放つからあの攻撃を避けてっ!!)
答える暇などない。全部自分で考えなければならない。でも俺はアイリの事を信じてる、それだけで十分だと思った
攻撃が当たる直前に、俺の後ろで巨大な光が弾ける。その瞬間自分の体が動く事が分かる。
影縫いとは、相手の影に闇の魔法を使用する事によりその場を動けなくする魔法。だったら後ろからの強烈な光が来たらどうなるか? それは簡単な事だ影は照らされた物体の下、光源の反対側に出来る。
イツキの影は彼の後ろに有りそこに影縫いをされていたのだが、アイリが光弾を放ったことにより影が一瞬だけイツキの正面に展開される
「これならっ!!」
イツキは後コンマ数秒しかない時間の中で体を攻撃から出来る限り逸らしつつ、全身の力を剣に込める
そしてーーー
「なるほどね、イツキ君の方に光弾を撃てばちゃんと狙っていなくても影は移動する。いや、狙わなくてもいい。だからアナタは戦いながらでも撃つ事が出来たと」
少ない言葉からヤスラ先生が1つの答えを導き出す。しかしその答えが分かった所で今目の前に起こっている事実は変わらない。
彼女の描いていたシナリオを2人が完全に壊した瞬間だった
「これで終わりです、先生」
イツキが右手を握り、その無限大にある魔力の一部をそこに集める。
ただ純粋に魔力の力での攻撃。ヤスラ先生がイツキにやろうとしていた事、魔力ダメージによるノックアウト
もちろんだがヤスラ先生は別に拘束魔法を使われているわけではない。避けようと思えば避けれるのだ
しかし彼女は動かない、いや動けないのだ。前回の模擬戦は自分の驚く行動ばかり取られ負けてしまった。だから今回は色々な作戦を持って、イツキと戦った。しかし今度は彼とその仲間により自分の作戦は壊されてしまった。
彼女は見誤ってしまっていたのかもしれないと思った。イツキやその仲間は、自分が思っているよりも遥かに強いのではないだろうか? 肉体的にも、精神的にも
(これはまた訓練メニューを変えなきゃいけないわね)
ヤスラは静かに笑いながらイツキの攻撃を見る。彼女はこの模擬戦で新しい発見をする事が出来た
だからこそ、この攻撃は受けなければならない。イツキ達の事を見誤っていた自分に対する罰として
「はぁっ!!」
ードスッー
イツキの攻撃がヤスラ先生の鳩尾に入り、衝撃波が彼女の体を貫く。その後から魔力攻撃が彼女の体を走り、ヤスラ先生はそのまま意識を手放す。
次に目覚めた時から始まる新しい可能性を考えながら……
ー次の日ー
「え~っと、なんで俺達ここにいるの?」
おかしい、昨日は激しい模擬戦をやったから今日は休みだと聞いていたはずだ。
なのになんでこんな所に居るんだ?
「アンタ忘れたの? アンタは私のボディーガードでしょうが。ちゃんと護衛しなさいよ」
「そうです、イツキは形式だけでもお嬢様の護衛なのです」
コイツら……
昨日は大変だったんだぞ!? お前ら全員気絶してるから医務室まで運んでやったのに。しかもティアなんか起きて人の顔を見るなり殴りやがってよぉ、まだ右の頬が痛いんだぞ
って、それどころじゃねぇ!!
「だからなんで俺がこの車に乗ってんのかって聞いてんだよ!? 俺、お前らを部屋に送ってからすぐに自分の部屋で寝たはずだぞ!?」
「どうせアンタに今日の事を話してもメンドくさいとか言いそうだから、引っ張ってきたのよ。幸いアンタ制服のまま寝ていたから丁度良かったわ」
「それよりイツキ、あの同居人はなんです? お嬢様を見るなりいきなり倒れだして……正直キモかったです」
「アンタ友達選びなさいよ? ただでさえ少ないんだから」
オイ、クロッド。お前の大好きなお嬢様+メイドからの評価は最悪だぞ。俺も分かるよ、多分ティアが自分の部屋に来た事でテンションマックスになっちまったんだろ?
お前にティアの護衛は無理だって。隣に居るだけで死んじまうわ
「はぁ、もういい。で、今日は何しに行くんだ?」
「なんか毎年行われている行事らしいけど私は興味がないから。なによりアイツが……」
ティアの顔がかなり怒りに包まれていく。どれだけその行事に会いたくない奴が来るんだよ?
こんな表情見たことないぞ
「とりあえず俺はお前のボディーガードをすればいいわけな?」
「そ、お父様に何か言われても気にしちゃダメよ?」
なんかまた不安になってきたんだけど……
目覚めてから数時間で俺達は見覚えのある屋敷の前に居た。俺がこの世界に降り立った場所、ティアの実家でありヨミの仕える家。
屋敷の前には何人もの執事やメイドが並んでいる。うん、これはホント圧倒されるわ
『お帰りなさいませ、お嬢様』
「ったく、お迎えはいらないって言ってるのに」
「よく帰ってきたな、ティア、ヨミ」
「あらあらイツキさんもお帰りなさい」
一番奥におっさんとクラリスさんが立っていた。うん、おっさん完全に俺に敵意むき出しですよ。いっそ死ねと言わんばかりの視線だぞ
「お父様、お母様も元気そうで」
「旦那様、奥様今戻りました」
「クラリスさん、ただいまです」
「さ、帰ってきてすぐで悪いけど後1時間もしない内に行事は始まるから急いで支度して」
それだけ言うとヨミとティアは自分の部屋に通されていった。
「えっと、俺は?」
「貴様の部屋に正装が用意されてるからそれに着替えろ!!」
そういうとおっさんはスタスタと屋敷に戻っていってしまった。それを見た執事とメイドズもそのまま屋敷の中に戻っていってしまった。
残るのはクラリスさんと俺だけ。ってかメイド達が屋敷に入れって言ってるのにいいから先に行っててとか言ってたけど絶対に俺に用があるんだろうな……
「イツキさん? 学園の方はどうですか?」
「えっと、おかげでうまくやれてます」
なんかクラリスさんの前だとやっぱり緊張するなぁ。ヤスラ先生の前だとそんなに緊張しないのに
やっぱりオーラ? いや、人柄なのですかい?
「まぁそこまでかしこまらないで」
そんな事を言われた方が余計に緊張するんですよぉ~
「私はね、アナタに感謝してるのよ」
「へ? 何にですか?」
「アナタのおかげでティアは間違いなく変わったわ。以前までのあの子はあまり他の人と関わりを持とうとしなかった。ボディーガードや他の家の人などのいわば他人を嫌っていたわ、理由は私にも分からないけど。でもね、アナタに出会ってから、アナタがボディーガードとして一緒に学園に行く事になってからあの子は雰囲気が変わったわ。学園でも楽しく過ごしているのでしょうね
だからあの子の母親としてお礼を言うわ、ありがとう」
「えっと……どういたしまして?」
なんか予想外の事を言われて言いよどんでしまう。そしてこの人は本当に母親なんだと実感してしまう
「さぁて、アナタもティアの護衛として式には出席してもらうわよ。さ、早く準備してきなさいっ!」
「えっ? あ、はいっ!!」
この人と一緒に居ると妙に調子が狂う。そんな事を考えながら俺は急いで屋敷の中に入り、確かではない記憶をたどりながら俺の部屋を探す。
でも、もしこの時間に戻る事が出来るのなら俺はこの時の俺に言ってやりたい。急ぐな、ってか走るなと
そんなに急いでもいい事はない、ってかむしろ悪い事しか起きないと。でもやっぱり時間は戻らないし、
これも運命なんだよな
「……ですの? まったくあの……」
「えっ!?」
話し声が聞こえたが、そんなの構ってる暇は無い。ってか急いで行かないとティアとヨミになんか言われる。特にヨミ。アイツは悪魔を何匹も合成したような奴だからホント嫌だ
そう思いながら勢いよく角を右に曲がる。
ードンッー
曲がった先の角で誰かに勢いよくぶつかってしまう。その人が持っていた鉄扇がカタッという音と共に落ちる。
「いってぇ……」
「アナタ、私にぶつかって置いて謝罪の言葉はありませんの!?」
「あっ、えっとゴメン。俺、急いでるから」
「ちょっとアナタ待ちなさいっ!! 私がシルビア・フォンレットと知ってやっていますのぉ!?」
「ホント、ゴメン!!」
相手にしているとメンドクサイのでさっさと自分の部屋を目指して走り去る。
この行為が後でさらにメンドクサイ事になるとも知らず……
新しく出てきたシルビア・フォンレットとはいったい!?
みんな、次回をカツモクせよっ!!