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紅の術者  作者: 結城光
第1章・1節 学園編
32/66

第28話 三者三様の戦い 2



side:ティスティア



ヨミは予想通り強かった。

いや、この1ヶ月でさらに強くなったと言った方がいい。1つ1つの剣の重さ、動き、魔法の威力や詠唱速度。どれにおいても1ヵ月前とは格段の差だった。



「さっきの威勢の良かったお嬢様は何処へ行かれたんです。先程から攻めずに守ってばかりですよ」


「言うわね、ヨミッ!!」



確かにこの成長は私の中では予想外だった。確かにこの1ヵ月、ヤスラ先生は個人個人の弱点や成長させるべき所をしっかりと把握していて的確な訓練をやっていた。

それは私や他のみんなもそうだと思ってる。


しかし交じり合う刃はわずかながらもヨミが優勢な事を告げてくる。しかしこれは当然といえば当然なのだ。ティアは中距離から魔法を放つのに対してヨミは近距離からの接近戦。それを踏まえた上でヤスラは訓練の内容を考えており、接近戦を鍛え上げられたヨミに、自分の距離ではない戦いをして勝てるはずが無かった。












●紅の術者

第28話 三者三様の戦い 2











「隙ありっ!!」



ティアが一瞬よろけたところを、ヨミは逃がさない。縮地で一気に攻めに来る。それをティアは障壁で威力を半減させるのが精一杯だった



「ぐっ…」


「お嬢様。いくら接近戦で魔法が使えないからといっても、それで負けていい理由にはなりませんよ?」


「ホント、言うようになったわね。ヨミッ!!」



ヨミの言葉で私の中で何かが変わった。ヨミは完全に私に勝った気でいる。そして彼女は言った。接近戦で魔法が使えないと

だったら……



「お嬢様に詠唱魔法を準備させる時間を与えて差し上げるほど、私は甘くはありませんっ!!」



ヨミが風速瞬動で再び距離を詰めてくる。そんな事は言われなくても分かっている事だし、逆に自分の思い通りに相手が動いてくれるからチャンスなのだ。

もちろん私だってバカじゃない



ヨミが接近しようとしてくる。縮地とは地面を魔力を縫った足で蹴ることで、通常以上のスピードで移動できる手段だ。しかし、結局詰まる所瞬間移動ではなくて高速移動なのだ。



ーバンッー



「なっ!?」



突然ヨミの足元で爆発が起きた。当然ヨミは爆発するなど考えてもいなかったのでまともに爆発を受け、普段から展開している障壁に穴を空けられる形で吹き飛んだ



「確かに接近戦でならヨミの方に分があるのは認めるわ。でもね、戦いって言うのは接近戦だけじゃないのよ? だから私は私の戦いをする」



『業火よ 迅雷よ 我が手に宿るは浄化の炎 我が手に宿るは全てを消し去る大いなる雷 共に交わり 共に消し去れ 奈落への導き』



ヨミが離れた隙を突いて、上級魔法を放つ。詠唱速度も、訓練前と比べれは格段に速くなっているのを自分でも感じるし威力も高くなっている



「さぁ、ここからがやっと始まり・・・よ? 全力で来なさい、ヨミッ!!」






side:アイリ




「クソッ!!」



さすがはヤスラ先生だ。ボクがいくら攻撃したって、簡単に防いでみせる。

撃っている銃弾だって、直線から曲線、それに突然消えたりするようなモノまであるのにことごとく闇に喰われていく



「アイリちゃんは少し張り切りすぎよ。無駄に魔力を使っていたらそのうち魔力不足で倒れるわ」


「ボクが魔力不足になる前に、先生が魔力不足になるんじゃないかなっ!!」



魔法陣を何重にも展開させてヤスラ先生の防御を破壊しようとする。いくつもの属性をヤスラ先生の防御結界の前に集中させて直前で結合させようとする。しかし属性魔法にはやはり相性というものがあって、ちゃんとした術式の前でなければ結合する事などほとんど無い。


つまりはーー爆ぜる



ードンッー



かん高い爆発音と共に、ヤスラ先生が居た場所は煙に覆われる。

瞬時に爆発的な威力を作り出した攻撃だ、いくらヤスラ先生とはいえ無傷ではいられないだろう。



ーその一瞬の心の隙が、命取りになるー




「暗黒矢!!」


「なっ!?」



煙に包まれていたところから突然無数の黒い矢が飛んでくる。もちろんアイリはいくらかのケガを負っていて反撃をしてくるなどと考えていなかったのでとっさに発動させる防御魔法しか自分を守るすべがない。とっさに自らの銃で相殺しようかと考えたが、数が多すぎる。下手に相殺しようとして失敗したらどうなるかは分からない



ースガガガッー



アイリの防御を貫こうとする無数の闇の矢。三重にも重ねた防御魔法陣にヒビが入っていく。

しかしヤスラの攻撃はまだ終わらない



「闇の苦渋」


「なっーー」



アイリの体がトラックにぶつかったかのように吹き飛んでいく。ゼロ距離からの攻撃を受けて無事なわけが無い。



「これでひとまず治癒の時間は稼げそうね」



煙の中から傷ついたヤスラ先生が現れる。先ほどアイリが立っていた場所から戻ってきたわけではない。

もともとそこに留まっていたのだ。そして彼女には影がなくなっている(・・・・・)



「そういう事だったんですね……」


「えっ……?」



遠くの方から銃を持った少女が現れる。



「なんで!? ゼロ距離からの攻撃をまともに喰らったはずじゃ!?」


「確かに喰らいましたよ。おかげで使おうと思っていた岩石の人形が全部防御に回ってしまいましたけどね」



体に残っているわずかな土の塊を払いのける。アイリは闇の苦渋を喰らう寸前に近くに張り巡らせておいた術式を全て自分の防御に回す事でなんとか攻撃を防ぐ事が出来たのだ。

体に土を付着させ硬化、後は時間までに瞬時に防御魔法を発動させればいいだけだった



「それより先生はすごいですね。まさか影を分身にするなんて」


「それで回復の時間を稼ごうと思ってたんだけどねぇ」



煙の中から暗黒の矢を撃ったのも、アイリの場所まで近づいて闇の苦渋を放ったのも全てヤスラの影だったのだ。



「影を使った魔法は術者の体力とか精神力をかなり削るらしいけど、大丈夫なのかなっ!!」



アイリも無事という訳ではないが立ち止まるわけにも行かない。口の中に広がる血の味に眉をひそめつつも二丁の銃を構え、銃弾を放つ

一方はヤスラ先生本体に、もう一方は影の分身の方に



「確かにアナタの射撃は完璧」



そういいながら杖を構え、炎の球体をいくつも作り出す。さすがにヤスラ先生も無傷ではないのだろう。

上級属性は基本属性よりもさらに制御が困難であるが故に、今のダメージを負ったヤスラ先生が完璧にアイリの銃弾を撃ち落すには闇ではなく炎でしかコントロールがうまく行かないと感じ取ったのだった



「でもねっ、アナタの攻撃にはいつも高威力の攻撃が欠けるのよっ!!」



いとも簡単にアイリの攻撃が撃ち落される。

アイリはその光景を見て、銃を下ろした



「アナタが上級魔法使わないのは簡単な事、上級魔法が使えないからよね? だから銃に銃弾をセットするバレット用の上級魔法しか使わない、イヤ使えない」


「ふっ、ヤスラ先生。それは違いますよ」


「えっ?」



銃を下ろし、顔をうつむかせながらアイリは静かに笑っている。



「私がバレット用の魔法しか使わないのは確かに上級魔法が使えないから。でもね、それは通常時だけの話!!」



その言葉を合図にアイリは自分に魔法をかける。この魔法を見せるのは2回目。イツキ達に自分の自己紹介をした時から1ヵ月。

この選択はもしかしたら間違いなのかもしれない。しかしアイリは迷わない



「ボクはもうこの力を使う事をためらわない。イツキ達と一緒に同じ道を歩いていくためにもっ!!」



目が赤と青のオッドアイに変わり、後ろからは尻尾が生えて来た。そして魔力の量は先ほどまでより格段に多くなりっている。



「まさか自分で変装を解くなんてね……」


「この術式は一定量の魔力と魔法を使えなくするもの。それさえ解いてしまえばボクだって上級魔法が使える」



下げていた銃をもう一度構えなおし、真っ直ぐヤスラ先生を見る

目の色が変わっただけで、ヤスラ先生を撃ちぬくまでは倒れないという決意は変わっていない



「いくよっ、ヤスラ先生!!」



ここからが本当の勝負。そう告げるかのように遠距離による戦いが激化していた











side:イツキ




「はっ!!」



ーガキンッー



「そこっ!!」



ーパンッー



2つの剣が幾度と無く交わる。どちらも退かない攻防戦



「くそっ、これじゃあキリがない」


「どうしたイツキ君。もうギブアップかいっ!!」



魔法を唱えようにもこの攻撃の中で唱える時間が無い。

セイウェンはセイウェンで詠唱魔法を捨て、肉体強化の魔法だけを何重にもかけている。せめて一瞬でも隙が出来れば……



「考え事をしながらだと剣が鈍るぞ」


「分かってるっ!!」



無詠唱魔法でも集中力をそっちに向けなければならないからそんな事は出来ない。

だったらやるしかない。圧倒的な魔力で押し切るしか

剣に魔力を膨大につぎ込む。剣の大きさは2倍くらいに変わっていた



「くらえっ!!」


「くっ……」



さすがに長さが2倍になったような高威力の魔力の剣になすすべもなく距離を取る。

それがこの戦いの流れを変える事になるとしても……



『疾風よ 迅雷よ 一陣の風に 一撃の雷を それは全てを切り裂き 全てを撃ち抜く 雷神烈風』


「吸収」


『換装 雷天疾風』



再び換装を使い体が雷と風の2つに包まれる。

ここからはただの接近戦だけでは無い。俺が換装した事によりスピードは俺の方が遥かに上。よってセイウェンも魔法を使いながらの戦いに変わる



「行くぞ、セイウェン!!」



換装中は縮地も足に魔力を縫わせる必要も無い。蹴りだしたらもはやそのスピードは通常の縮地とは違う。



ーガキンッー



「がぁっ」



なんとか剣で受けたセイウェンだったが、今の俺は雷と風の魔法を取り込んでいるんだぜ? その俺が握っている剣がただの剣であるはずが無いだろ。


放電とかまいたちが同時にセイウェンを襲う。しかし俺の攻撃についてくる事だけで精一杯のセイウェンにそれを防ぐ術は無い。



「悪いな、セイウェン。俺はお前だけと戦ってる暇なんて無いんだ」



魔力による一撃で意識を失わせる。それでヤスラ先生の所まで縮地すればここからでも状況は一気にこっちに傾く。

俺は剣に魔力をつぎ込もうと……


何かが違う。こんなにセイウェンの顔は青白かったか? こんなにセイウェンの剣は透き通っていたか?

なによりこんなにセイウェンの近くだけ極度に寒かったか?



『豪雨よ 烈風よ 天より振りし 恵みの雨 彼方より振りし 瞬速の風』



後ろから突然呪文詠唱が聞こえる。しかし気づいた時には遅かった。目の前のセイウェンがにやりと笑いながら俺に抱きついてきて身動きを取れなくする。ってかセイウェンの胸がぁ!? そんな問題じゃない事は分かってるけどやばいって。冷たいけど感触はまんまおっぱいなのですよ……



『2つは1つとなり 新たな力を生み出さん 始まりの吹雪』



後ろから放たれる吹雪に俺は雷撃を放出して氷を分解しようとする。まともに喰らっていたら完全に凍ってしまう


バカみたいに魔力を使った結果。換装が解けてしまったが、それでも何とか凍るのだけは避ける事ができた。

目の前を見ると、それはセイウェンの形をした氷の人形で俺は迷うことなく足元の氷と共にそれを炎でとかした




「イツキ君、これでやっとスタートだ」



後ろにいるセイウェンを見る。おそらく俺が換装している時に氷の人形を作り出したのだろう。



「イヤ、スタートじゃなくてここまでだ。俺はさっきも言ったとおりお前だけと戦っている暇は無いんだ」


「それでも私の中ではスタートだよ。始まる前に言ったはずだ、私は本気のイツキ君と戦いたいと」


「じゃあ本気の俺でお前を倒す」


「それでこそイツキ君だ」



俺とセイウェンが互いに剣を構える。



「いくぞっ!!」


「参る!!」




紅 魔法辞典




雷神烈風




強力な雷の塊を最初に放出、停滞させておいて後から強力な風をぶつけ融合させる魔法。今回は換装の為に自分の上に風と一緒になって停滞させて吸収した。



使用者:イツキ:ジングウジ



換装 雷天疾風



上級魔法の雷と風のを同時に取り込み、換装することが出来る。雷化招電の時と比べ、風の疾さが足されているため縮地も普通の比ではない。

瞬時に雷化することも可能




次回で模擬戦は終わるかな? いや、無理か。

一応模擬戦が終わったら、アゼル先輩の言っていた学年別トーナメントを予定してます


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