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紅の術者  作者: 結城光
第1章・1節 学園編
31/66

第27話 三者三様の戦い 1


「じゃあ始めるわよ? 第二回模擬戦、スタート!!」



その掛け声で予想通りセイウェンとヨミが突っ込んでくる。ヤスラ先生の方を一瞬だけ見てみるが、最初から本気のようで呪文詠唱を始めている

ヤスラ先生が詠唱しているのは闇属性と見て間違いなさそうだけど、何処に放ってくる? 


そんな事を考えつつも俺は2人に背中を預け、セイウェン達に向かっていく。




「ガンドロフ、日本刀を頼む!!」


(承知)



ガンドロフに前使ったものは日本刀というものだと教えておいたから、瞬時に俺の手の中に光が集まり1本の刀となる。本当の名前はとか言ってたけど覚えるのがめんどくさいから武器自体の名前をガンドロフに覚えてもらうようにしておいたのだ。



ーガキンッー



セイウェンの大剣と俺の刀が交わる。しかし、俺のほうが少し押され気味になっている。さすがに種類が違うもので応戦しようとするのがきついか?



「力負けしているぞ、イツキ君? 本当に全力を出しているかい?」


「へっ、最初から飛ばすとガス欠起こすぜっ!!」



刀に力を入れてセイウェンの剣を跳ね上げようとする。しかし普通の剣よりも重い大剣であるが故か少ししか剣が上がらず、仕方なく一端距離を取る。



「こっちも、いるっ!!」



後ろからヨミが死角を突くように攻めてくる。

俺はそれを感覚で察知し、体を回転させながらヨミの短剣が来る場所へと自らの刀を振りかざす。ヨミは一瞬驚いたような顔をするが、2本の短剣に自分のスピードを乗せた一撃を放つ



「ここまでは予測通りだっ!!」



ヨミの短剣を受けていて後ろが完全に無防備になった所にセイウェンが突っ込んでくる。

しかし



ーバンッー




















●紅の術者

第27話 三者三様の戦い 1











ーバンッー




セイウェンの大剣の軌道が横からの狙撃によって大きくずれる。セイウェンは俺を倒す絶好の機会だと興奮していて気付いていなかったのだ、この戦いが3VS3だという事を。そして俺達がこの状況になると予測していた事も



「ゴメン、イツキ。バレット転送が今終わった」


「ジャストタイミングだよ」


「くっ……」



さすがに分が悪いと思ったのかヨミが一端距離を取ろうとするがアイリが狙撃による攻撃を止める事は無い。それにアイリは2丁拳銃使いだ。もちろん1人だけに使う訳は無いよな?



「くっ、アイリ君の狙撃は的確すぎる」


「ヤスラ先生、まだなの?」



ヤスラ先生が何を考えているのか分からないが、ここは攻めで行くぜ?



『雷撃よ 天より降りて 悪しき者に断罪の裁きを 審判の雷』



俺はすぐに詠唱を終わらせ、魔法を自分の手の中に停滞させる。魔法喰らいエンペルゲレトの派生効果ってか吸収するために一端力として出す必要があるからこうして雷の力として出している。

そして俺はいつものようにそれを握り潰す



「吸収」


『換装 雷化招電』



「チッ、やっぱりあの力を使って来たか……」


「大丈夫よ、今ならいけるっ!!」



さっきまで詠唱呪文を唱え、発動させる瞬間を待っていたヤスラ先生が突然叫んだ。でも先生、こっちにもアナタへの対策を忘れているはずが無いじゃないですか?



「くらいなさいっ!!」



ヤスラ先生が手を上げると頭上には大きな魔法陣が展開されていた。アレは間違いなく広範囲……と見せかけての高威力の為の魔法陣。しかも狙いはアイリやティアでは無く、俺



「アナタは他人の魔法を吸収する魔法喰らいエンペルゲレトを持っている。だからもし私が攻撃してもその力で吸収されて逆効果。でもね、アナタ自身がその力によって能力強化したら私の魔法を吸収することは出来ない。もしやろうとしても1度アナタの中に吸収した力を出さないといけないはず」



なるほど、ヤスラ先生の推理は確かに理論として成り立っている。

でも、俺は普通じゃないんですけどね。そして俺1人でこの戦いをしているわけでもないんですよ、ヤスラ先生



「ヤスラ先生、こっちの事も無視しないで下さいよっ!!」


「ティアちゃん!?」



ヤスラ先生に対抗する様にティアが魔法陣を展開する。

高威力で発動された闇と炎。闇が侵食して炎が焼き尽くす。とりあえず俺には被害はなさそうだ



「アイリ、上級魔法は!?」


「水と雷以外なら何とかいけるよっ」


「ティア、もっと強力な呪文は!?」


「出来るからアンタは自分の戦いに集中しなさい!!」



2人共呪文詠唱に入りながらも1-1-1の形を崩さないようにしている。2人は俺の合図があるまでは絶対にこの形を崩さないと言ってくれた。だから俺も答えないと



「イツキ君、私はまだ退いては居ないぞ!!」


「私もっ!!」



『断罪の剣~迅雷~』



この1ヶ月、俺が魔法で磨いてきたのは威力でもなければ種類でもない。そんなのは元から普通を逸脱しているから関係ない。

だったら俺が極めるべきものは何か?


あのイオリ先輩との共闘の時に感じた時のもの。無詠唱魔法のイメージの難しさと威力の半減。

それを克服するために俺はこの1ヵ月やってきたんだよ!!



「ふっ、イツキ君。短縮詠唱でほとんど詠唱時と変わらないとは確かにすごいな」



そう言いながら剣を構える



「でも、私とてこの1ヵ月を無駄に過ごした訳ではない」



おかしい。魔力の流れがいつもと違う。

これは確かに外に放出している魔力のはずなのに魔法陣が形成されていない。だとしたら剣に魔力を注ぎこんでいる……?



「この剣の姿は仮のもの。本来のこの剣の姿は……」



剣が圧縮されていく。イヤ、正確には余分なものが取れていっているという感じだ。

やがてセイウェンが持っていた刀が俺と同じような日本刀の形に変わる。



「名前はまだ無いが、これが私のこの1ヵ月の成果だ」


「名前はまだ無いのか……コレが終わったら俺が考えてやろうか?」


「えっ、あの、その……よろしく頼む……//」



そんなに名前を付けてもらうのが嬉しいのか? すごく嬉しそうな顔をしてやがるぞ、アイツ

ってか待て。セイウェンとばかり話をしているけどヨミが居ない!?


俺はセイウェンの後ろを見るがやっぱり居ない。ってことは……



「ティア!!」


「えっ……ヨミ!?」


「すみませんお嬢様。ここでは本気で行かせて貰います!!」



クソッ、今詠唱した魔法を破棄されたらアイリ1人でヤスラ先生の魔法を止めることになる。俺が見ている限りアイリは一撃必殺のようなものをバンバン出すような奴じゃない。ここだと思ったところまでは狙撃と中級魔法程度の攻撃で相手を牽制するくらいだ。



「ティア今行く「余所見は良くないな!!」チッ、セイウェン」


「大丈夫だよ、イツキ。ティアちゃんはヨミを抑えてくれる。ボク1人で何とかヤスラ先生と戦ってみる。だからイツキはセイウェンを」


「……分かった」



アイリが俺の考えを悟ったらしく、銃でヤスラ先生の攻撃を相殺しながら叫ぶ。俺も説得できるくらい余裕な時間が無いから仕方なくセイウェンとの1対1をすることにしたが、諦めたわけじゃない。

セイウェンを早く倒せばいいんだから



「行くぞイツキ君!!」


「上等!!」









side:ティスティア





クッ、予想外だった。呪文詠唱をしていたから周りの事を考えていなかったわ。

私はすぐさま今詠唱している魔法をキャンセルし、別の魔法を唱える



『雷撃よ 我が杖を剣と化せ 雷の剣』



ーガキンッー



「こうして剣を交えるのはいつ以来でしょうか? お嬢様」


「あら、割と最近じゃない? ルビニア学園に行ったら戦う機会が少なくなるからってやったじゃない」



ヨミの攻撃を防ぎつつ言葉を交わす。ヨミの戦い方のクセならなんとなく私の体が覚えているからこんな話をする事も出来る。もちろんヨミも私の攻撃のクセを理解してるはず。



「スミマセンがお嬢様。今日は本気で行かせて貰います」


「いつもは本気じゃないような言い方ねっ!!」


「いえ、今日は特にです。なぜかは知りませんがお嬢様とセイウェン達との間でこの戦いに景品が付けられているみたいですね」


「うっ……」



この子には話していないはずなのになんで知ってるの!? はっ!! さっき小声で言ったのがバレたの!?



「私も旦那様と同じく、お嬢様のボディーガードをイツキと認めた訳ではありません。ましてやお嬢様がアイツを好いておられるなど……」


「べ、別にイツキの事なんか好きなわけじゃ……//」


「お嬢様が何を言おうと私はこの戦い、勝たせてもらいます」


「上等よ!!」



お互いに一定の距離を取りながらそう叫ぶ。全くヨミは何を考えてるのか分からないわ。

イツキの事をキライではないのは分かるんだけど…… あの子があれだけ他の人と話していることなんか見たこと無いもの



『疾風よ 我が手に集いて 敵を蹴散らせ 風の圧迫』



目の前から目には見えない風の塊が押し寄せてくる。ああそうよ、ヨミはこれで相手を一瞬ひるませてから縮地で一気に距離を詰めてくる。

だったら……



『疾風よ 我が手に集い手 敵を蹴散らせ 風の圧迫』



「なっ!? お嬢様!?」


「アンタの戦法なんか分かりきってんのよ!! 正面から来なさい、ヨミッ!!」








side:アイリ





大丈夫とは言ったものの結構キツイよね、コレ。

大型魔法を発動されればそれに対抗する魔法を唱えるか、魔法陣の解除弾を当てないといけない。前者の方は簡単だけどボクの魔力の問題があるから、この銃で魔法陣の1番弱い所に解除弾を何発も打ち込まないといけない



「いつまで耐えれるのかしらねぇ、アイリちゃん」


「先生こそっ!!」



撃ち出されて来る闇の魔法に光弾を当てて相殺し続ける。ヤスラ先生が放ってくるのは予想以上の数の闇魔法の下級呪文と威力が段違いの上級魔法の数々。



「魔力的にはまだ問題は無いだろうけど、集中力がもうすぐ切れちゃうんじゃないのかな?」


「ボクは2人に信頼してもらってるんだから、その信頼に答える。それだけっ!!」



半端な数ではない。イツキやティアちゃんに当てずに全てを相殺するのは物凄い集中力を使う。

でもそれがなんだ? 2人が前で戦ってるようにボクは後ろからのサポートをする。それだけの事でしょ。それさえできないなら、ボクはここで戦えない。




「この勝負は負けないよ、先生。アナタを撃ち抜くまで私は倒れない」


「無理ね。今のアナタじゃ私を撃ち抜けない」








三者三様の戦いはどうなるのか一応考えてますが、どうしよ?

いっその事イツキを……

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